【短編】COLOR HUNTER

綺麗な色、これいいな。

歩いていた先にあった花びらの写真をスマホで撮る。
ピンクと赤の絶妙なグラデーション。
これはリップの色にしよう。

スマホで自分を映し出して、さっきの写真を唇に当てる。

うんいい感じ。

今日一日これで過ごそう。

自分が好きな色を読み取って、現実世界の顔に色味をつけれるアプリが出来たので、それで様々な色をつけることが出来る。

私の仕事は様々な色を採集して、それを装着して、それをSNSなどで発表することだ。
装着が出来るのは、1日だけ。
基本、メイクと同じだ。

画像も24時間経てば、消えてしまう。
なので、ずっと同じメイクは出来ない。
既存のメイクと同じなのである。
1日だけの限定メイクだ。

このアプリを初めてから、様々な色が目に付くようになった。

こないだは、鯖が食べたくなって、鯖を見ていたらこれをアイシャドウとして使いたいなと思って、鯖の青い部分を写真に収めた。
瞼を閉じて、まずは右目に。目を開く。
うんいい感じ。

次は左目用に写真をまた撮って、瞼を閉じる。
両目同じ画像ではなくて、違う画像だからこそ味がある。

独特の模様も上手く馴染んでる。

鯖はその後、焼いて美味しく食べた。SNSに投稿したら、喜ばれた。

鯖ブルーと命名しよう。

次はブリでしてみようかな。
ブリイエローと称して。
ブリの目元のイエローのアイラインが好みなのだ。

紅茶を飲んでいて、段々と色づいていく様も綺麗で、その写真も撮った。これはチークにしよう。
すこし、茶色で健康的にしたいから。

色の名称や、メイク用品の色って実際に載せると色が違うし、手先の器用さが求められる。

もちろんこのアプリにも器用さが求められることもあるけれど、私には合っている。

既存のメイクとは違うから、これはメイクじゃないなど非難を浴びることもある。
色んな楽しみ方があって、いいじゃないか。

私は塗り絵があまり得意じゃなかったけれど、写真のトリミングなどが得意だった。

この自然にある中のこのグラデーション、模様をそのまま使いたいと思うことがいっぱいあった。

ああ、世の中には色や模様が溢れている。
今日はどこに注目しよう。