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動線

「レイアウト」は奥が深くて正解がない。
というか、「正解がない」わけでなく「正解だらけ」なのかもしれない。
お店で商品をレイアウトしたり自宅で家具をレイアウトしたり、目的や間取りなどの環境によって考える動線は異なる。「商品の見栄えも良くていいレイアウトができた!」と満足のいくレイアウトができたとしても「とりあえずいいアイデアが思い付かないからここに置いておこう」と何気なくレイアウトした家具の方が見栄えよく写って先に購入に繋がるケースだってある。

某ロックバンドが言っていた「しっかりあたためて作詞作曲したあの1曲よりも、アルバムの途中、箸休めでつくったあの1曲の方が人気曲になっていてなんだか複雑な気持ちになりました」と。僕も似たような気持ちになったことがあるから、なんとなく「その気持ちお察しします」と心の中で思ったことがあった。

レイアウトなんてものは店側が「こうつくりたい!」と考えて商品の配置を構想し、形として視覚化したいだけのエゴにすぎない。(これはスタッフ主導で店内をいじれるってことが前提の話)だから別に一番綺麗なレイアウトができて褒められなかったとしても落ち込むことはないし、むしろ「これはハズレだったんだな、ふむふむ」と「ハズレだった」という経験を得られる。これはこれでメリットと考え、次の思考に入る。新たな商品構成と見せ方にワクワクしながら行動できるのだ。

4月初旬あたり、「レジの配置を変えて販売エリアを拡大しよう」とかねてよりレイアウト構想を考えていた路面側の店内。家具の位置を変えるだけなら早い話なのだが、僕がこの店舗へ配属される前からずっと触らず放置されていた(僕も放置していた)爆弾がある。

レジの裏に集約されたPC、プリンター、固定電話、ルーター、モデム、アンプ、スピーカー、その他諸々の配線だ。綺麗にまとめる前にあれやこれやといろんな媒体のプラグを何も気にすることなくコンセントに刺していったせいで、「ポケモンにこんなのいたよね、確かモンジャラってやつだ、へへ…はぁ…」そんな形にまで膨れ上がっていた。

ここに手を付けないとレイアウトに支障が出ることはわかっていた、頭をフル回転させてコードの跡を辿りながら一つずつ外したのだが、繊細な人間ではある方だと思っていたけど、こんなところで苦戦している自分にイライラして結局「なんとかなるっしょ」と言い聞かせて全部のプラグを否応なしにブチブチ引っこ抜いた。

そんなこんなで後々いろいろと困ったのだが、家具を動かす段階にようやく入った。頭の中で組み上げた商品の配置、それがどんな角度でどう人に見えているのか、そんなに考えなくてもとりあえず動かせばいんだよ!って言われそうだけどウダウダと構想して大枠が完成。

とりあえずレジがないことにはお店としては困るばかり、完成を急いだ。「せっかくだし、今まで使っていたものとはオサラバして好きな古道具でレジ周り作ってしまおうか」と、販売用に準備しておいた水屋箪笥をわざわざ備品にして書類や備品の保管用に使用することにした。そのほかにもアイアンのかっこいい扉にスケールや紙袋などを引っ掛けておしゃれな感じに仕上げてみた。「まずは使い手が満足すること」スタッフ側からすると、「それを備品にするなんてもったいない」と思ってしまいそうな商品だったのだけど、逆にこれは「古道具の使い方」の提案にもなる。考えようだけど、そういう思いで使う方が楽しいし、毎日がなんだか心地いい。

たまたま天井がアーチ上になっていて、遠くから撮影すると可愛い仕上がりだ、大変満足。UCC COFFEEのガードもなかなかいい配置(これはスタッフからの贈り物)。レジ台として使用しているのは実はでかい水屋箪笥の上部。反対側は引き戸になっていて収納力も格段にあげることができた。

まだまだ改良の余地はあるので、今後もバージョンアップさせていきたいところだ。




肝心の売り場。ビフォーアフターで載せたかったが、元々記事にしようって気がなくて写真を撮り忘れた。壁側が高く、真ん中にいくほど低いレイアウトがベースとなっている。「奥を見せない」レイアウトがキミドリ内では当たり前になっていたからどうしても所々で高くしようと考えてしまうのだが、あくまで「食器がいっぱい見える」という単純なレイアウトにこだわって今回は動かした。


なによりレイアウトをした中で一番変わったところといえば、家具はもちろんなのだが、「動線」がいつもより広くなったところだ。ちなみにいつもは、「この幅冷蔵庫通るかな?」くらい。予想以上に余裕ができたおかげで食器を見る際に後ろを通る人の気配が気にならなくなった。これはいい利点だなと思ったし、お店の中で「動線」がいかに大事なことなのかを知ることができた。

周りを気にすることなく好きなお皿と向き合える環境が整ったのではないかと思う。まだ甘いところはあるが、修正次第でレイアウトはずっと楽しめそうだ。

もちろん「動線」は広ければいいという話でもなくて、場合によっては狭く見せることもまた「動線」のつくり方であり見せ方である。

長くて時に窮屈に感じてしまう森の中、歩いた先に見える広大な景色や満天の星空が常に待ってくれているように、そこに至るまでの「動線」もまた感動や体験を作る要素の一つになっているのだと思う。特定のスペースや場所にこだわるだけでなく、道筋(動線)もエンタメというコンテンツに変えてしまえば、結果的にもっと楽しい「お店づくり」という事にも繋がっていくはずだ。



今日も今日とて、この小さな箱にぎっしり詰まった道具たちを愛でながらワクワクすることを考えようか。

ではでは。



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