見出し画像

二十四節気の養生法【2023 小満】

 例年、小満の頃は、初夏の爽やかな季節で、農家では田植えが忙しい季節になり懐かしい日本の風景です。今年は5月21日から6月5日までが「小満」になります。暦便覧には「万物盈満(えいまん)すれば草木枝葉繁る」と書かれ、陽気が旺盛になり万物はますます充満し、オオムギなど夏の収穫作物が実を結んで少しふっくらとしてくる季節です。雑節では6月11日が入梅で、芒種の頃が梅雨入りの時期になります。平年では沖縄や奄美地方では、5月10日ごろが梅雨入りですが、今年は18日に梅雨入り宣言が出されましたので例年より少し遅いですね。昨年は梅雨入りが早かったので、昨年に比べるとかなり遅いようです。これから約1か月かけて梅雨前線の北上に伴って日本各地も順次梅雨入りし、東北北部では6月15日ごろが平年の梅雨入りですが、今年の梅雨入りは遅くなるでしょうかね。
 梅雨入り後、約1カ月余りの間、雨が続き湿度も高くジメジメとうっとうしい日々が続きます。降水量が多いと災害が起こりやすくなるので心配ですが、逆に少ないと水不足になり、こちらも野菜などの作物が育たず生活に影響が出るので困りますね。自然界でも私たちのカラダでも同じですが、なにごとも適切な時と適度な量ということが、穏やかで平安に過ごせるために大切なことですね。

今月の癒しの庭園 「相国寺 方丈庭園」

 今回は臨済宗京都五山二位の禅寺、相国寺の方丈庭園をご案内です。
相国寺さんは、京都御所の北側、同志社大学の北隣にある大きなお寺で、以前にこの辺りで健康体操教室を開催していたので毎週この総門の前を通っていましたが、ゆっくりと境内を参詣することもなく方丈まで入らせていただくのは今回が初めてです。

相国寺総門

1392年に足利義満により創建され当時は壮大な広さで、今でも4万坪の広さを誇り、室町時代に義光により臨済宗京都五山の第二に列せられた格式高いお寺です。総門をくぐるとはるか彼方に方丈が見えます。

どこまでも続く参道

相門をくぐるとすぐ左手に放生池があり、池の中や天界橋の上に蓮の鉢が置かれていて、夏になると蓮の花が満開になり綺麗でしょうね。

放生池にかかる天界橋
今はのんびり鴨が遊んでいます

参道を奥へ進み「洪音楼」と名付けられた鐘楼を通り過ぎると、左手の後で紹介する法堂があり、その向こうにようやく方丈があります。

方丈勅使門

受付を済ませて中に入ると、すぐに眩しいほどに真っ白な方丈庭園が現れます。この日は京都で今年初の30℃超えの日だったので、朝から日差しも強く本当に真っ白に輝いていました。

表方丈庭園

方丈の前に広がる表方丈庭園は、白砂敷きの枯山水の庭園で禅の境地「無」を表現していると言われます。枯山水によくある景石や苔、島などは一切なく、白砂にきれいに箒目だけがつけられた単調な作りながら白砂は太陽の光の反射を利用して方丈の中を明るく照らし、また法堂の姿を立派に浮きだたせる効果があります。

とてもシンプルな庭園ですね

雰囲気のある窓から覗く白砂が眩しいですね。

方丈の中には、それぞれの間ごとに素晴らしい襖絵が描かれていてますが、室内は撮影禁止なので残念ながらご紹介できません。
特に中の間に掛けられた掛け軸は、江戸時代に遠塵齋によって描かれた「法華観音図」で、すべて法華経の普門品第二十五、観音経の経文の文字によって画かれていて、細かな技法と穏やかな観音様の姿に癒されます。(下の絵はHPより拝借しました。)
方丈の縁側の突き当りには、見たことのある「白象図」が杉板に描かれています。その横には私の好きな牡丹の花もありました。(こちらは撮影OKです。)

全て文字で書かれた法華観音図

俵屋宗達や伊藤若冲も描いたとされる白象図ですが、こちらは江戸時代後期に京都画壇で活躍した原在中筆となっています。ベトナムから輸入された象が江戸に運ばれる途中に京都を通ったそうでその時に見た像をイメージしたのでしょうかね。躍動感がありユニークに描かれています。

