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【徹底解剖!SX伴走】「発想の転換」が、加速の一手に。〜「花キューピット for SDGs」の場合〜

変化の激しい時代がやってきた、とよく言われます。
環境への配慮に、社員のウェルビーイングに、そして何より、事業を継続発展させていくにはどうすればいいか...。考えることが多すぎて頭がパンクしそう、という方も、多いのではないでしょうか。

株式会社La torcheでは、そんな企業の方々に伴走し、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)と言われるような、これからの時代に必要な組織変革、考え方のインストールなど、推進し続けてきました。

これまで数多くの出会いがありましたが、今回はその中でも、花屋の全国ネットワークである「花キューピット for SDGs」にフォーカスをあて、徹底解剖。

2年近い伴走によって、複雑な組織の中で生まれた様々な課題への危機感を出発点に、これまで取り組んできた自社の価値の見直しや再定義、そして、「環境にやさしいフラワーギフト」というPRや効果測定まで、無事に漕ぎ着けることができました。

その裏側には、コアチーム内での濃密なコミュニケーションや葛藤、プロジェクト推進を通した学びの循環などが。一部始終を見守り、共に歩んできたLa torche代表の秋間早苗に実施したインタビューの様子をお伝えしていきます。

「思うように事業が成長しない中、リブランディングを考えている。でも、どうしたらいいのかわからない。」
「SDGsも大切とは聞くけれど、導入が大変そうで気がひける。今からでも実践できる方法は何かないのだろうか。」

そんなお悩みを抱えている企業の方にとって、ヒントとなる情報が詰まっています。ぜひご覧ください。

ーーまずは、「花キューピット」の取り組み内容や、伴走の経緯について教えてください。

花キューピットは、「生花通信配達システム」というサービスを展開する、花屋さんの全国ネットワークです。遠くにいる方にお花を贈りたいとき、花キューピットの仕組みを使うと、配送先の店舗が新鮮な生花をすぐに届けてくれます。また、地域によって違う祝い花の習慣にも対応できるなど、地域密着を魅力にしてきたサービスです。今は全国から4300店舗が加盟していて、配達以外にも、ギフト券の取り組みなど、花文化を広めるために精力的に活動されています。

私自身が以前からエチオピアの花産業の振興に携わっていたということもあり、ご縁があって一緒にお仕事をさせていただくことになりました。

当初は「SDGsなんて」と懐疑的な見方もあったのですが、「サステナビリティ」をキーワードにブランディングを進めていくことのメリットを長きにわたりお伝えし続けた結果、本プロジェクトが加速するきっかけとなる、大きな発見が生まれました。

それは、「宅急便のなかった時代に生まれた遠隔取引の仕組みは、CO2を出さない。”地球にやさしいフラワーギフト”。すでにこれに67年間も取り組んできた」というもの。これは顧客や会員店舗といったステークホルダーへのリブランディング、新しい訴求ポイントになりそうだ、ということで、SDGsを一つの切り口に、会社の魅力を再発見して行動していくためのチームづくりが始まりました。

La torcheは、国連のガイドラインに則ったロゴ制作、温暖化ガス排出抑制に関する算出方法の開発、監修の手配、表現のコンサルテーション、SDGsチームのチームビルディングなど行いました。

ーー当時の花キューピットは、どんな課題を抱えていたのでしょうか。

あらゆる場面での「分断」に苦慮されていたと思います。

例えば、花屋同士の連携体制を担う一般社団法人と、インターネットを通じたサービスを運営する株式会社の間に接点や交流が少なく、花キューピット全体としてメッセージを出すことが難しい状態であったり。

それ以外にも、会員である花屋店舗さんと本部との意識差、部署やオフィス間の物理的な分断なども起こっていました。

「花キューピット」という名前・ブランドは知られているのに、肝心の遠隔取引の仕組み、ビジネスモデルが伝わっていない認知差や、若い世代の花離れ、ひいては業界全体に関わる課題への意識差など、あらゆる分断をどうするかが課題である印象を受けました。

ーーそんなあらゆるバラバラ感の中でのSDGsに向けたプロジェクト。まずはどんなことから取り組みましたか?

私自身が20年ほど、SDGsの頭文字のS、「サステナビリティ」をテーマに人や組織、企業の変容をテーマに活動してきました。その背景もあって、
SDGsをいきなり「目的」にするのではなく「手段」、ビジネスのサステナビリティのための「道具」として取り扱うことを強く勧めています。

そこで今回の伴走でも、漠然と未来や社会・環境を考えるのではなく、これまでの企業としての歩み、取り組みを振り返って再認識すること。そして、花キューピットで働く人自身の主体性や当事者意識を引き出すことを、大切にしていました。

今回のプロジェクトは、一般社団法人と株式会社から各部署の現場で働くキーパーソンが集まった「SDGsチーム」をコアとして、2020年7月から実施。

立場や年代もバラバラなメンバーが最初に取り組んだのは、SDGsを学ぶ「新聞」作りでした。試行錯誤の中でインプットしながらも、実際に自分たちの手を動かして伝えていくという最初の経験は好評で、元々他部署であったメンバー同士の相互理解も深まるチームビルティングにもなりました。

