貸し借りが人間の本質?『会計が動かす世界の歴史 なぜ「文字」より先に「簿記」が生まれたのか』(ルートポート)
会計が文化の中に組み込まれていた社会は繁栄する。『帳簿の世界史』を読んでその手の本のおもしろさに気づきまして、おさらいもかねて本書を手に取りました。
著者の肩書は会計史研究家でありブロガー。本書の内容は経済メディアの連載をまとめたものらしい。
本筋はもちろん合間に挿入されるコラムから後半の未来パートまで、初学者に楽しんで読んでもらう目配りが行き届いている一冊。
メインディッシュは中世から現代まで「会計」がいかに世界を動かしてきたか。
大航海時代に突入した世界、スペイン帝国の栄枯盛衰、オランダの株式会社、ジョン・ローが看破した貨幣の本質、フランス革命の引き金となったネッケルの『国王への会計報告』。
このあたりのポイントをちゃんとおさえつつ、なかでも惹かれたのはもっと以前のお話。副題にもなっている、なぜ「文字」よりも先に「簿記」が生まれたのかパートです。
人類の進化の理由
簿記の最初は、紀元前4000年前のメソポタミア文明まで遡る。粘土板に駒を刻んでいったトークン(記号ですね)は「数の把握」に使われていた。
それはつまり、お金よりも先に文字があり、文字よりも先に簿記があった。
こっからさらに「そもそも」に入ります。それは人の脳はなぜここまで進化したのか?という問い。
著者はマキャベリ的知性仮説を引き合いに出し、群れの仲間と上手くやっていくために進化したと主張します。
お金以前の時代も含めて、身近な仲間との「貸し」や「借り」を理解して記憶するために、高度な知能が必要になったのだ!
だからこそ「数の把握」を粘土板に記録し、やがてそういった記号は文字となり、知識を後世に伝えられるようになっていった。
「貸し」と「借り」
1970年、アイルランドでは銀行のストライキで一切の業務が止まってしまった。しかし人々は「貸し」と「借り」を小切手で把握し、じつは滞りなく経済が回ったという話があります。
地域特性によるところも大きいでしょうが、群れの仲間とうまくやる重要な手段の示唆といえないか。
「貸し」と「借り」を成立させるのは信用です。まさにお金の本質とは、金銀でもなく譲渡可能な信用。
人間たらしめるのは「貸し借りを把握する能力」説。
一つの説としておもしろいと思いませんか?ぜひ詳しくは本書で。
というわけで以上です!
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