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人ならざる者。私の友人はオーラが視える人だった。

会社の同僚で、仲の良い人がいます。
なんの気もなしに「会社の」同僚って書いたが、基本的に同僚と言えば同じ会社の人のことを指す。
やばいやばい、音を4文字分無駄遣いしてしまった。
俳句の夏井先生に叱られてしまう。
「会社の、は消します。要りません。同僚と言えば自ずと、ああ同じ会社の人のことなんだなと分かります!」
俳句の世界の4文字は大変貴重だ。
世界は4文字で大抵のことが表現できてしまうのだから。

と、文字数制限のないことをいいことに無駄話をつらつら続けるのはここまでにします。

さて、私には仲の良い同僚がいる。
ぐっちという(もちろん仮名)
ぐっちはつい最近およそ1年半の産休育休から復職した。
私と彼女は、彼女の育休期間中に待ち合わせして一緒にランチをする程度には親しくしている。
お互いのまあまあ深いことも話し合える間柄で、とっても大切な友人だ。

※彼女とランチをした時の話↓

そんな、割と何でもお互いのことを知っている状態の彼女の特異な特技を私は知らなかった。
しかもチーム内でそれを知らないのは私だけだったというなんともびっくりした出来事があった。

何の気もなしに同じチームの数人と彼女を囲んでzoomをつないで雑談していた時のことである。
「ぐっちさんってめちゃくちゃオーラ視える人じゃないですかぁ」
「そうそう!めちゃくちゃ当たっててびっくりしたわ~」
盛り上がる同僚たちを前に私は目が点状態となった。

え?何そのとんでも情報!
ええ?それみんな当たり前に知ってる情報なの?

そもそもぐっちはとても理知的な落ち着いた雰囲気の女性である。
大変に仕事も出来る。
不思議ちゃんキャラでもなく、いわゆる「スピ系(スピリチュアル系)」のイメージではない。

その場にいた男性社員Mが前のめりになって言う。
「俺、最初ぐっちがオーラ視えるとか言い出した時、なんかちょっとやばい人かと思ったんすよねwでも一緒に仕事してる中で、嘘つくような人じゃないって確信しました。実際超当たってるし!」

Mさん…オーラ診断済みだったんかい!
釣りと家庭菜園とスポーツしか興味ない、リアリストのMさんがめちゃ興奮してるじゃないかい。

ぐっちはそれを聞いて朗らかに笑う。
「そんな風に変な奴と思われるの嫌だから普段は言わないようにしているんですよ~」

ぐっちは私が育休中に中途入社してきた女性で、彼女は入社初日の掴みのあいさつとして一度だけその話をみんなの前でしたとのことだ。

なんてこったい。
オーラが視えるなんて、そんな話…!
ええ、私の大好物ですよ!!

同僚たちが盛り上がる中、みんなが私のオーラの色予想を始めた。
「たいたいさんは、緑っぽい!」
「確かに!癒しの色っぽい!(見た目だけは癒し系だからな)」
ぐっちはただニコニコしているだけで一言も口を開かない。
みんなに緑予想をされて、表面上は「えー?そうですかね~」などと対応しながら私は徐々に不安を覚えて始めていた。

ぐっち、なぜそこで何も言わぬ!?
「そうですね~、たいたいさんは〇色ですかね~」なんて普段のぐっちなら言ってくれそうなのに、彼女は否定も肯定もせずただにこやかに微笑むのみなのである。

まさか…私、人前で気軽に言えないような邪悪なオーラを発している…?
この世に生を受けて数十年。
清く正しく美しく生きてきたつもりだった。

え、自分で自分の邪悪さに気づいていないって、自覚してる悪人よりなんか闇が深くない…?

その後二人になって、恐る恐る尋ねてみると、彼女は違う違うと首を振った。
「すみません、そうですよね!気になっちゃいますよね!?」
ブンブンと頷く私に彼女は言った。
「たいたいさんはマーブルなんです。珍しいんです」

マーブル、なんかかわいいじゃん!
「今度しっかり説明しますね!」
私も次のMTGが控えていたため雑談はそこまでとなった。

その日の夜、ふとマーブルってどんな意味があるんだろうかとネット検索をしてみた。

「オーラ マーブル」
「マーブルオーラ」

これがまた、なっかなかヒットしない。
珍しいって言ってたけどほんとにそうみたいだな~なんて呑気に検索を繰り返しているとようやく1件オーラが視えるという方のブログにたどり着いた。

お!
よしよし、やっと見つけたぞ(わくわく)

マーブルのオーラを持つ者は人にあらず。
邪悪の権化。
無差別殺傷事件などを起こす人間はみんなマーブルオーラ。
マーブルの人間には絶対に近づかないようにしている。
その場から逃げるレベル。

金正恩もマーブル。

・・・
・・・・・・
え・・・

しばらく思考が停止するほどの衝撃。

・・・
え・・・?

じゃあなんでぐっちはこんな私と親しくしてくれてたん?

思わずスマホを握りしめLINEで連絡を取ろうとして、ギリギリの理性で踏み留まる。
ぐっちは育休明け直後でしんどいはず。
こんなアホなことで連絡を取ってはいけない!
ここで相手を気遣えず連絡を取るような人間なんぞそれこそマーブル確定じゃないか!

夜も碌に眠れないほど心臓がバクバクしていた。
私、これまで勝手に私は夫の幸運の女神だと思い込んでいて、女神だからという理由で時に傍若無人なふるまいもしてきたけど(最低)、もしかしたら夫にとって私は祟り神だった?

これは胡散臭い占いの類ではない。
私の信頼しているぐっちの言っていることなのだ。

ぐっちの言うことならきっと間違いない。
そのくらい私は彼女を信頼していた。

翌日、昨夜「マーブル」を検索した旨と、マーブルの色の解釈についての真偽を尋ねた。

「ああ、なるほど。確かに邪悪な人のオーラはいくつもの色が混ざっているというか、そうですね、マーブルと形容できますね」
淡々と説明するぐっちにガクブルの私。

「でもそれは暗~い色のイメージで、たいたいさんは違います。たいたいさんは2色の相反する色を同時に持っているんです。それがとても個性的で面白いんです」

真面目に全身脱力した。
よかった…。私、人ならざる者ではなかった。
夫を不幸に導く使者ではなかったのだ。

ぐっちは続けてこう言った。
「それに私、本当にやばいオーラの人とは付き合わないですもん」
そっか。
祟りを恐れて付き合ってくれていたわけじゃなかったんだね。

「そのうち、たいたいさんのオーラの魅力についてレポートにまとめますね!」
ぐっちのこの言葉を楽しみに目下私は日々を生きている。

ちなみに、ぐっちがお休みだった先週の木曜日、私は仕事を1時間ほど中抜けさせてもらうほど体調不良であった。マーブルオーラの衝撃で心労がたまっていたのかもしれない。

その翌日、昨日よりは回復していたものの、引き続き身体の疲労感を引きずり業務を開始した私に、ぐっちからピコンと一通のメッセージが届いた。

「たいたいさん、体調不良ですか?オーラがちょっと濁っているようです。血流も悪くなってるような。今日は早めに上がって休んでくださいね」

ええーーーーー!!!!!
顔も見てないのにーーーーーー!????
どゆことーーーーーーー!!!


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