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Events|Taito Kauppa / フィンランドの工芸 〈フィンランドの景色をリュイユに映して〉

現在LAPUAN KANKURITにて開催中の「Taito Kauppa / フィンランドの工芸」。表参道店では、日本の作家により継承されているフィンランドの伝統的な工芸を集めてご紹介しています。

前回に続き、今回はフィンランドの伝統的な織物「リュイユ(Ryijy)」の制作を行う、ocave(オケイヴ)さんにお話を伺いました。たくさんのご質問に、明るくフランクにお答えいただいたocaveさん。その様子をそのままにお届けします。

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リュイユは、スカンジナビアの言語で「厚い布」を意味する「Rya」に由来した毛足の長いウールの織物で、フィンランドでは古くからアートテキスタイルとしてタペストリーや敷物として親しまれています。17〜19世紀にかけては、特に多くのリュイユが作られており、結婚式などの大切な行事のために織られることも多かったとか。

--織物やフィンランドの文化に詳しいocaveさん。興味を持ったきっかけを教えてください。

「子供の頃から、布のハギレやリボンなどを収集するのが好きでした。また地元が絹織物の産地ということもあって、学習とまではいきませんが、見聞きする機会があったのも一つのきっかけのように思います。それからは身の回りの布、主にファッションに興味を持って、テキスタイルを勉強しようと思いました。」

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「テキスタイルデザインを学ぶうちに、幾通りもの糸や色の組み合わせで無限に広がる織物に魅了されました。織りの緻密な作業工程も自分には合っていて、細かな制作に没頭していました。また、学生時代の織りの先生が、夏休みになるとフィンランドで子供達に織りを教えていたのがフィンランドに興味を持つ最初のきっかけだったと思います。」

--織物にはさまざまな種類がありますが、その中でリュイユのどんなところに魅力を感じますか。

「手仕事の温かさはありつつも、柄と色合いがどこか洗練されているところが好きです。現在は主にラグやタペストリーとして飾ることが多いようですが、昔は毛布として使用していたという話を聞いて、いつかベッドサイズのリュイユを織ってみたいと思っています。おしゃれですよね!また、機械織りでは難しい素材を使ったり手織りならではの面白さを表現できたら、、!と考えています。」


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ocaveさんのリュイユは、フィンランドの伝統的なモチーフの他、お菓子の包み紙がモチーフになっていたりするようなポップなデザインの作品もあって、リュイユを知らない人でも気軽に取り入れたくなってしまう魅力があります。

--デザインのインスピレーションは、どこから得ていますか。

「リュイユの古い図録やフィンランドを訪れた時の旅の写真、それからチケットや包装紙などの紙モノからインスピレーションを得ることも多いです。織る前は旅の思い出ボックスをひっくり返して、デザインの元になるものを探しています。」

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「今回出品させていただいた、『Metsäkukkia』や『Meri 』、『Talvi tie』 はフィンランドに訪れた際に見た景色をインスピレーションにしています。タイトルの通り、森に咲く花々や、ひんやりとした風を感じながら港から見る海、列車の車窓に映る冬の道をイメージして作りました。『Tanssi』は、タンペレの蚤の市の一角でフォークダンスを踊っていた人達を、『TUTTIFRUTTI』は、フィンランドのスーパーで見つけたお菓子(フルーツ味のキャンディー)の包み紙をイメージしています。私の旅の思い出から、フィンランドの景色を共有できたら素敵だなと思い制作しました。」

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--度々フィンランドを訪れているocaveさん。どんなところに魅力を感じますか。

「なんといっても自然の心地良さを感じられるところだと思います。市街地から少し足を伸ばせば森や湖が広がり、時間も忘れてしばらくぼーっとしたり、、『私、ぼんやりするのがこんなに好きだったのか!』と驚いたことがあります笑。また、四季をめいっぱい楽しむフィンランドの人々に親しみを感じます。日本に帰国する度なぜか、『また帰りたい』と思ってしまう不思議な感覚は、きっとそんなフィンランドの人々や自然に触れたからなのでしょうね。」


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リュイユを実際に手にとってみると、毛糸の長さや太さ、織りの密度がひとつひとつ異なり、全く違う表情をしています。

--作品を製作する上で、決めているルールはありますか。

「事前にデザイン図を書いたりはせず、織りながら色や柄を決めるようにしています。織り進めた後に、やっぱり違うな・・・と思って、解いて織り直すこともしょっちゅうです。デザインを決めてから織れば良かったと後悔することもしばしばなのですが、決まったものをその通り織るよりも、その時の気分や感覚を大事にして織る方が何より楽しくてそうしています。あっ!でも、大枠のデザインはちゃんと織る前に決めていますよ。」

ocaveさんのリュイユは、空間がパッと明るくなるような、楽しげなモチーフも多いですよね。ご自身が楽しみながら製作されているからこそ、生まれてくるデザインなのかもしれませんね。

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--最後に、リュイユのおすすめな楽しみ方などがありましたら教えてください。

「ご自宅の窓からフィンランドの景色を眺めるように壁に掛けて飾ったり、小さいサイズのものはお気に入りの小物と合わせて棚に敷いたり。日常のなにげない瞬間に、フィンランドの空気を感じていただけたらと願っています。」

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織物作家としての活動をスタートしたばかりのocaveさん。そのお話からは、リュイユの新しい可能性を感じることができました。

作品は、表参道店にて7月25日(日)まで展示販売しています。伝統工芸でありながら、現代のインテリアにもしっくりと馴染み、空間を柔らかく、豊かなものにしてくれるリュイユ。手仕事ならではのやさしさとあたたかさを、暮らしに取り入れてみませんか。

ocave
東京都出身。文化服装学院卒業。東京の織物工場にて、服地の企画・開発や製造を担当。2021年にocaveとして活動を開始。古い図録や洋書から得たインスピレーションを元に幾何学模様や花柄、自然や動物などの伝統的なモチーフに独自の解釈を加えたリュイユを制作している。
Instagram: @ocave__