歳池若夫(としいけわかお)

のんびり陽気な、リタイア人。脳天と感性は、昭和人。肉体と精神は、へいせい人。サイフの中…

歳池若夫(としいけわかお)

のんびり陽気な、リタイア人。脳天と感性は、昭和人。肉体と精神は、へいせい人。サイフの中身は、れいわ人の凡ジョルノーおじさんです。

最近の記事

《野球短編探偵小説》  左翼外野席(レフトスタンド) カラス&マーロウの新冒険・1 歳池若夫・作

 感染症禍がようやく終息し、世の中がなんとか落ち着いた頃。  ポツポツと雨が落ちて来る五月の金曜日の夕刻——  都内某駅の西口改札を出た所は、今、人・人・人で大混雑である。  男川正朗(おがわまさろう)はちょっと気取ったポーズで空を見上げ、傘をさそうかさすまいか思案していた。  初夏の季節だというのに、無理して着込んだトレンチコートの襟を立て、あみだに被ったソフト帽の下で苦虫を噛み潰した顔をしている。  ……と、いきなり背中をどつかれた。 「よっ! 自虐と自嘲の日々を邁進する

    • 疾風(シップ)伝説・3  ワレ、「特殊機雷」ヲ投下セリ…… としいけわかお・著

       さてさて、激動の昭和も最終コーナーを回ってスロットル全開になった時代、学校出て初めて勤めた漫画制作工房のカイシャには、とってもとってもキャラの濃い恐い上司がいた。齢は当時まだ33歳だったのに、既に取締役出版部長の肩書きが付いていて、小柄の割にやたら貫禄ある威風堂々風体のキレ者の人だった。(その時の俺には、まるで50過ぎの筋モンのオヤジに見えたもんだ)  右も左も判らない「洟たれションベン小僧」社員だった若き日の俺は、朝出社してから夜に家に帰るまで、勤務中は10分おきにこの

      • 《カー・ファンタジー小説》 ビーエムに乗って、ヤリに行く…… 尖がり大好き男のペンシル紀行     掌編小説シリーズ・4    歳池若夫・著

           金曜日の午後、デスクでルンルン仕事に励んでいると、部下の女子社員がお茶を淹れて持って来てくれた。 「あらぁ、局次長。なんかウキウキ楽しそうですけどぉ。明日からの三連休、どこかに行かれるんですかぁ?」  まん丸のふくよかな笑顔。ぱっちりした瞳。可愛いタラコ唇。穢れを知らないようなストレートの黒髪。はち切れんばかりの健康的な鳩胸……このコは本当にいい娘だ。  私は、躊躇いもなく答えてあげた。 「うん。オレねー、今夜さー、クルマに乗ってファイト一発! ヤリに行くんだよぉぉー

        • 疾風(シップ)伝説・2   会社にメールで「退職届」を出そうとしているキミ、ちょっと待った! その退職「届」は、退職「願」に書き直した方がいいのかも……   としいけわかお・著

          (この伝説・2には、いわゆる『昭和のY談』が含まれています。そういった話が苦手な人や抵抗を感じる人は、スルーしてください)  ――さてさて、「柿の木坂の家」のカイシャに入社して、社会人になって初めて与えられた俺の「仕事」といえば……  40年前に初めて出版業界の魔道世界に入って、ド新米のコミックスの販売営業マンだった俺が初めて上司から与えられた仕事は、その上司とお得意先の会社の偉い人を車で都内某所へご案内する役目であった。  ある日の朝、上司から何のレクチャーも無く社

        《野球短編探偵小説》  左翼外野席(レフトスタンド) カラス&マーロウの新冒険・1 歳池若夫・作

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          疾風(シップ)伝説・1   そこの五月病になりかけのキミ、ちょっとだけオジサンの昔話を読んでみないか……?   としいけわかお・著

           遠い遠い昔にあったお話――  まだ元号が昭和で西暦も1980年代になったばかりの時、大学の文学部国文科というあまり社会の役に立たない所を4年+落第2年掛かってやっとこさお情け卒業できた俺は、同期の仲間の殆どが進んだ小中学校国語教師への道から足を踏み外し、どこの民間企業にも就職できなくて、いわゆるフリーター、昔で言う「モラトリアル青年」の生活を続けていた。  そのうち金がなくなり、喰うに困ってニッチもさっちも行かなくなり、正規の就職先を探すかアルバイトに出るしかなくなった。

