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『帳簿の世界史』(ジェイコブ・ソール)を読んで

『帳簿の世界史』を読みました。

おもしろく読みまして、ざっくり3つにまとめます。

会計が文化の中に組み込まれていた社会は繁栄する

ルネサンス期のイタリアやスペイン、フランス、イギリス、アメリカなど会計によって発展・成果を上げています。

とくにフランスでは、財務長官のネッケルが国家の財政会計を暴露し、それがフランス革命とつながっていった。

会計が世界を変えていた。ここはとくにおもしろく読みました。貴族政治を引きずり落とす根拠は、会計だったんですね。

徹底した帳簿の力は、何代も続かない

ルネサンス期以降については、個人の会計に依存するところがありました。イタリアのダティーニ、コジモ・デ・メディチなどはまさにそう。

帳簿の力で栄華を誇っても、仕組み化できないから後に続かない。後継ぎの人間は、どこか会計に無頓着となり、何かしらで失敗してしまう。歴史はその繰り返しとなっています。

現代のテクノロジーの発達は、会計の仕事を一段と困難なものとした

仕組み化しようとも、現代はテクノロジーの発達によって、専門性が高くなりすぎて日常生活や政治からも離れてしまった。

19世期のディケンズのように、金融や会計の世界を生き生きと描き出そうとも、時代に追いつくのがむずかしい。

著者は言います。たとえばゴールドマン・サックスを真剣に監査するとしたら、会計士が何人必要だろうか。そもそも監査などできはしない、と。

変化し続け威力を増し続けるウィルスのような金融ツールやトリックにはるか遅れをとっている。

さらに著者は、経済破綻は世界の金融システムに埋め込まれいるのでは?と問題提起をして終えます。

おぞましい「清算」がやってこないように、会計を社会や文化の一部とみなし、文化的な高い意識と意志を取り戻すしかない、と。

会計・監査ひいては帳簿の力を歴史を通じて眺めると、たしかな説得力を感じました。ときには会計によるクールダウンが必要だなあ。

というわけで以上です!

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