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Culture|フィンランドのカルチャーガイド 〈02.映画〉

フィンランドカルチャーのあれこれを、シンガーソングライターのゆいにしおさんが独自の視点でご紹介。「『かもめ食堂』は大好きだけど、フィンランド映画は観たことない…」「最近の作品で気軽に観られるものはないかな?」。そんな方におすすめしたい3本をピックアップしていただきました。

「365日のシンプルライフ」

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フィンランドの若者・ペトリは、彼女にフラれたことをきっかけに、ある実験生活を決意します。そのルールは4つ。

① 持ちもの全てを倉庫に預ける
② 1日に1個だけ倉庫から持って来る
③ 1年間、続ける
④ 1年間、何も買わない

ペトリは所有物全てを手放し、冒頭からいきなり丸裸で雪の中を走ります。窓ガラスに食品を置いて冷蔵庫代わりにしたり、コートの袖に足を入れて寝袋にしたり、と衝撃的な映像が続々。そんな生活を送るうち、人生で大切なものが見えてくる、そんな物語です。これは監督のペトリ・ルーッカイネンの実体験なんだとか。

必要最低限・自分が本当に必要なものだけで暮らすのが「ミニマリスト」だとしたら、私は「マキシマミスト」です。マキシマミストは、同じくたくさんのものに囲まれて暮らす兄が命名したもの。私は本当にたくさんものを持っていて、特にカバンは、似たようなサイズのリュックを3つ持っていて、コットンのバッグも3つ、小さいショルダーも3つ。こんなに持っていても、他にも所有物がありすぎて入りきらないのです。でも、今のところマキシマミストによる不幸は感じていないので、ペトリのような悲劇が起きない限りは、物は捨てられなさそう。

やっぱり映画のようには、気軽にできるようなもんじゃないよなあ、と思ってしまいました。何にもない部屋で暮らすのは絶対に無理!という方も、映画の中で擬似体験を楽しめます!

Highlights:疾走感のあるサックスが映画のスパイスに!

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ペトリの激しくも淡々と流れる365日の生活シーンを、ドラマティックに切り替えるのはジャズサウンド。なんと、このサックスを吹いているのは、前回の「フィンランドのカルチャーガイド | 音楽」で紹介したティモ・ラッシー(Timo Lassy)です。

また、サウンドトラックの曲名を見てみると、「イントロダクション:おばあちゃん」「おばあちゃんのテーマ#1・#2」と、おばあちゃんの曲がいっぱい!この映画の中ではおばあちゃんの言葉も、音楽同様スパイスを与えています。「持っているものの多さで幸せは計れない」「人生はモノで出来てない。別の何かが必要だよ」。思わずじーんとくる言葉の連続。映画を観終わった後は、サウンドトラックもチェックしてみてくださいね。

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「ファブリックの女王」

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カラフルで美しいテキスタイルが日本でも人気のファブリックブランド「マリメッコ」。これはその創始者、アルミ・ラティアの物語です。戦後間もないフィンランドは、女性の地位が恐ろしく低い時代。そんな中、アルミは1951年に「マリメッコ」を立ちあげます。全財産を投じ、ヘルシンキで最初のファッションショーを行い、事業は軌道に乗りますが、そこに待っていたのは壮絶な人生でした。

お酒を飲み続け、不倫をし…という浮き沈みの激しい日々を送りながら、アルミは女性の新しいライフスタイルを作っていきます。コルセットから解放された女性たちがさらに自由に行きていくために戦う姿は、陽気なウニッコの模様を纏う女性たちが少し違って見えてくる。
今までマリメッコのことが気になりつつも購入したことはなかったのですが、気合いをあげたい日には身に付けたい、そんな気分になりました。

Highlights:ライフスタイルを着る

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何気なく着ている服やデザインには、作り手の想いが込められている。この映画を見て気づかされたのは、ファッションを着ることは思想の表現にもなるということ。

例えば劇中では、アルミが反対したものの、既に店頭で人気を博していたボーダー柄のユニセックスなファッション。等幅のボーダー柄・タサライタは、ジーンズに似合うシャツとしてデザインされました。ボーダーのTシャツは今でこそカジュアルで一般的ですが、女性がコルセットを脱ぎ捨て、ジーンズを履いて自立していく女性の象徴だったのですね。

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「オンネリとアンネリのおうち」

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ある日、オンネリとアンネリは「正直者にあげます」と書かれたお金の入った封筒を拾います。親友である二人はそのお金で、ずっと憧れていたふたりだけで住める家を買うことに。そんなふたりの独立の物語です。

私も小学校の頃、とても仲のいい女友達がいて、「バイバイ!」と言いながら繋いだ手をずっと離せずにいたり、「ふたりで一緒に暮らしたら私が料理をするよ!」なんて約束したりしたことを思い出しました。

でも、オンネリとアンネリの7歳とは思えないほど、自分たちで考えて行動していく姿に、自立と主体性を大切にするフィンランドらしさが垣間見られます。あの頃の私なら、料理担当をすぐに放り出してホームシックになってしまうんじゃないかな(笑)。

Highlights:ふたりのお揃いのファッションに注目!

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オンネリとアンネリのおうちにあらかじめ用意されていたのは、食べ物やペットの小鳥やドールハウス、そしてお揃いの服とアクセサリー!シーンごとにコロコロと変わるお揃いの服は、どれもカラフルでおしゃれ。フィンランド・アカデミー賞、衣裳デザイン賞も受賞したキュートなファッションは、映画衣装スタッフによるオリジナルなんだとか。新鮮な色使いを取り入れてみたくなります。

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