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道東の美術館・博物館27か所行ってみた(十勝・釧路根室・オホーツク)

美術館や博物館を巡るのが好きだ。
学生時代を過ごした東京には回り切れないほど美術館がたくさんあって、世界中の古いものから新しいものまで、なんでも見ることができた。芸術・文化が集まっていることは、なんなら京都から上京した理由のひとつでもあった(今になると、京都こそいろいろあるよ!と言いたいが)。
社会人になって東京から札幌へ転勤し、2年前からは帯広へ。道東といえば、都会とは真逆の“大自然”が広がる土地。美味しいものもたくさん。でも、魅力はそれだけじゃない。

こちらに来てから、暇を見つけては車を走らせ、道東各地の美術館や博物館に足を運んだ。そこで見たのは、北の大地に根ざした暮らしや歴史・文化、そして厳しくも豊かな土地で生きる人たちが生み出した芸術。“ここだからこそ”の作品の数々は、東京の美術館で世界的に有名な作品を観た時とはまた違った感動を、私の胸にもたらした。
観る環境や季節も大いに関係してくるというのもまた、北海道ならではだろう。アートとともに庭の花々を楽しめるような施設は、冬期休館が多い。逆に、極寒の冬にだけやっている芸術祭もある。

芸術鑑賞ってなんだかハードルが高い…と思う人もいるかもしれないが、そんなことはない。第一に、入館料が安い(なんなら無料のところもある。大丈夫か!?)。あとは、どこかへ出かけると必ずその土地の美味しいものが食べたくなるのだが、美術館や博物館をじっくり回るとお腹がすくので、その後のごはんがより美味しく感じる(気がする)。帰り道に温泉に浸かって帰るのも好き。そんな感じで私は気軽に楽しんでいます。

この楽しさを自分の中だけにとどめておくのがもったいなく思えてきたので、私が訪れたことのある道東の美術館や博物館、芸術祭などをエリアごとに紹介していこうと思う。完全に私の主観で、備忘録的なものだが、いつか誰かのお出かけや旅の参考に少しでもなれば嬉しい。

十勝

ドライブしていると「果てしない~大空と~広い大地の~」と歌い出したくなる、まさに青空と畑が広がる十勝。その風景の美しさだけでなく、今の風景を作り上げた開拓者たちの苦労もまた、十勝のアートに映し出されているように思う。


北海道立帯広美術館

まずは王道の帯広美術館から。帯広市民なので、なんだかんだ最も多く足を運んでいる(カッサンドル・ポスター展、水木しげる展、銀の匙展など…)。
色々な企画展がやっているのだが、どれも「あ、これは行きたい!」と思う、なんだか惹きつけられる企画ばかりなのが帯広美術館。また、子どもたちが楽しめる仕掛けも多い。これ、たぶんキュレーターさんの力によるところが大きいのでは?と思っていたら、ミュージアムコンシェルジュの方のTwitterを見て確信。展示への工夫も思い入れもすごい。この方の、コロナ禍での「NO ART, NO LIFE」の発信にぐっと来た。
常設展示のほうも、十勝や北海道にゆかりのある人の作品を中心にいろんなテーマで展示されていて、毎回違う視点で見られるのが面白い。この前は「空」がテーマだったので、普段意識しない「空」を主役として鑑賞すると新しい発見があった。
“中の人”が見える帯広美術館、帯広にお越しの際はぜひ。

北海道立帯広美術館
帯広市緑ヶ丘2番地
9:30~17:00(月曜日休館)
260円(一般・コレクションギャラリー)
※特別展は展覧会ごとに異なる


帯広百年記念館

帯広美術館と同じ敷地内にある、帯広百年記念館。帯広・十勝の歴史・産業・自然などを網羅的に知ることのできる総合博物館で、帯広の開拓100年にあたる1982年に開館した。
特に、開拓当初に使われていたものなんかの展示が興味深い。初期のストーブとか「え、これだけで絶対寒さしのげないでしょ…!」と言いたくなる。今でこそ豊かな畑作・酪農地帯な十勝だが、原野の開拓の苦労は半端なかったことを実感。
私が行ったときは「晩成社」の企画展がやっていた。十勝の開拓の礎を築いた、依田勉三が率いていた晩成社。実はいろんな事業にチャレンジしてほとんど失敗していて、勉三さんが亡くなったあとに会社も解散している。でも、晩成社が実質もとになった産業があったり、晩成社きっかけで来た人が十勝のいろんな町の発展に貢献していたり、何よりその挑戦心に「ありがとうございます!!」の気持ち。もちろん常設展でも資料見られます。
また、館内のアイヌ民族文化情報センターリウカでは、アイヌの人たちの文化や歴史を学べる。
意外とコンパクトながら十勝のことが幅広くわかる、おすすめの場所。

