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書評#7 穂村弘『短歌のガチャポン』

ジェイラボの活動の一環として、『短歌のガチャポン』を読んだ。800字書評も書いたので、興味のある方はこちらもご一読されたい。 はじめに 本書は現代短歌の先頭をひた走る歌人たる穂村弘が、有名無名・時代を問わず選んだ異なる歌人による100首の短歌と、それらへの穂村弘自身の短い解説が載せられた歌集である。 私はこれまで、短歌のみならず、俳句、詩などいわゆる「ポエム」と呼ばれるものを一切嗜むことなく生きてきた。 特に忌避したつもりはないのだが、しかし私はこれまで自分自身を論理世

    • 書評#6 大石哲之『コンサル一年目が学ぶこと』

      わくわくタスクとして、大石哲之『コンサル一年目が学ぶこと』を読んだ。 コンサルという言葉自体は就活をしている友人や先輩から聞いたことがあったが、具体的にどのような業種かは全く知らなかったため、本書を読むにあたって軽くインターネットで下調べをした。 なるほど、顧客である企業から依頼を受けてその経営課題を解決するというのがコンサルの業態らしい。ただ とのことなので、どうやら下調べは不要だったようだ。 たしかにコンサルティング業の本質が、いち企業の経営課題を「外部」である人間

      • ★いきいき★自己紹介

        Jlabにおいて課されるタスクの期限を早くも侵してしまったため、★いきいき★することになりました。 2000年生まれの24歳、出身地は京都府の洛外です。 地元の小中、京都市と亀岡市を結ぶ山の斜面に立っている高校に通っていました。大学は京都の国立大学の京大じゃないほうです。応用化学を専攻していますが、後述のようにまだ何も理解していない状態です。 現在一浪二留しています。取得単位数は53、これは平均的な一年生が学期末に取っている単位数とほとんど一致しており、僕の怠惰さをそのま

        • 書評#5 フランソワ・デュボワ『作曲の科学』

          ジェイラボの活動の一環として、『作曲の科学』を読んだ。下サイトにてチクシュルーブ隕石さんの書評が公開されているので、是非ご一読頂きたい。 養老孟司氏が著した『唯脳論』より引用する。 引用が長くなってしまったが、実は僕も、音楽とは情緒的なものであると思い込んでいたくちである。音楽に論理があるとは思いもしていなかった。 論理とは何か。前提と結論、2つの文の間に与えられるいち関係性の記述である。あるいは、その推論にある種の「正しさ」を与えるルールであると言い換えてもよい。論理

        書評#7 穂村弘『短歌のガチャポン』

          書評#4 岸由二『生きのびるための流域思考』

          ジェイラボの活動の一環として『生きのびるための流域思考』を読んだ。下サイトにてあんまんさんの書いた書評が公開されているので是非読んで頂きたい。 本書のタイトルを一見すると、「社会を」生きのびるために必要な思考の流れ(=「流域」)を説いた本なのかと勘違いしてしまうが、実際にはまったく異なる。「流域」とは文字通り流域である。「生きのびる」とは富を得る、あるいは失わないことではなく、文字通り生きのびることである。本書は、水害の絶えない日本で生きていくための思考法を、「流域」という

          書評#4 岸由二『生きのびるための流域思考』

          書評#3 岡田尊司『発達障害「グレーゾーン」』

          ジェイラボの活動の一環として、『発達障害「グレーゾーン」』を読んだ。800字以内の書評が下のサイトにて公開されているので、興味のある方はぜひ読んでみてほしい。 発達障害をはじめ、精神疾患とは考えてみれば不思議なものである。精神とは脳のいち機能であり、われわれの「行動」そのものではない。私たちは表情筋を駆使して顔の各部位の配置を変化し、それは例えば笑顔と呼ばれたりするが、そこにあるのは単なる顔のパーツの位置変化であって、「精神」そのものではないはずである。私たちは笑顔を浮かべ

          書評#3 岡田尊司『発達障害「グレーゾーン」』

          書評#2 小野寺拓也・田野大輔『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』

          本書は「ナチスは良いこともした」という、筆者曰く俗評高まる言説を歴史学的見地から検証するものである。 正直なところ私自身はこのような論を耳にしたことがないし、本書を読むにあたっての前提知識として位置付けられているナチスの個別の政策についても、はっきり言って全くの無知であった。 よって私自身、本書の各記述の真偽を語ることは出来ない。特に、各章で歴史的事実として語られるものが本当に正しいのか、それをちまちまと検証する気はない。すべては著者の「誠実さ」に依存するのみである。 本書

          書評#2 小野寺拓也・田野大輔『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』

          書評#1 宇佐美寛・池田久美子『対話の害』

          学習者に学びを提供する形式として「対話」がいかに有害であるか、マイケル・サンデルの『ハーバード白熱教室』の一幕を引用して説いている。引用もとい「猛烈な批判」である。あまりに猛烈すぎて、ついに最後のページまでサンデルの話題から離れることはなかった。 『対話の害』という抽象的な題に惹かれて手を取った人は意表を突かれたことだろう。もちろん「対話」の「害」に関する普遍的な考察はあるのだが、サンデル氏批判の熱量を考えると、本書のタイトルは本当にこれで良かったのだろうかと思ってしまう。

          書評#1 宇佐美寛・池田久美子『対話の害』