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ワコールのワゴンセールで感じた哀しさ

心に隙間風が吹くような、そんな悲しい話をします。

あれは私が20代の頃、地元の大型ショッピングモールに買い物に行った日。
その日の買い物の目玉は、半期に一度のワコールのワゴンセールであった。
1Fの特設会場に群がるそれはそれはたくさんのマダムたち。
私もいざ群衆の一員にならんと心の中で腕をまくり人ごみに飛び込んだ。

揃えも揃えたり、下着の山。
この日の中心購買層は40代以上と見えたが、自分と同じくらいのお若いお嬢さんもちらほら。
老いも若きもパンツとブラジャーに手を伸ばし、素材を確かめ、伸びを確認し、サイズを確認してはワゴンに戻し、また次の下着を手にする。

コロナ以前の話であるからそこはもう密です。大変な密です。
うら若き乙女であった私はその日がワコールのワゴンセールデビュー戦であったが、当初感じていた遠慮や戸惑いはあっという間に消え失せた。

熱気にのまれ、狩猟本能は猛々しく目を覚まし、血圧上昇、アドレナリン大放出。

さて、狙うはブラ&ショーツのセットである。
ワゴンの中は色あせたような残念ピンクにくすんだベージュ、茶色に灰色、加えてやたらめったら細ボーダー。
シンプルイズベスト、質実剛健といった様子の、可愛らしさをはなから投げ捨て製作されたものたちが7割。

続く2割は、こ…これ…誰が買うんです?誰向けに作られたんです?とメーカーを問い詰めたくなるような過剰なフリル、悪趣味な刺繍、毒々しいまでの色使いの個性派揃い。

しかしだね、よーく目を凝らして見て御覧。
僅か全体の1割ほどではあるが、どうして君のような子がワゴンの中にいるんだい?とまさに掃き溜めに鶴、泥中の蓮。まだまだ第一線で戦える美少女たちが隠れているのだ。

私は若者独自の嗅覚でそんな「アタリ」を掘り起こす。
ブラをむんずと掴んで面前でまじまじと確かめ、思わず勝利の予感に頬が緩んだ。
きたこれっ!
ひっくり返しタグからサイズを確認。
ほう…Dとな。
同じ柄の次のブラを手に取る。
Eとな。
3度目の正直で再度手に取る。
…G…とな。
ええいもう一度だ。
またEかよ!

ちきしょう、もっと可憐なサイズはどこに隠れてやがる。
私は血眼でワゴンをひっくり返してひたすら調べ続けた。
認めたくないが、いわゆるAやらBやらの可憐なサイズは既に狩りつくされた後のようだった。

仕方なしに今度はショーツを手に取る。
ほう…Mとな。
同じ柄の次のショーツを手に取る。
Mとな。
3度目の正直で再度手に取る。
…S…とな。
ええいもう一度だ。
またMかよ!

ちきしょう、もっとゆるふわサイズはどこに隠れてやがる。
私は血眼でワゴンをひっくり返してひたすら調べ続けた。
認めたくないが、いわゆるLやらのゆるふわサイズは既に狩りつくされた後のようだった。

ええと、つまり…
私はフラフラと戦線から離脱し、見知らぬ老婦人が腰を下ろし休息中のベンチにへたり込んだ。
つまり、である。

多くの日本人の上半身のサイズは可憐であり、下半身のサイズはゆるふわである。

ワコールのワゴンセールより

そしてもちろん私もそうなのであった。
(今の若い人ってスタイルいいよね~)

↓私の下半身が上半身に比べてゆるふわだという記事


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