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          《トラベルミステリー小説》  京都発鳥取・倉吉行き、振り子式DC特急「スーパーはくと」殺人事件   ユーモア鉄道ミステリー。カラス&マーロウの新冒険シリーズ・2  歳池若夫・著

                        1  男は、リュックの奥から小さな容器を取り出した。  丸い蓋を開け、中から未使用の予備分の「凶器」を取り出す。  両手にはぶ厚い生地の手袋をはめている。それが無いと、少しでも手元が震えてしまったら最後、自分が作った威力絶大の「凶器」によって、製作者当人の命が奪われかねない。 「ゆーっくりでしゅ。目をおっきく見開いて、落ち着いて慎重にやんなくちゃ。そんで、そーっと針先を摘まんで、根元からプッチンプッチン切り落とさないといけないんでしゅ……」  お

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          《SF?ショートショート》  宇宙最強新兵器 N-APP(ナ・ダブルピー) 紙芝居風、空想科学小説   掌編小説シリーズ・3    歳池若夫・作

             やあやあ、ごめんごめん。遅れちゃって、ごめんね、皆な。  いやあ、自転車がパンクしちゃってね。修理すんのに手間取っちまったんだ。うん、それでも皆な待っててくれたんだなあ。うん、おじさん嬉しいよ。うんうん。  さあて、それじゃ、お待たせです。今日持って来た最新のお話を始めるよ。 ……おおっと。そうか。ごめんごめん。その前にまず、いつもの味噌せんべいね。味噌せんべい。三枚で150円と。やっぱり、これが一番美味いでしょ。  はい、そこのボク、お釣り50円ね。    えっと、

          《SF?ショートショート》  宇宙最強新兵器 N-APP(ナ・ダブルピー) 紙芝居風、空想科学小説   掌編小説シリーズ・3    歳池若夫・作

          《大相撲力士・ハチャメチャ小説》 It's only GOD chanced death ~たかが、ごっちゃんデス!~    近未来国技館土俵、悪漢ノワール  掌編小説シリーズ・2  歳池若夫・作

           目の前に、つんつるてん頭から湯気を立ち昇らせてる下膨れ饅頭顔のオヤジがいる。  俺はマゲをちょこんと揺すって、「ウス。すいませんっス。今後はじゅうぶん気ぃ付けるんでー」ボソボソ言ってやった。  とたんに、後から我が師匠の強烈な膝折りの蹴たぐりが飛んで来た。 「てっ!」 「馬鹿野郎。声が小せぇんだよッ! 真面目に頭下げんかい。理事長様閣下にきちんと謝れ。土下座だッ。お前、手と足と頭を床に擦りつけて心からお詫びしろッ!!」  親方の怒りは収まらない。俺の頭と背中をもろ手でぐいぐ

          《大相撲力士・ハチャメチャ小説》 It's only GOD chanced death ~たかが、ごっちゃんデス!~    近未来国技館土俵、悪漢ノワール  掌編小説シリーズ・2  歳池若夫・作

          《掌編小説》 Snow boots Angels    ちょっぴり甘塩辛い? 北の港町のオトナのメルヘン……  トラベルファンタジー・シリーズ・1 歳池若夫・作

             複雑に交錯する幾つものポイントを渡り、ディーゼルエンジンの唸り声を抑えめにした臨時急行「すずらん」は、線路の先がすぐ海の岸壁というドン詰まり終着駅の緩くカーブしたホームに滑り込んで行った。  俺は立ちあがり、網棚から商売道具の書籍注文一覧表と旅仕度をめいっぱい詰め込んだバッグを降ろし、肩ベルトを襷掛けに胸に回した。  政令指定市である大都会札幌から衛星都市圏である恵庭、千歳を巡り、苫小牧、室蘭という大きな街の本屋を一軒一軒回って、年季の入った急行列車の堅いボックス席に

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