帯広百年記念館
帯広市緑ヶ丘2番地
9:00~17:00(月曜日休館)
380円(一般・常設展示室)


六花の森

十勝だけでなく北海道を代表するお土産といえば、六花亭のマルセイバターサンドだろう。その甘く美味しいお菓子を包む、白地にかわいらしい花々の絵が散らされた包装紙も、なじみのある人は多いはず。
この絵を描いたのは、北海道出身の画家、坂本直行(さかもとなおゆき)。十勝では親しみをこめて「直行(ちょっこう)さん」とも呼ばれている。
「六花の森」ではまさしく、直行さんが包装紙に描いた草花たちが、広大な森の中で季節ごとに愛らしく咲き誇る。そして、直行さんの絵が飾られたギャラリー(クロアチアの古民家を移築した可愛い建物)が点在するという、素敵空間だ。
釧路に生まれ、北大へ進学し、なんやかんやあって、十勝で開拓農家をしながら絵を描いていたという直行さん。鮮やかな草花の絵はもちろん、北大山岳部にいた経験や、十勝に暮らしながら毎日日高山脈を眺めていたこともあり、山の風景画も多い。開墾には最終的に失敗するなど苦労の多かった直行さんの描く絵は、力強く、まっすぐで、あたたかいと感じる。
ぜひ、山と草花に囲まれたこの地で、直行さんの心を感じてほしい。
いつ行っても良いけど、春(5〜6月)の花が個人的に好き。素敵カフェもおすすめ。

六花の森
中札内村常盤西3線 249-6
4~10月 10:00〜16:00(冬期休館)
1000円


六花亭アートヴィレッジ 中札内美術村

こちらも六花亭さん。“アートヴィレッジ”というだけあって、広大なお庭の中で美術館巡りができる。こっちのほうは、十勝・北海道にゆかりのある6人の画家の美術館がそれぞれあり、日本画、洋画、イラストと、幅広く楽しめる。題材として多いのはやっぱり十勝の風景画で、良い景色の中そうした絵を眺めるのはほんとに気持ちいい。
「北の大地美術館」では、その年に二十歳になった人の自画像が展示されていて、こちらもそれぞれの若い思いを感じてぐっとくる。
レストランポロシリのごはんもおいしい。

六花亭アートヴィレッジ 中札内美術村
中札内村栄東5線
2023年度:4月22日~10月22日の金・土・日・祝日10:00~15:00
入館無料


福原記念美術館

十勝・釧路の食品スーパーといえば、フクハラ(いつもお世話になってます!)。その創業者、福原治平のコレクションが展示されている。
油彩画、日本画、彫刻、工芸…などなど幅広く、バランスが良い!というのが第一印象。日本を代表する画家はもちろん、十勝で活躍するアーティストの作品も。
六花亭もそうだけど、地元企業が地域のアートに投資して、それを公開してくれているのってとても尊い。
福原さんはお金持ちになってから集め出したのかなぁと思っていたら、まだ夫婦で小さくお店を始めた頃に、縁がある人に絵を頼んだら思いのほか高かったけど思い切って買ったのが始まり、という説明があって、余計にスゴイ!という気持ちになりました。

福原記念美術館
鹿追町泉町1丁目21
9:30~17:00(月曜日休館)
600円


神田日勝記念美術館

十勝が舞台だった2019年の朝ドラ「なつぞら」で、吉沢亮が演じていた画家の山田天陽。その「天陽くん」のモデルが、開拓農民であり画家の神田日勝だ。
こげ茶色で力強く描いた農家たちの暮らし。馬や牛への愛情を感じさせる、一本一本丁寧に描かれた毛並み。色彩を開放した抽象画もあれば、社会事象を投影した絵も。どの絵からも、32年の短い命を生ききった日勝のエネルギーを感じる。
絵を描くことを排泄になぞらえる台詞が朝ドラにも出てきたように、日勝にとっては、耕すことも描くことも、生きることそのものだったのだろうと思う。

