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『異質なモノをかけ合わせ、新たなビジネスを生み出す 編集思考』(佐々木紀彦)を読んで

『異質なモノをかけ合わせ、新たなビジネスを生み出す 編集思考』を読みました。

未知の発見と既知の整理。自分にとって、これらのバランスが取れているとスイスイ読めることが多い。

結論、ドンピシャな本でした。

おそらくまた読み返すと思います。読書会があればいってみたいなあ。1度目の読書で、マーカー引いたところだけをまずクリップします。

編集とはなにか

「「編集」とは、私なりに整理すれば、「セレクト(選ぶ)」「コネクト(つなげる)」「プロモート(届ける)」「エンゲージ(深める)」の4つのステップによって、ヒト・モノ・コトの価値を高める行為です。」
「編集者は英語でeditor。その語源はex(外に)+dare(与える)をつなげたラテン語「edere(生み出す)」にあります。つまりは、「外に出す」「生み出す」という意味です。編集とは、ヒトやモノやコトのいいところを「外に出」して、何かとつなげて、新しい価値を「生み出す」手法なのです。」

編集とは書籍に限定されるものではなく、ものづくりの手法であり、方法である。教えてくれたのは松岡正剛であり、東京ピストルの草薙さんであり、編集者の菅付さん。他にもたくさんいます。

佐々木さんの定義はもっともと思いつつ、自分なりの編集の位置付けはこんなかんじです。

①目を付ける/②切り取る/③落とし込む=創作。これら①〜③は編集と呼ぶことができる。つまり創作は、編集の1つのプロセスであり、要素。

ちなみに松永光弘さんは『「アタマのやわらかさ」の原理。』のなかでこういう定義をしています。

編集とは、組み合わせによって価値やメッセ ージを引き出すこと

佐々木さんはとくに「コネクト」を重要視している、そんな印象です。

惚れ抜く力

「他の人にはまだ見えていない価値を発掘するためのコツ。それが、セレクトの1つ目の法則「いいところだけを見て、惚れ抜く」です。10点満点ですべてが7点のヒトやモノやコトより、たとえ欠点があってもどこかが飛び抜けた素材を選んでください。他の人が気づいていない、本人すらも気づいていない「未開拓のいいところ」に気づけるとより価値は高まります。」

「セレクト(選ぶ)」「コネクト(つなげる)」「プロモート(届ける)」「エンゲージ(深める)」のうち、セレクトの肝要は“惚れ抜く”こと。

惚れるではなくて、“惚れ抜く”というのがいいなあ。好き嫌いの軸を持ち、好きになったら、とことんのめり込むこと。こうアドバイスがあります。

もしも向き不向きがあるとすれば、人に興味を持てるか・おもしろがれるか。ものづくりも編集も、起点であり基点は「人」ではないか、というのが自分のスタンス。惚れ抜くことは一種の才能であるとも思います。

さよなら、おっさん。

「1967年に刊行された日本文化論の名著『タテ社会の人間関係』の中で、中根千枝は日本型組織の特徴をこう記しています。 「ウチ、ヨソの意識が強く、この感覚が先鋭化してくると、まるでウチの者以外は人間ではなくなってしまうと思われるほどの極端な人間関係のコントラストが、同じ社会にみられるようになる

日本人は生まれてから死ぬまでタテ割り社会に組み込まれやすいというお話。あちゃーと思い当たる節があり、クリップ。

News picksが言うところのおっさん的なセクショナリズムの温床がウチ、ソトの意識をつくり出す。現象の手前にある構造にメスを入れなければ、問題の改善はなかなかむずかしいでしょう。

糸井さんが組織のピラミッド構造を横に倒して船に見立てたように、組織をどのようにすべきかというテーマは、とっても大切。フラット、シェア。インターネット的であろう。

ハッとさせられた世代話

「若いときはカウンターカルチャーの側にいてカッコよかった人を、ある年代を境にぱったり見かけなくなったりしませんか。若者として「生意気」が価値になるのはせいぜい40歳までです(今年40歳になった私も、胆に銘じています)。その年齢を超えても、権力や権威に逆らってばかりいては、逆にみすぼらしくなってしまうのです」

たとえば「フラットであり続けたい」と思っていても、年齢には抗えない。人の外面・内面で、なんだかんだ年は滲み出てくるもの。

そしてその“フラット”は、おっさん的なものに対するカウンターであり、相対的な価値であり、なかば自覚的(のはず)である。ここを認めなければならないと思います。

生意気が価値になるのは40歳までというのは、佐々木さんがおっしゃる点において、説得力がめちゃあるなあ。

古典の価値

「古典を読むことには、①本質をつかめる②大局観を磨ける③効率がよいという3つのメリットがあります。今日、日本では年間に約7万9000冊の新刊が発売されています。明らかに粗製乱造状態です。その点、古典は出版されてから現代に至るまで、長きにわたりその価値が評価されており、ハズレはほとんどありません。」

古典をわるくいう人はまずいない。その通りだと思っています。書評を入り口にすることもオススメしていますね。楠木建さんや鹿島茂さん。個人としては福原義春さんの書評が最近のスマッシュヒット。

福澤諭吉というスーパースター

「交詢社のコンセプトは「知識交換 世務諮詢」。つまりは、「各人が互いの知識を交換し合って、流動する社会の実務に対処する機会を提供しよう」ということです。 この交詢社の人と知のネットワークから、新たな事業も誕生しました。(中略) 交詢社は単なるコミュニティではなく、新しい思想や人脈や事業を生み出す、インキュベーションのハブだったのです。」
「福澤は、慶應(大学)、交詢社(コミュニティ)、時事新報(メディア)というトライアングルを通じて、新しい日本の時代精神を創り出しました。卓越した編集思考で近代日本を生み出した、不世出のスーパープロデューサーなのです。」

なるほど、福澤諭吉ですか。

本書を読んで、『文明論之概略』をすぐに買いました。現代語訳版が出ていてうれしい限りです。

交詢社というコミュニティから新規事業が生まれ、そのなかに保険があったというお話。まさにイギリスのコーヒーハウスそのものであります。福澤諭吉は西洋の動きをとらえ、価値のあるものはどんどん取り入れていったのでしょう。

聞くところによると交詢社はいまも機能しているそうですね。とあるエレベーターには秘密のボタンがあって...と、まあクローズドなお話でございます。

余談ですがコミュニティでいえば、佐渡島さんの本を読み返したいし(あの図は九鬼周造の『いきの構造』を彷彿させます)、あと佐渡島さんオススメのアリストテレス『詩学』が“普遍性”の文脈で紹介されていた。こちらも読み返そう。そういえば三省堂の『物語大事典』も気になるなあ。

最後に

強い日本・豊かな日本・そして第3の日本へ。2020年代は「楽しい日本」にしよう。

堺屋太一さんの言葉を引用しながら、佐々木さんはこう言います。まずはタテ割りをぶっ壊すところから。

人口減による悲観論もあるけれど、楽しい日本というのは、けっして夢物語ではないと思います。日本をおもしろくしたいし、佐々木さんと同じく、ソーシャルゲームではないところで文化を育みたい。

文化の集積がある日本を知るからこそ、そのポテンシャルを感じるし、その文化を途絶えさせたくないんです。

どうせならおもしろがって、楽しい日本にできるといいですなあ。

本書には著者・佐々木さんの大局観と具体性がつめこんであり、事例も豊富でとってもオススメな本です!

というわけで以上です!


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