La torcheとしては、その後もこの「SDGsチーム」の定期ミーティングのファシリテーターとなって、伴走。SDGsや関連ワードについて、その活用の仕方、取り組み方について、「インプット」「アウトプット」を支援。このチームでの考え方や行動様式が、全社に広がることを目論みながら、ミーティングの進め方など具体的に主体性を引き出し合う方法もアドバイス。自社だけに留まらない視点や活動の促進のために、他の企業や団体との連携や関係性づくりもサポートしています。

ーー企業内のメンバーが、主体性を持つ意識づけ、大切ですね。その後はどんな形で進めていったのでしょうか。

月2回の定例ミーティングを基本に、前述した弊社サポートのもと、外部パートナーとのプロジェクトなど進めていきましたが、社内の意思決定プロセスにマッチせず、巻き込みに苦しむ局面も起きるようになりました。

2年目に入って、このコアチーム以外の社員・職員や会員である花店舗の方々に、「SDGsを道具に」「勉強じゃなく、本業に資する活動を」といった指針となる認識やアプローチをどう伝えていくかもチャレンジになりました。

よって、プロジェクトとしては、「社内外の人、店舗の人巻き込み方を考えるチーム」「次世代の顧客層となる若い世代に花のことを知ってもらうためのアプローチを考えるチーム」「新規事業開発チーム」などが生まれ、絶えず試行錯誤と工夫をしながらの活動を続けています。

他の企業・団体からSDGsへの取り組みを相談を受ける際にも、
花キューピット様の課題感からビジネスモデルの再定義、チーム組成や外部との連携などを紹介させていただくと、大きく共感・反響をいただくように。

ーー今なお進行しているこのプロジェクトですが、これまでで1番苦労した場面、エピソードなどはありますか?

コアチーム内でのモチベーションの低下危機は、何度もありましたね。

プロジェクトに対して当事者意識が薄れ、他の人の話を聞くだけの「勉強モード」になってしまった時など、ミーティングの役割を形骸化させるのは、本当に簡単なことです。
それまで私から行ってきたメンバーへの働きかけ方や、企業のサステナビリティ推進における「自分ごと」の重要性、それらが普段携わっている本業においてもいかに重なるかをお伝えしたり、批判ではない「フィードバック」を通じて自分たちの状態を客観的に認知していただく機会をとったりしま
した。

また、せっかく努力して企画したり、交渉したり、と準備を重ねていたプロジェクトが頓挫してしまった時も、士気が下がりがちでしたね。この時は、メンバーの一人ひとりと1on1ミーティングを行い、普段全員の前ではなかなか話せないような本音熱い想いを聞き取り、改めてご自身で言語化してもらうというアプローチをとりました。

プロジェクトの進め方に対する、正直な不安や葛藤だけではなく、「ひと昔前のように、加盟店の人が喜んで花キューピットのジャケットを着れるような誇りを取り戻したい」という志など、普段は聞けないことがいくつも出てきたことが印象的でした。

ーーメンバーの一人ひとりのモチベーションやバックグラウンドにも向き合うのは、La torcheの伴走ならではという感じを受けました。この取り組みを通して、会員である花屋さんにも、何か変化はありましたか?

そうですね。まだ全店舗を対象にしたアンケートやヒアリングなどはできていないのですが、各地の複数の会員店舗さんや業界関係者の方々から伺ったことの中には、嬉しい反応、お声もありました。

その中でも印象的だったのは、花の業界のこれまでの慣習や変わりづらい体質に危機感を持ち、自分にできることを探している方々にとっては、花キューピット(本部)が変わろうとしていることが励みになる、というものでした。

花店舗さんって、元々の生業から地域密着型で、地域に貢献したいという利他の精神が元々根付いているケースもとても多いんです。これが最近よくきく SDGsの文脈に合致し、「自分たちがこれまで取り組んできたことも、SDGs推進に関わっていたのか!」と、誇りを取り戻すきっかけに。
新しく看板を刷新するのに、「花キューピットfor SDGs」のロゴも入れたい!という会員さんもいらっしゃったほどです。

La torcheが推進するSXプロセス

ーーここからは、「花キューピット」の事例を通してLa torcheが学び得たことについて、より深掘りしていきます。今回の伴走で、「ここだけは外せない」といったポイントは何かありましたか?