神田日勝記念美術館
鹿追町東町3-2
10:00~17:00(月曜日休館)
530円


浦幌町立博物館

町の博物館ってとても大事だと思うのだけど、浦幌町の博物館の充実ぶりはすごい。自然はもちろん、町内で発掘された化石や縄文時代の遺跡、アイヌの人たちの資料、近現代の歴史文化まで…。
学芸員さんが、またすごい。知識が幅広く深いだけじゃなく、企画展の視点が面白い。“コロナ禍”という社会を記録するのもまた博物館の役割として、町民の手作りマスクを展示したりとか。箱だけではなく“人”が大事なんだと実感する博物館です。

浦幌町立博物館
浦幌町字桜町16-1
10:00~18:00(月曜日休館)
入館無料


忠類ナウマン象記念館

忠類村(現在の幕別町忠類地区)でナウマン象の化石が発見されたことを記念して建てられた、忠類ナウマン象記念館。ほぼ1頭分の全身骨格化石は、世界でも珍しいそう。復元模型の迫力がすごい!
工事現場での偶然の発見から、町民の人たちも巻き込んだ発掘調査まで、当時の地域の盛り上がりが、資料からビンビン伝わってくるのが面白い。
忠類村という村は今はなくなったけれど、“ナウマン象の村”というのがこの地域の人たちの誇りなんだろうなと感じる。

忠類ナウマン象記念館
幕別町忠類白銀町383番地1
9:00~17:00(火曜日休館)
300円



釧路・根室

湿原や草原が多く、夏でも涼しい釧路・根室地方。自然も圧倒的だし、歴史や文化が積み重なって生まれている、それぞれの町の独特の空気感に惹かれる。アイヌ関連の施設も多いです。


釧路市立美術館

釧路市を一望できる高台にある美術館。国内外問わずいろんな展覧会をやっていて、私が行ったルーヴル美術館の銅版画展も、銅版画そのものについてもよくわかる丁寧な展示で面白かった。
もともとは生涯学習センターのアートギャラリーだったそう。セミナーなどもいろいろやっていて、まさに地域に根差した美術館。こういう場所、大事!

釧路市立美術館
釧路市幣舞町4-28
10:00~17:00
※観覧料は展覧会により異なる


北海道立釧路芸術館

こちらは道立の芸術館。コレクションの中心は「写真作品、自然をテーマとする作品、 釧路・根室地域等と関連する作品」とのことで、ちょっとモダンな感じもあり、個性的。
私が行った「水からはじまるアート」というコレクション展は、まさに水の豊かなこの土地らしい展示だった。上の写真もその時のもの(千住博の「ウォーターフォール」)。
絵だけじゃなく、写真や映像作品にもフォーカスした美術館、もっと広がっていくといいな。

北海道立釧路芸術館
釧路市幸町4丁目1番5号
9:30~17:00(月曜日休館)
460円(所蔵品展)


釧路市立博物館

ここはほんとに、丸一日いられます。釧路の自然、歴史文化、アイヌ。1フロアごとにぎゅっとつめこまれていて、圧巻。釧路のこと、丸ごと知ることができる場所だと思う。
特に、この博物館の建設に合わせて作られた“川崎船”の再現をはじめ、水揚げ量日本一を誇った釧路の水産業の勢いが感じられるのが好き。
中身はもちろん、建物自体も魅力的。釧路出身で国内外から高い評価を受けた建築家、毛綱毅曠(もづな・きこう)の設計によるもの。各階をつなぐ、DNAの構造を思わせる二重の螺旋階段が美しい。

釧路市立博物館
釧路市春湖台1-7
9:30~17:00(月曜日休館)
480円


標茶町博物館「ニタイ・ト」

釧路川下りの拠点のひとつでもある、釧路湿原最大の湖「塘路湖」。美しい湖のほとりに、なんだかお洒落な建物があるなと思ったら、博物館だった!
アイヌ語で 「ニタイ」は“森”、「ト」は“湖”。自然を身近に感じながら学べる、とのこと。2018年にリニューアルしたそうで、中も広くてきれい。
そして展示の充実ぶりもすごい。北方文化ともつながる遺跡、塘路湖にも関係の深いアイヌの歴史、釧路集治監から発展した近代、国立公園を2つ抱える自然…標茶町、深い…。
塘路湖~釧路川のカヌーと合わせてぜひ。

