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短いおはなしのまとめ

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自分で書いた、短編と呼べないくらい短いお話をまとめています。ほとんど続いていませんが、たまに設定が同じ時があります。
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#小説

偶然とか自然現象とかそういう類のもの

 幸せでありたいと願っていた。そういう風に思っていた。全部気のせいだった。最初から望むも…

燈子
3年前
4

恨んで羨んで焦がれている

 わかれて、違って、終わってゆく。全部が嘘で、全部が本当だ。羨んでいたあの子も、きっと誰…

燈子
4年前
1

余ったイチですらない

 足元ばかり見て歩いていた。そのうちにあまりにも美しくない後ろ姿に辟易して、今度は遠くを…

燈子
4年前
2

ミサゴの仔

 腕を広げた。そのままくるっと一回転。これが僕の世界。上を見上げて、それから後ろに続く獣…

燈子
4年前

誰かの特別でありたいと祈った

 部屋の隅に積み上がった箱を潰し、紐で縛った。もう着ないであろう服や靴をビニール袋に詰め…

燈子
4年前
5

だってもう、誰も守ってくれない。

 ぎざぎざになった爪先に、赤いマニキュアを塗った。安っぽい赤が、ぬめぬめと光って、終わっ…

燈子
4年前
1

奪われるだけが人生だと

 救いも祈りもない。飲み込んだ言葉は吐き出せない。黒い塊になって、ずっとずっと胃の底に沈んでいる。期待されるのは、押し潰されるほどに辛く、何も望まれないのは、諦めのようで虚しい。そういう子どもじみた我儘に辟易している。じっとりと重たい空気に汗が垂れてきて、息を吐きながら拭えば、袖口が黒く汚れた。この行動も、そういう最早期待されていない物事の成れの果てなんだろう。仄かな湿気の香りと雲の様相に、雨が降らないうちにと、スコップにもう一度力を入れる。穴を掘り進める自分を、懐中電灯の光

きっとその代わり、別の誰かが救われてゆく

 「大丈夫だよ。毎日楽しいよ。私に何を言わせたいの?」最後に言われた言葉がぐるぐると頭を…

燈子
4年前
1

でも、許してもらわなければ入れない

 欲しいものは、称賛ではなく承認。止まない雨はないなんて莫迦みたいな言説ではなくて、大丈…

燈子
4年前
2

ある秋の穏やかな日

 明日に変わってゆくことが、堪らなく恐ろしい。だから朝を拒絶して、いつまでも今日が終わら…

燈子
4年前
3

どこかのメルヘン

 嘘を吐き続ければいつしか本当になると思っていた。空から星は降ってくるし、月も後ろをつい…

燈子
4年前
3

話す鏡の魔法

 鏡の向こうで泣いている自分が、哀れで惨めだった。声を潜め、背中を丸めて、誰かに気づいて…

燈子
4年前

犠牲と安眠

 もういいや。放り投げた言葉と一緒に、弧を描いて地面に落ちた。もう要らないと放ったそれは…

燈子
4年前
1

彼女の祈りに応えない、美しくならないことを望んだ

 ぞくりとするような、劣情を誘うような――それはまるで刷り込みのようだと思った。指先で花びらを擦ると、ぶわりと匂いが濃くなって、自らを美しいと疑わないように咲いていた芍薬の白は、途端に変色した。興味を失って足元に放っても、まだ指先に濃い匂いが残っているようで、それがどうにも耐えきれず、人の家の庭先で、小さく吐いた。 //  咲いた花が美しければ美しいほど、頭から手折ってやらなければならないような気持ちになる。もはやそれは強迫めいていて、物心ついたときにはすでに、その思いで