原在中筆「白象図」

表方丈庭園の反対側の裏方丈庭園は、対照的に枯山水ではなく手前側を掘り下げ石を敷き詰めて谷川に見立て、奥には築山を設けて深山幽谷を感じさせ禅の悟りの豊かさを感じさせています。
写真では見えませんが大きな桜の木があるので、見ごろの頃は豪華に咲き誇っていたことと思います。

緑鮮やかな裏方丈庭園
縁側の橋に大きな蹲踞

杉板に描かれた紅葉の中に流れ落ちる滝の絵も見事です。秋にはこのように紅葉もきれいでしょうね。

ここでも青紅葉が本当にきれいです。以前、紅葉の名所の高山寺のお住職さんが、紅葉のもみじも赤く燃えて綺麗ですが、絶対新緑の頃の青紅葉も見に来てくださいと勧められていました。やはり青紅葉に癒されます。

綺麗な青紅葉

方丈庭園の向こうにそびえる法堂。慶長10年(1605年)豊臣秀頼によって桃山時代に再建され、現存する法堂の中では日本最古だそうで、禅宗様式で両端が鋭く反りあがった軒泉でその先には鬼瓦がいくつもあります。お寺では珍しく北東端の四段目の鬼瓦は額に五芒星があり鬼門封じがされてあります。

勅使門の向こう側に法堂

法堂の天井には狩野光信筆による直径9mの『幡龍図』が描かれ、堂内どこまで行っても鋭く睨みつけて追いかけてこられます。真下で手をたたくと反響音が耳に響き「鳴き龍」としても有名です。少し離れて手をたたいても、不思議と耳に響かないんですよ。ちゃんと響くように計算されて真ん中が少しドーム状に彎曲してつくられているそうです。堂内には達磨大師の木造もギョロッとした目で睨まれています。(堂内は撮影禁止なので画像はHPより拝借です)

今回4年ぶりに公開された浴室。宣明(せんみょう)と呼ばれ、1400年頃に建てられたものだそうですが、日本では古来、温浴文化があり禅寺でも身体の穢れを清浄にするという意味合いもあって浴室は大切にされていたそうです。

今回特別公開された浴室

他にも美しい枯山水の庭園のある開山堂や伊藤若冲、円山応挙、長谷川等伯らの重要文化財化収蔵された承天閣美術館など見どころは豊富ですが、今回は公開されておらずご案内できません。国宝『玳玻天目茶碗』を一目見たかったのですが、残念でした。次回のお愉しみにしましょう。
今回も有名なお寺ですが、京都に住んでいるとなかなかゆっくり伺えないことも「あるある」なことですが、皆さまも地元で有名なとこなのに行ったことがないなんて言う所もあるでしょうね。たまには時間を見つけてぜひゆっくり行ってみてはいかがでしょうかね。

よく手入れされた庭につつじがきれいです

小満の養生法

 この頃から、大麦や冬小麦などの夏作物は果実や全粒穀物を実らせますが、まだ成熟していないため小満と呼ばれています。
古くから「大落大満、小落小満」という諺があるそうで、 「落」とは雨の意味で、雨が多ければ多いほど将来の収穫が良くなるということだそうです。小満の節気は、豊富な降水量、十分な日照量、適度な気温に恵まれ作物が良く育つやかな時期です。
しかし、年によっては降水量が少なかったり、逆に雨が多すぎたりすると、作物の生育にも悪影響を及ぼし、私たちの食卓にも影響が出ますね。
時々、強風が雷雨を伴うこともありますので注意が必要です。
 また、小満の節気の頃から気温が大幅に上昇するので、薄着で寝たりすると風邪をひいたり湿疹などを引き起こしやすくなります。この節気の養生は、「未病先防」が大切になります。
中医養生法では、『天人相応的整体観和正気内存、邪不可干的病理観』ということを強調しており、「人体は有機的な整体であり、人間は密接に関係している自然環境に従わなければならず、養生のために、自然の法則を理解し、自然界の気の変化に順応して、自身の正気を補い、邪気の侵入を防がなければならない」と教えています。
このように、中医学では、病は「正気」と「邪気」の二つの面が関係していると考えます。外部環境としての邪気(外邪)は病気を引き起こす原因になりますが、やはり自分自身の正気の欠如が外邪の侵入を招く原因です。
しっかりと季節の養生法を取り入れ、自然界と調和して自分自身の内にある正気を高め、邪気の侵入を防ぐことに努力すべきなのです。

