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イベントからまず始めたいならコレ!『ファンをはぐくみ事業を成長させる 「コミュニティ」づくりの教科書 』を読んで

地図を肴に酒を呑めるイベント「地図ナイト」でウィキペディアの地図版「オープンストリートマップ(OSM)」の存在を知り、誰もが伊能忠敬になれる時代の到来を感じ、また地図の空白を埋めていく人を「マッパー」と呼ぶセンスに脱帽した。

まるでタモリ倶楽部の公開収録のようにイベントを楽しめる東京カルチャーカルチャーは応援しているのだけど、

本書はそのカルカル(通称)で年間200本以上のイベントを回していた河原あず氏と、イベントプラットフォームでおなじみPeatixの藤田祐司氏による共著。

本書は予想どおり「イベント」を主軸とした切り口で、コミュニティ運用の細かなノウハウがつまっています。

持続的な目線は持ちつつも、まずは単発で顧客の声を聴きたい・直接接したいような事業者の手始めとして有効な一冊かと思います。

会社の端くれとしてつい先日もZoomを使った顧客イベントを実施しましたが、実務者として読んで大事だと感じた3つの項目についてメモしておきます。

ビジョン・ファースト

あまりにも多義的でそれぞれ思い浮かべるイメージにも差が出る「コミュニティ」というワード。まずは言葉そのものをチーム内で定義しておくのが大事。

たとえばサイボウズの青野さんにとってコンセプトとは「誰」に「何」と言わせたいか

直訳すると「概念、観念、発想、意図、テーマ」なわけで、ありたいに言えば使い方次第。その会社・その人・その場において「こういう意味で使う」っていう取り決めが浸透していればそれでいい。

そのうえで、本書はビジョン(上位にくる目的)を頭に置くことを訴えています。

*コミュニティづくりにおいて、最初につくるビジョンは大切な意味を持ちます。

*コミュニティ運営者は常に「何のためにやっているのか」という方向性を見失わないようにしてください。

「器」という手段の目的化

イベントをサステイナブルなもの(たとえば登録制の会員組織)にするために、手段としてFacebookのグループ機能を使うようなケースが考えられます。

20年前にあったような登録制&BBS掲示板カキコ的な囲ってなんぼの手法は残念ながらカタチから入っている典型例。「場」だけ用意して「さあ、交流してください」と言ってもユーザーは困ってしまう。

著者は「SNSグループを始めるには、ある程度の覚悟が必要となる」と述べています。

それなりの手間と時間を取られることになりますし、情報がなかなか更新されないグループは、コミュニティ参加者も離れていきます。結果的に、コミュニティを運営する企業のブランドにとってマイナスになることもあるのです。

イベントに連続性をもたせるためにイメージで輪郭のある会員組織、グループ機能に安易に手を出すと、場合によってはブランドを毀損するおそれさえある。こんな本末転倒は避けたい。

やはり立ち返るのは上位目的=ビジョンと、そのものが示す言葉の意味の範囲を確認し合うことが必要と感じます。そしてKPIをどう測っていくか。

KPIはポートフォリオ型で組み合わせる

成果を測るには定量(数字)が必要でアカウンタブル(説明可能)なものに寄っていくと売上貢献、参加人数だとか、そういった「わかりやすい」数字が並びます。

著者の言葉で表すとそれは営業KPI。もちろん大事な指標ですが、そもそもKPIとは「PDCAを回す(ブラッシュアップ、改善)にあたって判断するための基準」という意味も持つはずです。

著者はKPIは下記の5つを組み合わせるべきと主張します。

①ブランディングKPI
*メディア掲載数
*SNSの反応数
*ブランドへのリーチ数

②エンゲージメントKPI
*参加者の支持率
*参加者のアクティブ率

③インフルエンサーKPI
*インフルエンサー、仲間の数

④社内・社外コラボーレーションKPI
*コラボレーション実績

⑤営業KPI
*開催数、動員数はKPIにしちゃダメ

まずは①〜④。営業KPIは段階的に設定していこう。そして社内の仲間づくりの大切さを説いていますが、これは『ファンベース』的(参考文献にも掲載)で、共感できます。

巻末のTips、参考文献までふくめて丁寧ですし、コロナ禍の状況に鑑みてオンラインが増えたまさに「いま」書かれている本。オンラインツールを使ったイベントのノウハウも語られていますし、タイムリーな一冊です。

というわけで以上です!



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