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生理は試験日にも容赦なくやってくる。試験から考える平等性と公平性とは?ーーIDPエデュケーションインタビュー

みなさん、こんにちは。わたしの暮らし研究所の沢田です。
今回は、LAQDAプロジェクトにご参加いただいたIDPエデュケーションが、なぜ参加して下さったのか、また、どのように社内の取り組みを進められているのかをインタビューしました。


はじめに

沢田:市川さんと繋がったのは、他の実証実験参加企業の担当者さんがきっかけでしたね。もともとご友人のその方とお話されていた際に、たまたまLAQDAプロジェクトも話題に出て、ご興味いただいたとお伺いしました。

市川さま(以下、敬称略):そうなんです。友人から話を聞き、とても興味を持ちました。LAQDAプロジェクトについて知り、まさに私たちの事業のニーズにとても合っている、というか、前からあったニーズに気づけていなかった部分を気づかせていただけた出会いでした。

沢田:わたしもいつかは、試験会場に生理用品を提供してあげたいと思っていたので、コンタクトいただけて、とても嬉しかったです!しかも、わたしたちのプロジェクトに共感いただけるなんて!今日はそんなIDPのお話をたっぷり聞かせてください。

左:沢田、右:市川さま

IDPエデュケーションについて

沢田:まずは、IDPさんについてお伺いできますか?

市川:IDPエデュケーションは、英語4技能試験IELTSという英語の試験を運営している会社です。オーストラリアに本社を置く英語の試験の会社でして、世界で最も受けられている英語の試験を展開し、世界61カ国2000以上の試験会場を運営しています。

日本においては、北は北海道、南は沖縄まで全国26カ所で試験を行っております。

IDP Educationについて

沢田:恥ずかしながらわたしは市川さまにお会いするまで、IELTSを存じ上げなかったのですが、世界で最も受けられている英語の試験、とはすごいですね。

市川:そうなんです。IELTSは34年の歴史がある検定で、140カ国、1万以上の大学等の機関が認めています。また年間350万人が受験しており、その受験者数も上昇傾向にあるんです。

試験の平等と公平性を考える

市川:でも、それゆえに、試験で不正がないように、ものすごく厳しいルールがあるんです。

IELTSについて

沢田:確かに。試験の不正を防ぐためにはルールは必要ですよね。

市川:そうなんです。でも、この厳しい不正防止のための試験ルールが、生理中の受験生への負荷となっています。わたしたちは、この試験を実施しながら、エクイティ(Equity:公平性)を掲げています。沢田さんのプロジェクトを知って、自分たちの試験会場の体制を見直すことになりました。

IELTSは、2.5時間の試験時間中、決まった休憩時間がありません。自分の試験時間を削ってトイレに行くことは可能です。しかし、生理期間中のため生理用品を使いたい場合は、予め試験官に預け、使う時は、生理用品を試験参加者全員の前で受け取り、トイレの入り口まで試験官に付き添われなければなりません。

IELTSの試験ルール

すべては不正防止のためで、それだけ厳重だからこそ、信頼される試験になっています。しかし、他の受験生の前で、トイレに行くことを申告して、しかも試験官から生理用品を受け取らなくてはいけない状況は、本人にとってつらいことだと思います。

沢田:それはすごい話ですね。不正防止は確かに大事ですが、生理は本人のコントロールが効くことはないですし、いたたまれません。

市川:そうなんです。これは、わたしたちが目指す"エクイティ"ではないと思いました。なぜなら、突然生理が来てしまった受験生は、そのことに狼狽したり、トイレに駆け込んだり、血が衣服に染みないか不安に感じたりしながら、試験時間を過ごさなければなりません。それは、とても不公平です。

エクイティに似ている言葉に、イコーリティ(Equality:平等)という言葉があります。試験においては、全ての人に平等な受験環境を提供するという意味で、厳しいセキュリティは必要不可欠です。しかし、受験生の半分以上、実に175万人が女性です。当然その中には、『試験のある日でも容赦なくやってくる生理』を心配しながら受験をしている人がいるはずです。そうした人を無視した環境が、果たして平等な環境といえるでしょうか?

