Culture|Moi Sauna Moi Towada 〈04.北東北の手仕事、サウナハット〉
フィンランドが発祥とされるサウナ。ここ数年は日本でも人気が高まり、「ロウリュ」や「ヴィヒタ」といったフィンランド特有のサウナ文化も浸透してきていますが、まだまだ知らないことも多いはず。この連載では、今年の春にオープンしたサウナ施設・十和田サウナさんに、サウナにまつわる様々な話を伺います。
こんにちは、十和田サウナです。早いもので、この連載コラムも4回目を迎えました。少しでも十和田サウナを通して日本の北奥(ホクオウ)・十和田の魅力をお届けできたらと、毎回どんな内容にしようかと悩んでおりますが、今回は十和田サウナでも販売している「サウナハット」について少しご紹介したいと思います。
サウナの必需品、サウナハット
皆さんもご存じの通り、サウナを楽しむために欠かせないアイテムのひとつがサウナハットですよね。サウナ好きであれば、マイサウナハットをお持ちの方も多いのではないでしょうか。サウナハットは北欧やロシアでもよく使われている、サウナの熱~い蒸気から頭部を保護するためのアイテムです。髪が痛むのを防いだり、のぼせを軽減してくれるので、十和田サウナでも着帽をおすすめしています。
現在十和田サウナでは、オリジナルのサウナハットを販売しています。こちら、何かに見えてきませんか?そうです、このサウナハットは十和田サウナの水風呂でもある「十和田湖」をモチーフにしています。湖、それを囲む外輪山、そして空。目の前に広がる大自然を映し出したデザインです。何度か試作を重ねてこのようなかたちとデザインに辿り着きました。
廃棄されていた羊毛から生まれた藤里町の特産品
サウナハットを1点ずつ手作りしてくれているのは「羊毛ハウス ちくちく(以降ちくちく)」のお母さんたち。ちくちくは、十和田湖から車で西に1時間半ほどの、世界自然遺産でも知られる白神山地の麓、秋田県藤里町にあります。「チクチク、チクチク」。サウナハットの材料である羊毛をせっせとフェルト化してサウナハットを仕上げていきますが、それは一番最後の工程。ここでのサウナハットづくりは、藤里町で育てられた羊の毛を手洗いするところからはじまります。
藤里町はラム肉が特産品。「大野岱(おおのたい)放牧場」では30年ほど前から、上質なラム肉を出荷するための羊の飼育がはじまりました。
食用のため、今までは廃棄されていた羊毛。それをサウナハットに利用したのがちくちくのお母さんたちです。はじめは羊毛でポーチやブローチ、ルームシューズを制作していたお母さんたちですが、とあるテレビ番組にて「空前のサウナブーム」という言葉を目にし、「これだ!藤里町で育てた羊の毛で作った「サウナハット」を特産品にしよう」と決めたそう。
サウナに関してほぼ知識がなかったお母さんたちがはじめに頼ったのは、テレビで紹介されていたサウナ施設、秋田県にある「タザワコサウナ」。運営している「サウナのお兄さん」に、デザインなどの監修に入ってもらったそうです。今では、藤里町のふるさと納税の返礼品として「サウナハット」を選べるようにもなりました。立派な特産品です!
サウナハットができるまで
今回、毛刈りと羊毛の洗浄、植物染までを見学させてもらったのでその様子をご紹介します。
まずは羊の毛刈りから。暴れる羊を抑えて、バリカンで毛を刈っていきます。
刈られた毛は広げるとこんな感じ。ふかふかの羊毛です。
洗浄はなんと、藤里町に湧き出る温泉で!ぬるま湯と廃油を使った石けんで丁寧に洗います。羊のふんが結構ついているのですが、こするとフェルト化してしまうので、押し洗いでやさしくやさしく…。
水気を絞って乾燥させます。この後、乾いた状態で余分なものを再度取り除き、きれいな羊毛にしていきます。
次に植物染めの行程です。お母さんたちはマリーゴールドで染めていました。
私たちは十和田で採取したクロモジの染色に挑戦。(十和田サウナオリジナルとして販売の日も近いかも?)
じっくりと1時間以上煮出してから、媒染液につけて色を入れます。
こちらは染め上がったクロモジ色の羊毛。ほのかにピンクがかっています。
そして、完成したのがこちら!十和田湖産クロモジで染めたオリジナルサウナハットです。
ふんだんに羊毛を使い、しっかりと針を刺すことで、より強度のあるサウナハットに仕上がっています。
毛刈りからはじまり、一点一点丁寧につくられたサウナハットは世界にひとつ。このサウナハットに宿るお母さんたちの想いが、サウナをよりいっそう熱くしてくれることでしょう。
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