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『リベラル』と労働運動の決闘

 小作農がGHQの解放路線において、自作農になった時社会主義運動の中核だった農民たちは急速に保守化しました。これはフランス革命やロシア革命でも見られた現象で一定の解放に成功した階級はそれ以上の革命の進展を望まないものです。自分の耕作地を得た農民がこれ以上の革命の進展すなわち階級の消滅なんか望むはずがありません。日本では結果として日本共産党や日本社会党の支持派農民は激減し、都市型政党と化した革新勢力が誕生するわけですが、それはまた別の話です。
 日本に限らず世界中で革新勢力の原動力は労働組合で、革新政党が政権の座に就く時は労働組合は彼らの大票田となりました。都市部の労働者も元は郡部の農村漁村の出身者。そうした血縁関係も過疎地帯でも革新勢力の力が残存した理由でした。そうした戦後労働組合も世代交代し、都市部の労働者の子供も労働者階級になる。農村漁村の関係が断絶し、都市部の民意がどの勢力も重要視される時取り残された人々は急進的になりました。また革新勢力も政権の座についたら、都市の権威層の言う事も重要になり、衰退した産業で働く労働者の事は置き去りになり、彼らも急進的になっていきます。自分たちの稼いだ金をエリートが全て持っていく。それは実にレーニンやヒトラーが巧みに利用した権力奪取の方法でしたが、現在のマリーヌ・ルペンもプーチンもそれを少しだけ応用していわゆる岩盤支持層を築いています。金正恩も。
 労働者階級は革新勢力が政権に就き、その政策のいく末について様々な議論がありました。結果として、一連の労働運動史の中で政党支持という基盤は常に揺らいでいます。日本革新勢力として鈴木茂三郎の社会主義研究会の再興は必要かと思います。いざとなれば右派と妥協する中道派を絶対に許容してはなりません。

労働組合の本音

 労働組合は移民労働は反対派の急先鋒です。日本の技能実習生制度の原型は西ドイツのゲストワーカー制度にあり、厳しい移民労働制度は労働組合の厳しい反発を経て生まれたものです。これは闇雲な差別意識もあったのかもしれませんが、国内労働者の保護という観点が重要でした。労働組合はリベラル派ではなく、労働者のための団体であり数ある政策のうちどれだけ自由主義でもそれが労働組合主義を大きく損なうものなら反対するものです。それともう一つの本音は外国人労働者の組織化は現在の組合員を納得させるには、最重要事項ではないという労働者組織として残酷な事実もあります。労使との合意というより個別の労働運動が重要であり、移民労働運動の中心はより個人的でローカルな運動体でなければ成立しないという大きな問題点があります。
 これはある意味労働運動のタブーのような事を言いますが、技能実習生の組織化を奨励するナショナルセンターは連合も全労連も独立労組も宣伝的に使用する事はあっても、それが主軸にはなり得ないです。日本の雇用制度と技能実習生制度の労働契約の違いは全員が思っている以上に大きく存在し、必然的にそうした人もまとめて組織化するのならオルグに相当の力量が必要です。連合にはそういったオルグはほとんど存在しません。だから労働組合の主軸を外しながら、包括する意味で個別の労働相談を解決するために、きめ細かい知識も網羅できる専門家が必要です。労働者の団結は純粋培養のイデオロギーだけではなく、当然技術は問われるものです。
 外国人労働者の組織化は産別でも多くの議論がされ、それははっきりいって消極的なものでしたが、現実は思う以上に素早く技能実習生制度をどうやれば日本の労働運動に近づけるのか?制度自体を根本から変えるべきでは?という議論がここ最近始まり、現在も定まっているとは言えないです。鑑みれば、移民労働はそもそも日本に限らず大半の労働組合の政策ではなく、元は経済界の要請を聞いただけの話でした。移民受け入れ=左傾化という何を基準にしているのかわからないイデオロギストはともかく大半の政権は人件費が国内労働法に縛られにくい、あけすけに言えば保護されにくい移民労働者を欲していました。そういった歴史を考えると、資本主義社会の本質は徹底的に弱肉強食なのです。自らが弱肉の立場を理解している人ならまだしも、それらを理解できず強食できると思い込んでいる人はいずれ急進的になっていくと思います。ようこそアナキズムの世界へ。人を小馬鹿にする人は、いざ自分が現実に直面した時自らの行いを棚に上げて勝手に破滅思考になります。

