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かんばらけんた - Dancing Beyond Boundaries

ダンサーかんばらけんたさんの取材番組が、NHK WORLDで放映されました。オンラインでも公開されていますので、是非ご覧ください。英語が分からない方も、かんばらさんの凄さを垣間見ることができると思います。
今年の2月に開催した『DIVE IN SHIBAURA』の公演の様子、そしてインタビューが含まれています。

https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/news/liveblog/4/80/

LAND FESとの関わり 

LAND FESが初めてかんばらさんにオファーしたのは、コロナ禍も真っ最中の2020年にオンライン配信を行った『LAND FES in SHIBAURA』です。実は、遡ること2016年には、調布市せんがわ劇場で実施した大野慶人さんのワークショップに一参加者として受講して下さっていました。その後、彼が出演する様々な映像を通して、自然と名前が伝わって来るようになり、ダンサーとして、表現者として注目するようになりました。
それから『LAND FES in SHIBAURA』ではオランダ大使館、『LAND FES 753 village』では横浜市緑区にある753 villageを舞台にして、立て続けに映像出演していただきました。

その後、2021年夏の『LAND FES DIVERSITY 深川 2021』では、ダンスワークショップの講師をお願いしました。親子や、車椅子の方、大学生など様々な参加者と、かんばらさんの創作プロセスを体験した後に、街に繰り出してダンス映像を撮影しました。

深川でのダンスワークショップ

身体性を凌駕するなにか

気づけば、こうして様々なプロジェクトに関わっていただいているのですが、私が彼の何に惹かれるのか、一言で表すのは難しいです。今でもそのことを言葉にしようとすると、的外れになってしまいそうな、誤解を招いてしまいそうな、そんな危うさを感じています。ただ少なくとも、かんばらさんは車椅子に乗っていなくても、ダンサーになっていただろう、とそんな気がします。普段はとても落ち着いた物腰、そして少年のような表情が、ステージに上がると一変し、気迫に満ちたエネルギーと感情が、極限までに削ぎ落とされた筋肉の隅々から、狂気のように放たれるのです。私は、かんばらさんの身体から、特定の技術の習得を超えた、とてつもなく強いダンスへの想いを感じています。車椅子だから、ということは全く関係なしに、むしろ身体性を超えた表現なんじゃないか、と思うことさえもあります。

射抜くような鋭い眼光 写真=木村雅章

NHK WORLDの番組内でも、「ハンディキャップを持っているダンサー」として見られたくない、と語っています。『DIVE IN SHIBAURA』ではテニスコーツの植野隆司さんを相手に即興にトライしたり、ストリートダンスのバトルに参加したりと、色々な挑戦をされています。かんばらさんが意図していることとは相反するのかもしれませんが、彼が挑戦をすればするほど、人々のステレオタイプが更新され、ダイバーシティーの理解とその可能性が広く伝わっていくのだと思います。かんばらさん自身がこれまでも、そしてこれからも様々なハードルを乗り越えていく姿には、とても自然に、そして強烈に、人の心を打つものがあると思います。

ダンスを超越する姿

同時に、バレエ、モダン、ジャズ、舞踏、ヒップホップ… カテゴリーに縛られがちなダンスの世界にあっても、「かんばらけんた」という一つの身体は光っています。
かんばらさんにとっては、これらの技法を習得することが目的ではなく、自分の身体で究極的に何を表現できるのか?が重要なのであり、そういう意味でもアーティストと呼ぶに相応しいと思います。そこに向かう意志の強さは彼の眼の中にも表れていて、かんばらさんを見ていると、その技術はもちろんですが、精神が身体を凌駕していくパワーに圧倒されます。

車椅子を変幻自在に操る 写真=木村雅章

方法のための方法ではなく、目的のために様々な方法を取り入れながら確立してきた彼のオリジナリティーは自ずと際立ち、そのことによって、かんばらさんに魅入られる人も増えていくことと思います。
このような形で世界中に放映されることで、ダンスを超越し続けるかんばらさんの姿が、また別の誰かに影響を与え、ダンスの、ひいては「生きること」への多くの既成概念が取り払われることを願っています。

テキスト=松岡大(LAND FES)
https://landfes.com

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