湿邪が多くなる季節

 小満の節気ごろは高温多湿になるので、皮膚病の発生率が高い時期で、特に皮膚が弱い人や敏感肌の人、皮膚疾患やアレルギーのある人は日常生活や食事に注意しなければいけません。毎日の食事は軽食で菜食中心にし、特に湿気や熱を取り除く食べ物を食べる必要があります。「金匱要略 中風歴節篇」には、「経絡の中に滞留した邪気はかゆみや発疹を引き起こす」と書かれており、昔から皮膚疾患が認識されていました。湿疹というぐらいなので湿邪が関わっているのはご想像の通りですね。
 中医学では「湿瘡」(しつそう)と呼ばれ、雨に濡れたまま放っておくと湿邪が侵入し皮毛と間質皮膚の間に滞留し熱邪や寒邪と絡み合って気血の巡りを妨げ発疹します。病因病機は、多湿や降雨により外湿邪の侵入、冷飲食、生の物、油っぽいものなどの過剰摂取によって脾が弱ることなどで、またストレスや不安、うつなどの感情も湿瘡の発症を促進する要因となります。
湿瘡は免疫反応にも関係しており、湿邪に対して免疫が過剰に反応することでも炎症が生じます。
 中医学的治療法は、健脾祛湿、温経、補血などで脾を補い水の巡りを調え、さらに経絡を温め気血を補い、気血の巡りも調えて改善を図ります。また外用薬や湿布、洗浄剤などを併用される場合もあります。

皮膚病になりやすい季節

 漢方薬では証(体質)に合わせて当帰飲子、十味敗毒湯、芍薬甘草湯、荊防敗毒散、桂枝茯苓丸、五苓散などが使われますが、薬膳では、湿邪を排除し体内の湿気を減らすために、温かい食品や湿気を除去する食品、湿熱を排出する食品などがオススメです。
薬膳食材では、蓮の実、はと麦、緑豆、金針菜、山査子、白きくらげ、小豆、青紫蘇、茯苓、山薬などがオススメの薬膳食材です。
一般の食品で湿邪や熱邪または寒邪を取り除き皮膚の健康をサポートする作用のある食品は、きゅうり(寒)、トマト(微寒)、レタス(涼)、苦瓜(寒)、ダイコン(涼)、セロリ(涼)、シソ(温)、かぼちゃ(温)にんじん(平)、ブロッコリー(平)、オクラ(平)、ピーマン(平)やオメガ3脂肪酸の豊富なサバ(温)、イワシ(温)、サケ(温)、アジ(温)、ブリ(温)、サンマ(平)、サワラ(平)、カツオ(平)など青背の魚やエビ(温)、イカ(平)、タコ(涼)などの魚介類、鶏肉(温)、鹿肉(温)、鴨肉(平)、豚肉(平)、牛肉(平)などの赤身やレバーなども気血を補うためにたんぱく質やビタミン、ミネラルを豊富に含みますがご自分の体質に合わせて温熱性または寒涼性の食品を選別することが大切で、また魚介類などはアレルギーなどに注意して取り入れてください。生食は避け、煮たり炊いたり焼いたりしてよく火を通して食べるべきです。
 皮膚疾患は、食品を含めたさまざまなアレルギーやストレスによる精神的な原因などさまざまな病因病機があり、個別に診察しないといけない場合が多いです。同じような養生法でどれも改善することはありませんが、この時期は特に湿邪が多くなり、脾虚体質にもなりやすく湿疹が発症しやすい季節ですのでくれぐれも脾の養生をしてお過ごしください。

 小満のころには気温が大幅に上昇し、雨が多くなり、雨が降った後は気温が急激に下がりますので、気温の変化に注意し、濡れた服はすぐ着替えたり気温が下がったときには羽織れる物を用意してお出かけください。
不適切で不衛生な日常生活はカビや虫の発生や食中毒、湿疹、水虫、湿性皮膚病などの病気を引き起こしやすくなります。
 そして、湿邪はほかの邪気と結びつきやすい特徴があります。もともと水なので冷たいので寒邪と結びついて寒湿となり、体内に長期間滞留した湿邪が陰虚体質で温められて湿熱となったりします。
 湿邪と寒邪が結びつくと寒湿となり関節痛、神経痛、しびれ、むくみ、疲労感、下痢、冷えや寒気、頭痛などが起こりやすく慢性関節痛、坐骨神経痛、喘息、腸炎、肝炎、腎炎、手足の冷え、湿疹などが起こりやすくなります。
 湿邪と熱邪が結びつくと湿熱となり発熱、口渇、発汗、尿が濃く量が少ない、便秘や下痢、口苦、疲労やだるさ、炎症、不眠、焦燥感やイライラなどが起こり、大腸湿熱(便秘や渋り腹)や膀胱湿熱(膀胱炎)、痛風、感冒、中耳炎などの症状が起こりやすくなります。 