急進化する若い世代

 若い世代といっても本当にごく一部ですが、その若さゆえの怖いもの知らずならではの意見をたまに聞くことがありますが、そのご意見はサラリーマンになるつもりなら、それこそ組合活動を通じて政治に目覚めたというエピソードでもない限り、使いまわすのは自分自身の出世にも響きます。単刀直入に言えば、会社組織はどんな職場であれ、日本も海外も階級がものをいい実力主義なんて嘘。もっと正直言えば新入社員が訴える実力主義は、仮にも存続している企業組織にとってお遊びみたいな空想と言われるのもオチです。私がざっくり言えば、そもそも新入社員に実力を求めていないので、ちゃんと教育係の意見を聞いてそれを落とし込んだ後、自分のやりやすいやり方を見つける方が社会との上手い付き合い方であり、ハナから自分の実力をアピールしても、仮に本当に実力があったとしてもそれを発揮できる環境を整えるのも自分なんです。こうした事は労働運動にも通じる事で自分達が働きやすい職場をつくるのも、まずは自分達が目的意識を持って職場の運動に取り組むのか重要です。人間とは思えないほど感情がない管理職は存在しますが、管理職は責任が重く私達の考え以上にしがらみがありそうした泣きどころを見抜けない人は労働運動どころか、そもそも労働に向いていません。孤高の哲学者の方がよほど天職です。
 組織で働く以上、組織の意向は無視できず情勢が変わるまでまずはキチンと組織の決定を重んじる事です。そうすれば組織のおかしさも、他人とのコミュニケーションも自然と取れるようになります。急進的な意見を持ってそれが主流派にするためには当然自分がまずは他人を尊重することから始まるんですよ。それができないなら、政治運動も社会運動どころか人間としてどこか修行を積む必要があります。SNSを始めてみれば、その奇怪さも同時に知ることができます。自由な意見、それは誹謗中傷と紙一重です。ブロック機能はそれを排除する便利な機能です。ただ排除する側がそもそも誰かを理不尽な攻撃をしていないか?耳が痛い意見もまた自分に対する忠告であり、ためになるかどうかは自分次第とも言えます。とは言えSNSの意見に左右されるぐらいなら、どこか遊びにいって誰も知らない風景を楽しみ、画面越しでは伝わらない事を体験しに行った方が人生勉強になるとも思います。何事もアソビを持つことが重要。車のブレーキも人生においても。

シャンパンとリムジンの中で

 実家も自分も大富豪だが主張はリベラルな人達を批判して「リムジン•リベラル」と言われたり、「シャンパン社会主義者」と言われることもあります。共助の社会になったら困り果てるのは大富豪のはずなのに、ええ格好しいなのかやたらと福祉に関して意見をいう人を右派はそう呼びます。個人的に自分は大富豪でリベラル思考の考えを持つ人は、出会った事がないし芸能人はよくそんな調子で批判されますが、欧米も日本も自分の力を過信した十二分に資本主義的な人ばかりだと思いますが、それが社会主義者に見えてしまうなら、その人も十分イデオロギーに縛られています。私の意見はもう何度も言う通り無党派とは一才言う気がないイデオロギーな人間ですが、そんな人間にすら浮世な思想は御伽噺を読んでいるようなくすぐったい気持ちにもなります。
 日本人は世界で好かれていないと思いますよ、ことさら嫌われているわけでもないです。その風土は素晴らしいと思う人もいれば、アジアの小国だと思う人もいます。日本のアニメは実に作り込まれた様々な知識を織り込んだ素晴らしいものだと言う人もいれば、所詮子供のお遊びで実写で勝負ができない人間達の自己満足だと言う人もいます。一つの物事には実に見方が違い、白黒つけるにはグラデーションがあった決着の方が優れている事もあります。それでも一生に何回かは白黒つけないといけない事は来るんですが、それに関しては個人の生き方に違いが出てくるものです。
 白黒はっきりつけようとしない日本の元首相大平正芳は、自身の政治的盟友田中角栄にも同じ態度を取り、田中の側近は大平を警戒せよと言ったのですが田中は気にしなかったそうです。そう言う片目をつぶって物事を話す人、保守派にも左翼にも大勢います。イギリス労働党のキア•スターマーがその典型です。労働運動は『リベラル』と決着し、白黒はっきりさせないと保守派との決勝戦には勝ち上がれないです。『リベラル』とファシストは紙一重。全体主義反対。個人崇拝反対。自分自身しか信奉していない身勝手な『多様性社会』反対。


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