標茶町博物館「ニタイ・ト」
標茶町字塘路原野北8線58番地9
9:30~16:30(月曜日休館)
220円


釧路市アイヌ文化伝統・創造館「オンネチセ」

阿寒湖の温泉とアイヌコタン(コタンはアイヌ語で村の意)は、道東観光で外せない場所だと思う。ここでは代表的な施設としてオンネチセを挙げたが、オンネチセを入り口として、ぜひコタンをまるごとじっくり味わってほしい。ひとつひとつ丁寧に作られた木彫りや刺繍などの作品は、見ていて本当にほれぼれする。さらに、店先で作り手の方たちから直接話を聞けるのも嬉しい。
また、最近はアイヌの方が阿寒の森や湖を案内してくださるツアーもあり、おすすめです。

アイヌ文化伝統・創造館 オンネチセ
釧路市阿寒町阿寒湖温泉4丁目7-19
9:00~17:00
500円


阿寒アートギャラリー

阿寒アイヌコタンで作られているのは、単なるお土産にとどまらない芸術作品だ。阿寒アートギャラリーでは、木彫り、針金作品、銀細工などなど、この地で生まれたアートを最新のものも含めて展示している。2階の動物写真の展示も迫力がすごい。
おしゃれなスペースで、コーヒーなども飲めるので、阿寒でぜひ立ち寄ってほしい場所のひとつ。

阿寒アートギャラリー
釧路市阿寒町阿寒湖温泉4丁目5-7
10:00~18:00
500円(2階のみ有料)


極寒芸術祭

道東を代表する温泉地のひとつ、弟子屈町の川湯温泉。その温泉街に佇む小さな宿の敷地と周辺の森で毎年2月に開催されるのが「極寒芸術祭」だ。
国内外の現代アート作家が宿に滞在しながら制作した作品が、極寒の野外に展示される。作品は、北風にさらされ、雪が積もり、凍りつき、表情を変化させていく。マイナス15度を下回る日には、温泉川の湯気が凍って発生するダイヤモンドダストとのコラボレーションも見られる。
独特の“極寒風景”にアートが試される実験場を、ぜひ体感してほしい。

極寒芸術祭
弟子屈町川湯温泉3丁目2番40号(ARtINn 極寒藝術伝染装置)
2月2日~3月3日 夜明け~21:00
入場無料


佐伯農場

人より牛が多い酪農の町、中標津町。ここで三代にわたり酪農を営む佐伯農場は、知る人ぞ知る「アートする牧場」だ。
古いサイロを改修した美術館には中標津ゆかりの版画家の作品を展示。以前は集乳所として使われていた建物は写真館に、倉庫は現代美術彫刻家の作品や家具を展示するギャラリーに。農場内にもオブジェが点在する。
「創作活動に打ち込む作家たちの“本物”の作品を多くの人に見てほしい」と語る農場主が選んだ、洗練されたアートたち。「レストラン牧舎」でのおいしいランチとともに、じっくり味わってほしい。

佐伯農場
中標津町字俣落2000ー2
4~11月 10:00~17:00(木曜日休館、冬期休館)
入館無料


オホーツク

オホーツクというのは、日本から見れば北の端な気がするけれど、オホーツク海という豊かな海を通して北方世界とつながってきた、「北側の玄関口」とも言えると私は思う。
山と海、そして“北の世界”を感じられる、オホーツクのアートです。


北方民族博物館

アイヌよりも昔、オホーツク沿岸を中心に「オホーツク人」がいたことを、北海道に来てから知った。北の世界とつながり、独自の豊かな文化を花開かせていたが、まだ謎の多い民族だ。
北方民族博物館では、オホーツク人の資料のほか、現在のロシア、北欧、北アメリカなどに住んでいる(いた)世界の北方民族の文化が展示されている。
見ていて感じるのは、北の民族たちの共通点。工夫した服装で厳しい寒さをしのぎ、海に漕ぎ出て豊かな海の恵みを食し、森ではクマを始めとした動物たちを神と崇め、音楽や芸術を楽しむ…。道具や模様に、それぞれの個性だけでなく、どこか似たところ、関わり合っているところを感じる。
海を通じて世界とつながってきた北海道を感じられる、大好きな博物館です。

北方民族博物館
網走市字潮見309-1
9:30~16:30(月曜日休館)
500円


網走監獄

監獄というと少し怖い感じがするかもしれないが、ここは北海道にとってめちゃくちゃ重要な場所。というのも、北海道の開拓は囚人たちが担ったといっても過言ではないから。過酷な環境の中で多くの死者を出しながら、原生林を切り拓き、北海道の各地をつなぐ道路を作ったのが網走監獄にいた囚人たちだった。そうした歴史が、さまざまな展示から体感できるようになっている。
建物自体からも歴史を感じられるし、監獄として機能するための工夫なんかも興味深い。あとゴールデンカムイ好きにはたまりませんね。白石を見つけてみてね。