先ほども触れましたが、私自身、20年来「サステナビリティ」というテーマに基づいた研究活動や実践を続けています。その立場からみて、近年のサステナビリティ推進の機運の高まりに懸念するのは、バズワード的に消費されたり、流行りだからと表面的に取り組まれることです。
特に、「当事者性」「主体性」を考慮していないサステナビリティ推進では、”上辺だけ感”"とってつけた感"が伝わってしまい、社内の意欲や目線もバラバラであることが勿体無いな、と思います。

SDGsのバッジをつけること、アイコンを使って「○番の目標に貢献しています」と標榜すること、が前面にあったり、どうしても専門知識が必要な領域に思えて誰かに任せきりになったり、自分には、本業には直接関係ないと思ってしまう領域でもあります。

しかし、本来「サステナビリティの実装」には、環境・社会・経済を縦串を通す存在として、ビジネス自体、つまりは事業や組織が、サステナビリティ欠かせません。これは結局、自分たちや自分たちの事業・会社が、いかに価値を届け続けられる主体であるかということ。変化の激しい現代だからこそ、変化に強い事業・組織にしていくという視点が重要なはずです。
 
この花キューピット様の事例同様に、あえて「SDGsを道具に」「本業
に資する取り組みを」「主体性を引き出しあって組織文化すらも変えていく」
といったアプローチは汎用性も効果も高いものだと確信しています。

ーー「当事者性」の持ち方。考え方というのが、サステナビリティ推進の土台になるということがわかりました。でも、考え方を変えるというのはなんだか難しそうですし、具体的に何から取り組めばいいのかわからない、という方もいらっしゃりそうですよね。La torcheとしては、ここにどのように向き合ったのでしょうか。

当事者性や主体性って、もともと持っている人といない人がいるかのように語られますし、それを喚起する組織改革ときくと、大それた大掛かりなことをしなければならない、といったイメージを持たれる方も多いかもしれません。

だからこそ、弊社が近年取り組んでいる主体性を科学する「バイタリティ・アプローチ」においては、「認知」を含めた人間に備わっている仕組み、「ものの見方」の転換方法に注目しています。

大きなリソース(コストや時間)をかけなくても、少しの働きかけで転換することもできるのが特徴で、例えば私たちは外部の人間という立場を生かして、一人ひとりのちょっとした口癖から客観的なフィードバックを行い、「無自覚の自覚」、自分の「ものの見方」のクセを客観視できるようなきっかけを作っていきました。

このような「認知」「ものの見方」に意識的に働きかけるアプローチは、属人性が低く、誰もが後天的に獲得できるものだというのも、大きな可能性だと思っています。あらゆる課題やピンチを、機会やチャンスに変えていく土台として、社会や環境など大きなスコープを扱う準備としても、このアプローチが有効であることを日々実感しています。

ーー関わる全ての人にとって、さまざまな学びのあるこれまでの伴走期間だったかと思います。今回の学びを受けて、これから取り組みたいこと、考えていきたいテーマはありますか。

今回のサポートの中では、インプットやアウトプット材料の提案、ミーティングのファシリテートなどと同時に、社外との接点を作ることにも取り組みました。これからますます、業界全体を巻き込む、産学で連携する、次世代と共に活動するなどの、自分たち以外の主体とのコラボや協働の必要性は大きくなってくると思います。

その際に、一瞬の喜びや化学反応だけで終わるのではなく、双方にとってのビジネス的な価値長期的な関係構築につながるようなデザイン、考え方の見つめ直しをサポートしていきたいです。

さらに、花キューピットのチーム内で起きたような変化を起こせる社内人材開発ということも大切ですので、会社をまたいだ研修なども、積極的に実施していきたいと準備しています。

これまでも各種研修、越境学習の機会も存在しましたが、せっかくその場で刺激を受け感化された方々が、本業や自分の企業に戻ってくると、あまりの意識差の大きさに周りを巻き込むことができず、最終的に会社を飛び出してしまうということもよく起こっていました。

そうではなく、自分のいる場所でギャップを是正したり、巻き込んで熱量を上げていけるようなアプローチを広めることで、会社も個人も、協働するステークホルダーも共に成長して価値を生み出し続けられる、まさにサステナビリティを体現する形態が当たり前になる未来を描いています。

まとめ

関わる一人ひとりの想いを汲み上げきれず、なかなか連帯感が生まれないことに悩んでいた花キューピット。しかし、コアとなる「SDGsチーム」の立ち上げをきっかけに、

(1)漠然とした理想の未来だけではなく、67年もの間積み重ね、育ててきた自分たち「ならでは」の価値に目を向け、

(2)ただ勉強するだけではなく、実際に手を動かし、語り、体現し続け、

(3)土台となるものの見方から変えていくことで、

一人ひとりがプロジェクトを引っ張る推進力を持てるような取り組みを実現させました。

今も次々と新しいアイデアが生まれ、「環境にやさしいフラワーギフト」という旗印のもと、より多くの層を巻き込んだサービス展開につながっています。

いかがでしょうか。伴走プログラムのエッセンスが詰まったこの事例からは、みなさんの所属されている組織・チームが抱えている「課題」に対するヒントが、きっと見つかったことと思います。

La torcheには、代表・秋間早苗の長年の研究と実践により積み重ねられてきた、「意識改革を声がけだけで終わらせないための,考え方やツール」の準備がたっぷりとあります。

企業やチームに課題意識を感じ、何とかしたいと暗中模索を続けている方々とご一緒し、「これまでの延長線上にない未来」を作っていけることを、楽しみにしています。

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