沢田:確かに。生理で不安な状況で受けるのは、平等ではないですね。

試験の厳しいルールの中で、会場に何ができるか

市川:生理はある程度は予測ができるという人もいます。しかし、ストレスや環境の変化もあり、100%予測するのは無理だと思います。であるならば、万一生理の日に試験がぶつかってしまっても、少しでも心地よく、安心して受験できる、誰もが自分の力を最大限に発揮できる、そういう環境を率先してつくっていくことが、私たちの掲げるエクイティなのではないか? と考えるようになりました。

それを解消する手段が、トイレにあらかじめ生理用品を設置することです。それに気づかせてくれたLAQDAプロジェクトには本当に感謝しています。

このプロジェクトへの参加を決めた後、全国の試験会場を運営する担当者たちとも連携しました。最初は、東京の試験会場に設置しましたが、すぐに、札幌・仙台・京都・沖縄と展開しました。オーストラリアの本社も、日本でのLAQDAプロジェクト実施に興味を持っており、結果が出たら報告してほしいと言っています

エクイティをテーマに、日本から世界へ

沢田:全国の試験会場担当者さんが支持して下さったということもすごく胸が熱くなるエピソードですが、オーストラリア本社も興味を持ってくれているとは嬉しいですね。

市川:そうなんです。エクイティは世界共通のテーマなので、オーストラリアの試験会場でも生理用品の設置を実現したいと考えています。コストの負担や持ち去りの懸念など超えなければいけない壁はありますが、徐々に進めていきたいと考えています。

沢田:置された後の展開は、オーストラリアの方が早いかもしれませんね、性教育も進んでいますし、生理をオープンに語れる土壌もあると思いますので、オーストラリアに置かれたら、日本の企業にも刺激を与えられそうです。

生理があるのは本人のせいではなく、突然来るのは生理現象で不可抗力です。それなのに、生理への対処は自己責任だという風潮があり、それが本人の負担になっているのは、非常に大きい課題だと思います。

市川:本当にそうですよね。どうしようもないものをひとりで抱え込むのは大変です。運営会社としては誰でも安心して受験できる体制を提供したいです。

沢田:ちなみに、わたしは英語がとても苦手で、海外の生理事情や論文など四苦八苦して翻訳していました。でも市川さんに今後サポートいただけると、海外とも手を取り合って進んでいけそうです。今後海外でのLAQDA活動を展開していく際に、是非お力添えいただけますと嬉しいです!

市川:もちろん!喜んでお手伝いします。

楽しい時間があっという間です。最後は市川さんと一緒に写真撮影しました〜。

たまたまオフィスにいたテストセンターのマネージャー今泉さんとも。
手前のぬいぐるみは、コアラとウォンバットです。

左:沢田、中央:今泉さま、右:市川さま

生理の悩みは全世界の生理ある人みんなの悩み。世界のみんなと手と手を取り合って、進めていけたらどんなに素敵でしょう!IDPエデュケーションさま、この度は本当にありがとうございました!

全国に広がった設置でさまざまな反響も

IDPエデュケーションさま Twitter

Twitterの反応

「この子」と呼ばれる距離感が、とても嬉しいです!!!
IDPエデュケーションさま、この度は誠にありがとうございました!!

📎 参考
International Women's Day:https://www.internationalwomensday.com/theme

📎 主催・協力・会場
主催:わたしの暮らし研究所株式会社
会場:IDPエデュケーション IELTS試験東京会場
撮影:加藤 康さま

*本活動は、経済産業省 令和4年度 フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金の支援を受けたものです。
https://www.femtech-projects.jp/ 

📎 経済産業省 令和4年度 フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金について
働く女性の妊娠・出産や更年期等ライフイベントに起因する望まない離職等を防ぐため、女性特有の健康課題は、女性本人だけではなく企業や社会全体で共に解決していくアプローチが欠かせず、その方策のひとつとして、フェムテックの活用が期待されています。経済産業省は、令和3年度より「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」を立ち上げ、このようなアプローチを通じて女性の就業継続を支援し人材の多様性を高めることで、中長期的な企業価値の向上を図ります。


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