網走監獄
網走市字呼人1-1
9:00~17:00
1500円


モヨロ貝塚館

先ほどふれた「オホーツク人」の暮らしを、家、墓、貝塚などから感じられる場所。オホーツク海というのは流氷を起点としてさまざまな生き物が集まるとても豊かな海で、貝塚を見ていると「めっちゃ贅沢な食生活…」とうらやましくなるくらい。生活が豊かだからこそ精神性も高まったのか、独特の丁寧な埋葬の仕方や、芸術的ともいえる道具なども、見ていて面白い。
本館の郷土博物館のほうにまだ行けていないのですが、セットでぜひ…!

モヨロ貝塚館(網走市立郷土博物館分館)
網走市北1条東2丁目
9:00~17:00(7~9月 無休、10~6月 月曜・祝日休館)


網走市立美術館

網走で育った居串佳一という画家の油絵が多く展示されている美術館。オホーツクの海や船、空、そこに暮らす人々を描いた居串の絵は、仄暗さもありつつ力強く、圧倒される。従軍画家として満州や千島で描いた絵というのもまた、時代を感じながらも、画家本人の地に根ざした視点も見える。迫力ある作品、ぜひオホーツクの地で見て味わってほしい。

網走市立美術館
網走市南6条西1丁目
10:00~16:00(月曜日休館)
120円(常設展)※企画展別途


オホーツク流氷館

オホーツク流氷館の屋上、天都山展望台は、晴れればオホーツク海とその向こうの斜里岳~海別岳~知床連山が一望できる絶景スポットなので、オホーツク観光ではぜひ訪れたい場所。
そして、オホーツクの海の豊かさのもとになっている“流氷”についても色々と知ることができる。流氷が来るからこそ海の多様性が増すし、知床が世界遺産になっているのも流氷のおかげと言えるかも。流氷も触れるしクリオネちゃんもいます。楽しい。

オホーツク流氷館
網走市天都山244番地の3
5月~10月 8:30~18:00、11月~4月 9:00~16:30
770円(展望台無料)


美幌博物館

大パノラマの美幌峠が有名な美幌町だが、この美幌博物館にもぜひ行ってほしい。
川や湖を中心とした豊かな自然の中に暮らしてきた縄文やアイヌの人々、開拓で大きなため池を作り農業を発展させてきた歴史…水とともにある生き物や人間の営みを感じられる。
そして、3分の1はアートの展示なのも良い。先ほどの網走の居串佳一に師事した横森政明など、ここでもこの地域の風土と関わりの深い作品たちが並んでいる。

美幌博物館
美幌町字美禽253-4
9:30~17:00(月曜日休館)
300円


シゲチャンランド

はじめてシゲチャンランドを訪れた時の衝撃は言葉にできない。
シゲチャンこと大西重成さんは、オホーツクの津別町に生まれ育ち、東京を拠点に世界的デザイナーとして活躍したのち、津別に帰ってきて約8,000坪の牧場地跡を私設美術館にしちゃったとんでもない人。
展示館には目・鼻・口など人体の部分の名前が付けられていて、流木や動物の骨、ほかにも人間社会ではゴミになりそうないろんなモノなどが、命を吹き込まれてそこに息づいている。「ナニカガジット生キテイル、アフレルヨウニ其処ニイル」っていうコピーだけでスゴさが伝わりますね。
いろんな人に、シゲチャンの世界を体感してほしいし、気さくな方なので(大体受付にいらっしゃる)おしゃべりもしてほしい。

シゲチャンランド
津別町字相生256
5月初旬~10月下旬 10:00~16:00(水木金休館、冬期休館)
700円


活汲アール・ブリュット美術館

津別町ではこちらも、こんなところにこんな美術館が!とびっくりした場所。アール・ブリュット=生(き)の芸術とは、既存の美術潮流とは無縁の文脈で制作された芸術作品のことで、障害のある人たちの作品が多い。ここでの展示作品ひとつひとつからも、強烈な個性やこだわりが感じられて、とても刺激を受ける。
この美術館を運営している人もまた、話が面白い人で、解説を聞きながら館内を回るのが楽しい。お庭も素敵です。

活汲アール・ブリュット美術館
津別町字活汲280番地8
5月~9月 10:00~16:00(月火休館、冬期休館)
入場無料


斜里町立知床博物館

知床といえば押しも押されぬ世界自然遺産であり北海道の一大観光地だが、その豊かな自然のことはもちろん、時に厳しさを見せる自然の中で営まれてきた人々の歴史のことも、ぜひこの知床博物館で知ってほしい。
知床というと“手つかずの自然”と思われがちだけれど、アイヌの人がいたり、苦労して開拓した人がいたり(知床五湖周辺でもその跡が見られる)、人間の存在が確実に入っている…ということを教えてくれたのは、知床のガイドさん。それがよくわかるのが、この博物館だと思う。
ちなみに町内の斜里町立図書館も、開拓の歴史がよくわかる面白い読み物もあるので、ぜひ合わせて行ってほしい。知床観光の深みが増すはず…!

