10月に聴いたもの

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Beltway Bandits "El Nuevo Buenos Aires"

詳しい情報が出てこないがビッグコンボ的ジャズバンドプラスボーカル。聴き心地が良いのにほどよく引っ掛かりがある。アルゼンチンのジャズものでなかなか録音が良いものに出会ったことがなかったけど、これは良い気がする。歌ものというと通常ピアノトリオで十分な感じもあるが、室内楽的な管のアンサンブルが多く盛り込まれている。
訂正:アルゼンチン人ギタリストとイタリア人作曲家/アレンジャーが結成したオランダのグループなのでアルゼンチンのグループではないとのことでした。

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Khotin "Finds You Well"

2年ほど前に演奏で京都に行くことがあり色々観光する中でMeditationsというレコード屋に訪れた。名前の通り、アンビエントやエクスペリメンタルな音楽を中心に取り扱っているお店で店内はお香が焚かれているなど、なんだかとても惹きつけられるお店だった。その時店内で流れている曲がKhotinで、とても良かったのでその後の観光のお供にずっと聴いていた。今作もジャケのように経年変化をしたVHSのような音像。というかヴェイパーウェーブってことですかね。いまだ掴み切れていないヴェイパーウェーブの正体。Khotinの音楽はカセットテープ感はもちろんあるけど映像感が強いのでVHSでMVとか出して欲しいな。

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KMRU "Jar"

ジャケットのようなザラザラした土を触るようなアンビエント。アンビエントについて語る言葉をいまだ抽象的、感覚的な表現しか持たないのが悔やまれる。でもアンビエントといっても即興音楽的なものと狙いすましたものがあると思っているが、これは後者。感情のリードするストーリーではなく緻密な風景画を描くような集中力が感じられる。

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Romeo Poirier "Hotel Nota"

休日などになんともしようのないもやもやが頭をもたげて動けないまま一日終わってしまった、みたいな日のもやもやをそのまま音にしましたみたいな感じ。というと聴くのがストレスに思われそうだが、不思議なことにそういうものはこうして音などに還元されるとすっきり、むしろ心地良く消費できたりするもの。このアルバムも言葉で言い表せないがなぜか惹きつけられて聴いてしまっていた。

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Romeo Poirier "Plage Arrière"

Romeo Poirierからもう一作。調べるとフランス出身のエレクトロニカ・アーティストとある。こちらはもう少しリズムの要素がある作品が多いようだが、やはり同じようにもやもやとしている(それが良い)

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Charles.A.D "Inception"

千葉出身のタナカヒロユキのプロジェクト、Charles.A.Dの1作目。アンビエント的なのに謎の疾走感があって新鮮。海中をそこそこのスピードで進んでいくような。ちょっと前に見た映画『スイス・アーミー・マン』の冒頭を思い出した。

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Carlos Niño & Friends "Actual Presence"

カルロス・ニーニョの音楽はチベタンベルとかアンビ感の強い金物がよく鳴っているイメージがあって、アジア的だったりトロピカルなイメージだったりとかなり色彩豊かな印象があるが(同じイメージのアーティストにTeebsも挙げたい)、今作はサム・ゲンデルやディアントニ・パークスが参加していてタイトな場面も随所にあってバランスが良かった。

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Simon Moullier "Spirit Song"

フランス出身のジャズ・ヴィブラフォン奏者、サイモン・ムリエのファースト。M2ではミニマルなリフに載せてバラフォンも演奏してたりしてアフリカ音楽への造詣も窺わせる。ヴィブラフォン自体にもエフェクトを随所に使用していて都会的な印象。なんとなくグレゴア・マレあたりと共作とかしてくれると面白そうだなと思った。

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koji itoyama "I KNOW"

Federico Durandのようなあたたかみを感じるアンビエント作品。コーラスやピアノが随所に使われているところが共感を覚えた。大きいスピーカーで聴きたい。

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石若駿 "Songbook5"

以前にTwitterに以下のように感想を書いている。『1からずっと聴いきてこの音楽をなんと言えばいいのか掴みきれなかったけど(今も掴めていないし掴むものでない)今作を聴いてて一つ浮かんだ言葉は「新しい童謡」だった。自分は昔から童謡のような音楽が作りたいと思ってきたのを思い出した。』技巧的なことは色々な要素があるしそれだけで語ることは沢山あると思うけど、本人たちの目指してるところはそういうこととはあまり関係がない気がする。とにかく歌が最も大事で、それを既存の枠組みからどうにか自由にさせてやるために、調性感を希薄にしたり、はっきりとしたテクスチャーを避けたり、というようなことをしている気がする。結果的にこの「なにものでもないけど歌そのもの」みたいな不思議だけど確固たる音楽が現出してると思う。フォルクローレも思えば童謡と親和性はある。

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Laércio de Freitas "Homenageia Jacob Do Bandolim"

ピシンギーニャとともにショーロの偉大な作曲家として知られるジャコー・ド・バンドリンの曲をギターとピアノのデュオ形態で取り上げたアルバム。ラエルシオ・ヂ・フレイタスはMPBの分野で有名とのことだが、ここではあくまでクラシカルなムードでショーロの演奏に徹している。ショーロというとクラなどの管楽器に弦楽器、打楽器のイメージが強くピアノのポジションが難しいところがあるが、ピアノとギターのデュオという形態もよく合うことに気付く。

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Jurandir Santana "Só Brasil"

Andres BeeuwsaertとTatiana ParraのAquiでの演奏が有名な『Brincando Com Theo』(先日aqubiでカバーしてみました)の作者であるフルート奏者のLea Freireの主宰するレーベル、Maritacaからのリリース作品。ジャズ色の強いブラジル音楽を中心にリリースしているレーベルで、今作はギタリストのリーダー作。技巧的なのに小難しくなりすぎず爽快な曲が多い。

yojikとwanda

yojikとwanda "フィロカリア"

10/24に阿佐ヶ谷のTABASAで行われた(私も参加している)ミナス・アルゼンチン音楽研究会主宰のイベント『minas daisuki vol.2』で、高橋三太氏(tp, 1983所属)のDJタイムに『ワンルーム・ダンシン』を流したのだが、初耳かつ良すぎてびっくりしてしまった。ある意味で音楽のすべてが詰まったアルバムと言ってしまっても過言ではない。私の中では。


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