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短いおはなしのまとめ

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自分で書いた、短編と呼べないくらい短いお話をまとめています。ほとんど続いていませんが、たまに設定が同じ時があります。
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2020年5月の記事一覧

余ったイチですらない

 足元ばかり見て歩いていた。そのうちにあまりにも美しくない後ろ姿に辟易して、今度は遠くを…

燈子
4年前
2

ミサゴの仔

 腕を広げた。そのままくるっと一回転。これが僕の世界。上を見上げて、それから後ろに続く獣…

燈子
4年前

誰かの特別でありたいと祈った

 部屋の隅に積み上がった箱を潰し、紐で縛った。もう着ないであろう服や靴をビニール袋に詰め…

燈子
4年前
5

だってもう、誰も守ってくれない。

 ぎざぎざになった爪先に、赤いマニキュアを塗った。安っぽい赤が、ぬめぬめと光って、終わっ…

燈子
4年前
1

奪われるだけが人生だと

 救いも祈りもない。飲み込んだ言葉は吐き出せない。黒い塊になって、ずっとずっと胃の底に沈…

燈子
4年前
1

きっとその代わり、別の誰かが救われてゆく

 「大丈夫だよ。毎日楽しいよ。私に何を言わせたいの?」最後に言われた言葉がぐるぐると頭を…

燈子
4年前
1

でも、許してもらわなければ入れない

 欲しいものは、称賛ではなく承認。止まない雨はないなんて莫迦みたいな言説ではなくて、大丈夫だよと抱き締める腕。皆で頑張ればどうにかなるという根性論染みた激励なんて要らなくて、何の根拠もない盲目的な安堵だけを望んでいる。思い通りにいかないと嘆くより、自分自身でハンドリングできていると思える愚かさの方が、よほど健全で幸福だ。毒にも薬にもならないような思考を巡らせながら、煙を灰に入れてゆく。このどうしようもない時間が好きだった。生産から逆行してゆく行為だけが、自分で自分を許せる儀式

ある秋の穏やかな日

 明日に変わってゆくことが、堪らなく恐ろしい。だから朝を拒絶して、いつまでも今日が終わら…

燈子
4年前
3

どこかのメルヘン

 嘘を吐き続ければいつしか本当になると思っていた。空から星は降ってくるし、月も後ろをつい…

燈子
4年前
3

話す鏡の魔法

 鏡の向こうで泣いている自分が、哀れで惨めだった。声を潜め、背中を丸めて、誰かに気づいて…

燈子
4年前

犠牲と安眠

 もういいや。放り投げた言葉と一緒に、弧を描いて地面に落ちた。もう要らないと放ったそれは…

燈子
4年前
1

彼女の祈りに応えない、美しくならないことを望んだ

 ぞくりとするような、劣情を誘うような――それはまるで刷り込みのようだと思った。指先で花…

燈子
4年前
2

春夏秋冬

突き刺さるみたいな視線をいつも感じていた。それは何だか捕食せんとする視線のようで、居…

燈子
4年前
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