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【読書感想5】「陰の実力者になりたくて!04」

 今回読んだのは筆者が愛してやまない陰の実力者になりたくて!の第四巻。半年前(2023年末)にアニメが放送され映画化が決定されたホットな作品の一つである。
※ネタバレ注意

あらすじ

父を殺め、国に背いたローズは、母・レイナ王妃を守るため、ドエム公爵の軍門に下った。
戦争の気配が濃厚に漂う芸術の都・オリアナ王国では、ローズとドエムの結婚が噂されている。

「許さんーーッ」

結婚なんて絶対にさせない。
たとえ親が許しても、僕が許さない。
なぜなら……

「ローズが『覇王』になれば僕の『陰の実力者』プレイが捗るのだから!!!!!」

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作品解説
 この陰の実力者になりたくてという作品は、割と純粋ななろう小説である。だが俺ツエーの嫌味成分がない。それは主人公のシドがクセモノだからだ。
 陰で暗躍する実力者になるため己を鍛え続けた先に核という越えられない壁を見たシドは、自らが核になることでそれを克服する(?)。そして異世界で絶対的な地位を築く。とてつもない実力を身につけた彼は、(なぜか美少女だけで構成される)シャドウ・ガーデンという組織とともに裏世界で暗躍する。ここに彼にとって悲願の状況が実現した。
 ところが当のシド本人は、そんなことがあるはずないと、彼女らが陰の実力者プレイに付き合ってくれているだけだと思い込む(???)。
 彼女らシャドウ・ガーデンの構成員たちは、シドに不治の呪いから解放してもらったことにより忠誠を誓った存在だ。うさんくさいオヤジ司祭をぼこぼこにしたり、シドから得た現代日本の貨幣経済知識を悪用してマネーゲームを展開したりと、やりたい放題を繰り広げる。
 しかしシドは、自分がいかに陰の実力者プレイを楽しむかにしか興味がないため、彼女らがなぜそのようなことをするかには徹底的に無頓着。でも自分の力や状況をひたすら楽しもうとする彼の姿勢はなぜか憎めない。

四巻の解説

 この四巻は前半と後半に分けられる。オリアナ王国を手中に手に入れようとするドエム公爵を倒し、超つえーラウンズの12人の一人モードレッドと外部世界の住人「燃えるコウモリ」を下してオリアナ王国に安寧が訪れる前半。黒い穴に飛び込んだ結果、魔物たちに蹂躙されていた現代日本にシドが帰還。そしてかつての同級生アカネを救出し異世界へと戻る後半に分けられる。
 アニメの続きである四巻から小説を読み始めたのだが、意外とアニメとのギャップを感じる部分が多かった。なろう発だけあってかなり簡素な文体で、アニメの演出になれていた身としては物足りなさを感じる部分も少なくなかったのだ。
 その反面、すらすらと読める文章によってストーリーを追いながらコメディパートを楽しむことができた。一長一短といったところ。
 この巻の内容は、闇落ちから救い出すパートなどが特にそうだが、比較的古典的=王道的な内容が多かった。最近のなろう系ファンタジーといえば、「ステータス! 奴隷解放! 敵を無双! ヒロイン篭絡!」といった調子だが、本作は俺ツエーでありながらそういう要素は影を潜めているし、四巻では短期間だけ元の世界に戻り、再び異世界に帰るという荒業をやってのけている。古典を生かしている点が評価できる作品だ。

おわりに

 複数の世界を縦横無尽に駆け巡り、思いがけずいろんな人を救済しちゃうシドの物語第四巻。読みやすくて面白いので、ぜひ読んでみてほしい。

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