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老化は治療できるという衝撃!『LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界』

タモリさんは27時間テレビで総合司会を担当したとき、あえて食べ物を口に入れないで集中力を維持していたなんてお話がありますが、どうも理にかなっているようです。

本書の用語でいえばサバイバル回路を働かせることを意味します。簡単にいうと、戦闘モード。遺伝子は生き延びるために力を発揮するので、空腹時に集中力がアップする。

で、このときに老化を止める肝と呼ばれるサーチュインという酵素の働きが活発になります。身体のなかのこのレスキュー隊たちを出動させることで病気や衰えを防ぐ役割を果たす。

どうやら身体に適度なストレスをかけてあげるといい。本書で紹介されているのをざっくりご紹介すると以下の3つ。

・あまり食べない
・適度に運動する
・寒さにさらす、それかサウナ

あとはタバコがよろしくないだとか動物性タンパク質もよくないだとか、寒さほどでないけれどサウナがよいだとか、ここでは置いておきます。

食事をあまりとらない実践でいえば、ご本人の見た目の若さで話題となった南雲吉則氏の『「空腹」が人を健康にする』や生き方・姿勢とセットで説いた貝原益軒先生の『養生訓』に通じます。

「さっそくご飯は少なめに!」と実践したくなりますし、ハウトゥ本にあるよな要素をサービスでふれながらも、本書はまっとう(失礼ですが)な本。

著者は、老化研究の第一人者であるデビッド・A・シンクレア氏。

本書の大事なポイントは二つあるとみています。

①老化のプロセスを明らかにする

以下が老化の情報理論です。

若さ→DNAの損傷→ゲノムの不安定化→DNAの巻きつきと遺伝子調節(つまりエピゲノム)の混乱→細胞のアイデンティティの喪失→細胞の老化→病気→死

このプロセスが理解できれば、一つでも働きかけができれば、老化を食い止めることができるのかもしれない。

②老化は病気であり、治療できる

年は重ねるもので、老化は自然現象と誰もが信じています。老化を前提に保険会社も病院も年金も人口統計も設計されているはず。

老化によって人の死は逃れることができず、人生は儚く有限である。この前提をもとに文学や芸術も発展してきたわけで、まだ臨床段階とはいえ衝撃的な内容でした。

倫理と人口論

人類の平均寿命は延びているけれど、最大寿命でいえばそこまで変化していない。110歳以上、生きる人もなかにはいるけれど、150歳だとまあないわけです。

また、寿命といってもスパゲッティ状態の延命ではなく、健康寿命を大切にしたい。

そのためにがん治療や心臓病などさまざまな病気を局所的に治療すべく、国の予算を投下して日々研究に勤しんでいる。

しかし一つ病が治っても免疫が弱くなってまた別の病を発症してしまう。まさにモグラ叩きのような状態が続いている。

つまり、根本の解決にはいたってない。

そこで老化を病気として捉えよう。まだ臨床段階だけれど、著者の父親にはメトホルミンやNMNの投与によって若返りの効果が確認できているといいます。

マウスへの実験や研究のプロセスはぜひ本書をお読みください。ちなみにNMNならサプリで購入も可能。

ではこの先、若返りが薬の投与か何かしらのかたちで本当に実現したら世界はどうなる?

著者は早いうちから倫理的な問題に手を付けようと提唱します。また『人新世の「資本論」』的な気候問題、人口論への投げかけをふくめて、後半ブロックでそこそこのページを割いています。

スティーブン・ピンカーの『21世紀の啓蒙』を引用しながら楽観的にとらえてはいます。『ファクトフルネス』や『繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史』のような、過去→現在の改善や工夫の跡をマクロ的にたどる。

たしかに、イキイキと人間性をもってよく長く生きられる時代は傍から見れば、世界はよくなっているとしか言いようがない。

でもたとえば、瀧本哲史さんは「パラダイムシフトは世代交代で起きるもの」と指摘するように、老化があるから人から人に受け継いできた「バトン」の考えも一変する。

世界はこれからどうなるのでしょうか。老化が治療できるようになる世の中は遠くないのかもしれません。

というわけで以上です!


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