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短いおはなしのまとめ

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自分で書いた、短編と呼べないくらい短いお話をまとめています。ほとんど続いていませんが、たまに設定が同じ時があります。
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#ショートストーリー

傲慢な男の或る夏の日

 「嘘つきだよ」 そうだね。黙ってコーヒーを飲みながら、瞬きだけで同意をした。 「分かって…

燈子
9か月前
3

偶然とか自然現象とかそういう類のもの

 幸せでありたいと願っていた。そういう風に思っていた。全部気のせいだった。最初から望むも…

燈子
3年前
4

だって許されているからもう救われているんだ

 魂を失っても人は生きていけた。これだけは奪わないでと懇願したものを自ら捨てた次の日も、…

燈子
3年前

恨んで羨んで焦がれている

 わかれて、違って、終わってゆく。全部が嘘で、全部が本当だ。羨んでいたあの子も、きっと誰…

燈子
4年前
1

余ったイチですらない

 足元ばかり見て歩いていた。そのうちにあまりにも美しくない後ろ姿に辟易して、今度は遠くを…

燈子
4年前
2

ミサゴの仔

 腕を広げた。そのままくるっと一回転。これが僕の世界。上を見上げて、それから後ろに続く獣…

燈子
4年前

誰かの特別でありたいと祈った

 部屋の隅に積み上がった箱を潰し、紐で縛った。もう着ないであろう服や靴をビニール袋に詰め込んだ。いつのものか分からない葉書を、びりびりと細かく破いて、それもまた袋に入れた。あの頃あんなに欲しがっていたはずの髪留めは、いつの間にかどこかへ紛れ、知らぬ間に変色し、そうして今捨てられてゆく。終わりはいつも突然のようだけれど、本当はいつだって隣にあって、皆そのことを知っている。ただ、その曖昧さに想像力を欠かして、簡単に忘れてしまえるだけだ。くたりとした衣類を押し込み、袋を縛る。何枚目

だってもう、誰も守ってくれない。

 ぎざぎざになった爪先に、赤いマニキュアを塗った。安っぽい赤が、ぬめぬめと光って、終わっ…

燈子
4年前
1

奪われるだけが人生だと

 救いも祈りもない。飲み込んだ言葉は吐き出せない。黒い塊になって、ずっとずっと胃の底に沈…

燈子
4年前
1

きっとその代わり、別の誰かが救われてゆく

 「大丈夫だよ。毎日楽しいよ。私に何を言わせたいの?」最後に言われた言葉がぐるぐると頭を…

燈子
4年前
1

でも、許してもらわなければ入れない

 欲しいものは、称賛ではなく承認。止まない雨はないなんて莫迦みたいな言説ではなくて、大丈…

燈子
4年前
2

ある秋の穏やかな日

 明日に変わってゆくことが、堪らなく恐ろしい。だから朝を拒絶して、いつまでも今日が終わら…

燈子
4年前
3

どこかのメルヘン

 嘘を吐き続ければいつしか本当になると思っていた。空から星は降ってくるし、月も後ろをつい…

燈子
4年前
3

話す鏡の魔法

 鏡の向こうで泣いている自分が、哀れで惨めだった。声を潜め、背中を丸めて、誰かに気づいてほしいと泣く姿が、浅ましくて気持ち悪かった。耐えきれなくなって、こちら側から鏡を割った。がしゃんと大きな音がして、じんじんとした痛みとともに赤い滴が落ちていった。それでもまだ、割れて残った向こう側、自分はどうしようもなく泣き続けていた。音に驚く素振りも見せず、ただただ惨めそうに泣いていた。なんて浅はかな女だろうと苛立って、殴ってやりたいと思った。けれど、割れた鏡の残りでは、こちら側から向こ