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『苦しかったときの話をしようか』(森岡毅)から学ぶ、資本主義の本質

この本は「プロのマーケターが就職活動を始める自身の子のためにしたためた虎の巻」。

で、そのマーケターはUSJのV字回復でおなじみの森岡毅さん。おもしろくないわけがありません。

マーケティングとは何か。戦略とは何か。こういうテーマの入門書をいくつか過去に読んでみましたが、森岡さんの本がいちばんわかりやすい。そんな実感があります。

で、本書はキャリア論とか自己啓発にカテゴライズされるかもしれません。繰り返しますが、就活を始める娘さんのための秘伝の書。生きる術がつまっています。

構成をざっくりいうと、世の中の構造・仕組みを解説する前半ブロック。そしてご自身の経験やマーケティングの手法を駆使した「My Brand」の設計など、キャリアにふれる後半ブロック。

とにかく読んで損はありません。

もちろんキャリア論の部分も興味深く読みました。ただ、なかでも印象に残ったのは、資本主義の仕組みの説明部分です。

自分の子供に向けてわかやすく、そして本質を伝えようとしているのがよくわかる。

そういえば「父が娘に語る経済の話」という切り口の本がありますが、ねらいは近いのでしょうか(こちらは読んでいませんが)。ではクリップします。

現象に囚われてはいけない

どんな物事にも必ず本質がある。その本質によって構造が決まり、その構造に従って複雑にさまざまな現象が生まれてくる。「本質→構造→現象」の順に上位が下位を拘束している。

本質を理解することができれば、その物事が今後どのような変遷を辿るかさえも、ある程度は予測することができるだろう。もし分析力を武器にしたいのであれば、現象に囚われず構造を診る力、それらの構造から本質を見抜く力を養わねばならない。

仮にある現象に不満を持ち、その状況を変えたいとする。それならば、表面だけではなくその奥にある構造、そして本質を見抜く必要がある。

で、これを資本主義に当てはめてみると、どうなるか。

資本主義の本質は「欲」

資本主義の本質とは何か? 私は、資本主義の本質は人間の「欲」だと考えている。人間の欲はさまざまにあるが、たとえば、最も基本的な「より便利で、より快適な暮らしがしたい」という欲のベクトルは、人類の歴史の中で決して逆行したことがない。

馬から自動車へ、固定電話から携帯電話へ。アマゾンに代表されるEC革命や、AIによる自動運転も。これまでもずっと、これからもずっと、人々はもっと便利でもっと快適なモノとサービスを求め続けるだろう。

資本主義の構造は「競争」

資本主義は、人間の「欲」をエネルギー源にして、人々を競争させることで社会を発展させる構造を持つ。

欲を人質にして人々を競争させることで、人々に怠惰や停滞を許さず、生き残るために常に進歩と努力を強いていく構造になっている。「欲」をエネルギーにすることでより多くの「欲」を満たすループ構造になっているのだ。

資本主義は「欲」を本質とし、「競争」が主な構造である!シンプルで、スッと頭に入ってきました。

資本主義とは?という問いには古典が有効だと思うけれど、成り立ちとか定着した歴史の話でどうしても出てくるので疲れがち。

マックス・ウェーバーの『プロ倫』にある「キリスト教徒の合理的な禁欲が資本主義の企業の形態にマッチした」みたいな話だとか。

まさに本質が大事だなあ。この後、森岡さんはキャリアと結びつけて資本家についても「持たない人が、持てるようになるには?」という話でふれています。

資本主義社会とは、サラリーマンを働かせて、資本家が儲ける構造のことだと言える。
資本主義とは 、無知であることと 、愚かであることに 、罰金を科す社会のことである 。

もちろん、サラリーマンよりも資本家がいいよっていうわけではなく、そういう世界があるという前提を理解したうえで、将来を考えましょうね。そういうお話です。

自分がどんな目的で、どんなことを成し遂げたいのか。まずはそこ。

「学生時代に読んでおけばよかったなあ」素直にそう思いましたし、いつ読んでも気付きはあると思います。

森岡毅さんにご興味がある方はこちらも目を通しましょう。

というわけで以上です!

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