斜里町立知床博物館
斜里町本町49-2
9:00~17:00(月曜日休館)
300円


北のアルプ美術館

ここもまた、知床斜里の中で好きな場所。
「アルプ」というのは、哲学者の串田孫一が代表となって1959年から1983年まで発刊されていた、山の文芸誌。詩人の尾崎喜八や版画家の畦地梅太郎など、さまざまな作家による絵、写真、紀行文などが載っていた。アルプが語った“自然への畏敬”を伝え続けたいと、斜里町の山崎猛さんが作った「北のアルプ美術館」では、これまでの「アルプ」のほか、原稿や挿絵の原画などが見られる。
私自身もそこそこ山登りが好きなのだけど、山を歩くことと思索を巡らせることはとても相性がいいと感じる。自然の中に身を置き、一歩一歩あゆみを進める中で、いろんなことを感じたり考えたりするのはとても良い時間だ。
作家たちが、そうした時間の中で生み出した言葉や芸術を、この美術館でじっくり味わうのがまた良い。
串田孫一の仕事部屋を再現した空間も、とても素敵です。

北のアルプ美術館
斜里町朝日町11-2 アルプ通り
6月~10月 10:00~17:00、11月~5月 10:00~16:00(月火休館、12月下旬~2月末休館)
入館無料


葦の芸術原野祭

これまた、斜里ですごいものを見た…という感想になる。
斜里(シャリ)がアイヌ語で「葦の原」を意味することから名づけられた「葦の芸術原野祭」、通称「あしげい」は、写真家・美術家の川村喜一さんをはじめとした斜里町内外の“表現者”たちが、2021年に立ち上げたアートプロジェクト。8月の1か月間、町の旧役場(旧図書館)で、作品展示のほか、参加型プロジェクトやパフォーマンスも一体的に展開される。
地域の人たちが思い出のモノや言葉を持ち寄って展示するプロジェクトは、ひとつひとつに見入ったし、人の営みや時の流れが交わりあっていくのを感じる空間だった。
知床半島で言葉にしたりされなかったりしながら積み重ねられてきた文化に目を向け、新しいものを生み出す――地域における芸術の神髄を見たように思う。毎年ずっと続くプロジェクトになることを祈ってます!

葦の芸術原野祭
斜里町本町42−1(斜里町旧役場庁舎)
10:00~17:00(2022年は8月6日~27日、夜まで延長の日も)
無料(公演のみ有料)


道東の美術館・博物館で“生きる”を感じる

北海道、特に道東は、正直「生きる」ことが楽ではない土地だ。冬は寒くて長いし、雪は降るし色々凍るし、隣のまちは遠いし、道路には鹿が飛び出してくる。
でも、そういう土地だからこそ、人間が自然の中で生かされていることを感じるし、住居や道具には“生き抜く”ための知恵がつまっているし、冬の閉じこもる期間が創作活動の時間になるし、春の訪れが大きな喜びとして感じられる。
道東の美術館や博物館では、展示を通じて、それぞれの土地で生きてきた人、今生きている人の“生きざま”にふれて感じて、自分がこれからどう生きていくか、考えることができる気がする。
(もちろん、気軽に楽しんでもいるのだけど!)

この春、東京に転勤が決まり、今この文章を東京で書いている。
でも、まちを歩いていて、桜の木に集まるひよどりがかわいいなと思ったり、今日の夕日がきれいだなと感じたり、道ですれ違う親子連れにも、おばあちゃんにも、工事のお兄ちゃんたちにも、それぞれの暮らしがあるんだなと思ったり、東京にも“地域”があるよなと思ったり。5年前まで東京にいた時とは、少し違って見える気がする。
それはやっぱり、北海道の自然や暮らしやアート、そしていろんな“人”と出会ったことで、自分もちょっと変わったからなんだと思う。

“生きる”を感じるために、私はまた、道東へ行きます。


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