光の満ちる銀座
もう会期は終わってしまったけれど、先日、大岩オスカール氏の個展「光の満ちる銀座」を見に出かけた。
旅に出たりしていたせいで、ご本人にはお会いできなくて、それは少し残念なことだったのだけど。
絵のことはきっと、よくものを知っている人がもっといるだろうから
わたしがあんまり言葉で触れるのはよしておこうと思う。
だから代わりに、それ以外に空間に置かれたものの話をしてみるとすると
いつもいつも、絵の横にある、
わたしはこの画家の語る日本語が好きなんだ。
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この人の展覧会の挨拶文や、画集に添えられたまえがきやあとがきが、わたしはいつも好きだ。
日系2世。そういうルーツのせいなのだろうか、
この人の語る日本語は、わたしの利用するそれとはすこし違うみたいに響いている。
なにがどう異なるのだろう、でもとてもとても優しい日本語。
それは心の中に生まれたものと、その目で見た対象を、まっすぐにつなぐ言葉だ。
丹念に単語が事象を指していることに、わたしはいつだって親愛なる気持ちを抱く。
そして不思議とぎこちないような、やさしい敬語の語尾にも。
「思います」「描きました」「考えます」。
それらの語尾は単に文章を締めくくるためのものではなくて、確実に彼が「思って」「描いて」「考えた」のだということが伝わる言葉。
言葉がきちんと、想いを表現する道具であることを示すように合理的で、
それでいてずっと純朴で素直なこの品詞たち。
”見ることとはその「風景の光」を見ていることではないかと思います。…夕焼けの光、森からくる光、水の反射。このような人知れず過ぎていく一瞬の出来事を形にして生まれた作品を展示しようと思いました。”
今回の展覧会に寄せられた、これが画家自身の日本語の一部。
どうしてこの人の言葉はこんなにも優しくて、まっすぐで、まるでこの人の絵そのものみたいなのだろう。
絵を見ていると言葉みたいだし、言葉を見ていると絵みたいだ。
この人自身、この絵とか、この言葉みたいな人なんだろうか。
きっといつかお会いしてみたいと、作品や言葉を見るほどに思う。
それがたとえ閃光のように鋭くて、それで傷つくことがあったとしても、
それでも近づいてみたい。こんな言葉を話す人に。
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サムネイルは東京画廊様のページよりお借りいたしました。金箔と油彩が宇宙みたいで海の底みたいで、何時間でも立ち止まっていたいような美しい絵でした。
Artist: Oscar Oiwa
Title: Moon Reflex
Year: 2018
Material: Gold leaf and oil on canvas
Size: 48.5 x 51 cm
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