Design&Art|Pikku Onni 小さな幸せ〈02.アアルトハウス・スタジオツアー〉
始まりは数年前の旅行。自然と街との距離が近く、湖のある風景や自然体で話をする国民性に「肌感覚が合う」と、フィンランドに魅了されたまりこさん。アアルト大学院生となった現在も、日々新しい発見の連続と言います。今回は、世界的に有名な建築家でありデザイナー、アルヴァ・アアルトの自宅&スタジオツアーへ参加した時のレポートです。数々の名作を生み出した空間は、当時の彼の姿を彷彿とさせます。
私が現在通っているアアルト大学は、フィンランドの建築家、アルヴァ・アアルトにちなんで名前がつけられています。そのためアアルトが建築した講堂や、図書館には彼に関する本のコーナーがあります。この大学でデザインについて学んでいるのだから、彼ついてもっと知っておきたいと思い、アアルトハウス(自宅)とスタジオ(仕事場)のツアーに参加しました。事前予約をするとツアーに参加することができます。
雪が降る3月の初旬に訪問。雪が降っていても室内は自然光を効率良く取り入れる作りになっているため明るかったのが印象に残りました。フィンランドの冬は日照時間が4時間ほど。さらにその中でも日が照っている日が週の半分以下になることが多くあります。そのため、フィンランドのマンションや多くの家は自然光を取り入れるための大きな窓が備え付けられています。一緒に訪れた友人とも「特に家にいる時間が長い今だからこそ、部屋に外の自然を感じられる大きな窓があることは大切だよね」と話していました。そんな光の取り入れ方に注目して、アアルトが過ごした家や仕事場をご紹介できればと思います。
アアルトハウス
「北欧の賢人」と呼ばれ、世界的に有名な建築家・家具デザイナー、アアルト。彼の自宅を訪れる前は大きく豪華な家を想像していました。実際は、思わず住んでみたいと感じさせる居心地のよい素敵な家でした。家の中に入ってみると、彼のデザインした家具や彼の最初の妻・アイノがデザインした食器などがセンス良く置かれていました。全体的に曲線が大切にされていて、自然光がたっぷりと入る内装で、自然に寄り添うような空間でした。
仕事場と自宅を兼ねたアアルトハウス。所々に日本の要素が取り入れられていて、自宅と仕事場は襖のような形をした木製のスライド扉で仕切られていました。そして、簾や、神棚の作りが取り入れてられていて、日本がちょっぴり懐かしくなりました。
キッチンの窓から見えるダイニングと簾。
2階のゲストルームの廊下には、彼の他の建築にも多く見られる天窓がついていました。柔らかい光が差し込む室内は、初めて訪れた人でも自然体でゆっくりと過ごせるような雰囲気があり、アアルトのゲストへの配慮を感じました。
スタジオアアルト
アアルトハウスから徒歩10分ほどにあるアアルトのスタジオ(仕事場)を訪問しました。スタジオの壁は直線ではなく曲線を描いていて、家具のフォルムに共通するように有機的なフォルムを大切にするアアルトの建築を感じました。この仕事場も自宅と同じように自然光がたっぷり入る設計になっていました。室内での音の響きを考え、有機物を混ぜ合わせて作られたオリジナルの壁を見たときには、アアルトの職人気質なところが垣間見えました。
自然光を取り入れて設計デザインをプレゼンできるショーケースがあり、設計アイディアの印象が光によって変わるというこだわりによって作られたそう。
スタジオの1階には食堂があり、白く清潔感のある2階のスタジオと異なり、照明も暖色が使われていてリラックスして食事ができるようになっていました。アアルトのお気に入りの席は窓際の隅の席だった様です。それを聞いて隅の席が好きな私は勝手に親近感が湧きました。
自宅とスタジオ両方を訪れ、二つに共通するのは光をいかに取り入れるかがとても大切にされていたことでした。こちらに来て以降、私も光の大切さをよく感じます。晴れた日、綺麗な青い空と太陽を拝めることが出来た時は小さな幸せを感じます。厳しい気候の中にいるからこそちょっとした自然の変化に感謝するようになりました。こうした自然に寄り添う配慮がアアルトの建築からは感じられました。
大学図書館で借りた『Alver Aalto Second Nature』。スタジオでのアアルトと妻のエリッサ。
スタジオの椅子にアアルト夫妻が座っている写真をアアルト大学の図書館から借りた本『Alver Aalto Second Nature』に載っているのを見つけました。彼らがここにいたんだとすり減った椅子の手すりを見てタイムトリップした気持ちになりました。デザインされてから約80年以上経っていることを感じさせないモダンな家具や家を設計した偉大なアルヴァーアアルト。そんな彼の名前のついた大学で学べている幸せを実感し、より勉強に励もうという気持ちになりました。
アアルトハウス・スタジオのサイト:https://www.alvaraalto.fi/en/visit/
日本でも世田谷美術館で『アイノとアルヴァ 二人のアアルト』展が行われています(6月20日まで)。アアルトの作品に触れてみたい方は、この機会に足を運んでみてはいかがでしょう?
Instagram: ma10ri12co