湿邪はほかの邪気と結びつきやすい

また、感染症(特に風邪)やストレス、疲労など身体的要因で発疹することもあります。食事を中心として健脾祛湿、温経、補血の養生法を日常生活に取り入れて、湿邪を溜め込まないように気をつけ、雨の日が多く憂鬱な気分になりやすい時期ですが、意識的に明るく楽しく過ごすことが大切です。
くれぐれも食中毒には気をつけてお過ごしくださいね。

食中毒に要注意

京都伝統中医学研究所の"小満におすすめの薬膳茶&薬膳食材"

1.湿疹におすすめの薬膳茶&食材

 薬膳スープ「四神湯」芡実、蓮の実、はと麦、山薬、茯苓など健脾利湿食材を豊富にブレンドした夏の定番スープ。さらに緑豆や小豆などを加えても利湿効果アップ。1袋で5~6杯分出来るので、小分けして冷凍保存出来、食べる時に1椀分ずつ温め直して食べるのもOKです。ダイエット時の栄養補給にも!そのほか「気血巡茶」「水巡茶」などの薬膳茶や全部食べる薬膳茶2種もどちらもオススメです。
スィーツのような薬膳茶で全部食べられて美味しくてとってもお得。
「調補気血茶 桂棗黒豆茶」 なつめ、黒豆、竜眼をブレンド、お湯を注いでそのまま放置(長めに抽出)。脾(お腹)を調え、気血を補う。黒豆が香ばしく、なつめや竜眼の自然な甘味があり、とても美味しい薬膳茶。
「健脾利湿茶 意棗紅豆茶」 なつめ、小豆、苡仁(はと麦) お湯を注いでそのまま放置(長めに抽出)。脾(お腹)を調え、特に水の巡りを良くし、湿邪を出し肥満やむくみを改善。 
☆どちらも、まるでお汁粉やぜんざいなどスィーツのような全部食べる薬膳茶です。

オススメの薬膳食材は、蓮の実、はと麦、緑豆、金針菜、山査子、白きくらげ、ジャスミンなど。

2.入浴時におすすめ漢方入浴剤

寒湿タイプ
 ヨモギがたっぷり入った「ポカポカあたため乃湯」もカラダが温まりココロの緊張もほぐれ気の巡りを促進。
 ヨモギは漢方で艾葉(ガイヨウ)と言い、古来から擦り傷や切り傷など出血時に止血薬などとして使われたり、浄血や造血、デトックス作用(むく みの改善)、冷え性改善、美容効果があり、最近では「よもぎ蒸し」なども流行っていますね。

湿熱タイプ
 エキゾチックでオリエンタルな香りの 「すっきりさっぱり乃湯」暑気あたりの体調不調やストレス解消、気鬱解消に。
 藿香(かつこう)は、お腹を温め、湿を追い出冷たい物の飲みすぎ食べ過ぎで傷めた脾胃を補ったり夏カゼの予防など。漢方薬の「藿香正気散」でよく使われます。アロマではパチョリと呼ばれオリエンタルでエキゾチックな香りで人気があります。藿香に生姜や陳皮をブレンドして冷房などで冷えたカラダを温め、爽やかな香りでリラックス。
☆どちらも、漢方の香りが浴室全体に広がり、ココロもカラダも癒されリラックス♪
 
薬膳茶や薬膳食材などの商品は各ショップでお買い求めいただけます。

薬膳茶&薬膳食材専門店 京都 楽楽堂  本店公式サイト正式オープン

 国際中医師がオリジナルブレンドした季節の薬膳茶や、厳選した安心安全の薬膳食材を専門に扱っています。ぜひご利用ください。

京都伝統中医学研究所 楽天市場店 https://www.rakuten.co.jp/iktcm/
京都伝統中医学研究所 ヤフー店 https://store.shopping.yahoo.co.jp/iktcm/

 中医学や漢方の知恵を毎日のくらしに活かして、体質改善や病気の予防に役立てて下さい。
次回は、6月5日「芒種」ですね。いよいよ全国的に梅雨入りして、ジメジメと蒸し暑い季節なりますね。しっかり健脾利湿で湿邪の対策をして、落ち込んだり鬱々した気分にならずポジティブに楽しく過ごしましょう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?