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田舎の染物屋がパリのブランドとコラボしてスニーカーを世界発信できた理由

私たちは、岩手県一関市に、大正七年から100年以上続く染物屋です。
普段は民俗芸能の衣装や祭り半纏、手拭などを受注生産しており、海外への販路開拓など未経験。ましてや、ファッションの都パリとは縁遠い存在でした。しかし、そんな田舎町の染物屋が、なぜ海外進出できたのか。
数回に分けて、お伝えできたらと思います。

ヨーロッパ×日本の手仕事コラボ

パリのシューズブランド「CAULAINCOURT Paris」と、日本の染物屋「京屋染物店」の出会いから生まれたのが、今回ご紹介する"Haïku-俳句-"です。
パリの靴職人と日本の染職人。文化の垣根を越え、お互いの持つ技術・感性・エッセンスを融合させた、遊び心を忘れない大人の上質なスニーカーです。
スニーカーの顔とも言える、甲野の部分に使われているのは「刺子生地」。
日本では、昔、消防団の火消し半纏に使われていました。燃えにくく丈夫で、着用した際に動き易いという特徴を持っています。そして何よりも京屋紺で染め上げた独特な風合いが魅力

また、イタリア産の牛革部分は繊細で芸術的なパティーヌ仕上げ
パティーヌとは、色を幾重にも重ねて色彩を表現する伝統的な革の染色技法。色を重ねることによってできる透明感のある仕上がりと、使い込まれたような独特な色ムラが、その魅力です。
職人によって一足一足刺子の色とのバランスを考えた色づけを行っており、丁寧に手染めされた革靴は、一足の靴というよりも一つの芸術作品のようです。

コーランクールとは

CAULAINCOURT(コーランクール)は、アレクシー・ラフォン氏が2006年にパリで立ち上げたシューズブランド。ルイ・ヴィトンが発行している「パリ シティ ガイドブック」にベルルッティ、JMウエストンと並び、わずか3軒しか掲載されていない紳士靴店のひとつ。現在はパリ市内に3店舗を構えています。技術とセンスを兼ね備えた唯一無二のコレクションが魅力。スタッフ全員がパティーヌの技術を持って接客を行うという、隅々にまでこだわりを感じるメゾンです。

なぜ世界を目指すのか

「岩手県一関市から世界へ」私が目指している目標です。
その理由は、2つ。

  1. 長期的、客観的な視点で「自分たちの商品は魅力的か」と問い続けたい

  2. ローカルを深く掘り進めることこそ、世界へ繋がる道だと証明したい

つまり、世界に媚を売るのではなく、生産背景を深掘りし、質を突き詰め、使い手の心を満たす商品を生み出すことに集中すれば、世界に届くのではないかと思うのです。
もちろん、作るだけではダメで、届け方も大切ですが、そもそも商品やブランドに魅力がなければ、一過性の打ち上げ花火で終わってしまします。

蛇足になってしまいますが、
だからこそ、心掛けたいのは孫子の五事(道、天、地、将、法)です。
孫子の兵法にも出てきますので、これについての私なりの解釈は、また別の回でお伝えします。

今回のコラボに至るまで、私はアジアやヨーロッパの様々な展示会に出展したり、人と会ったりしてきました。行動を積み重ねる中で、今回のご縁に巡り会ったわけです。

この商品が誕生するまで、多くの方々にお世話になり、支えられました。
そして、商品発売と同時に、たくさんの方々に応援していただきました
本当にありがとうございます。
ローンチから2年が過ぎてもお客様に愛され、好評いただいている商品です。
現在では、レディースも販売されています。

世界で通用するために

私たちは海外展開の取り組みを始めて、まだ7年しか経っていないが、これまで、沢山のバイヤーさんやメーカー、ブランド、デザイナーと商談させていただく中で、感じたことがあります。
それは、当たり前のことですが、商品や技術の魅力(価値)が唯一無二のものかどうかです。
つまり、自分たちの強みを理解して、その強みをどこまでも磨き続けているか。高めているかどうか。そして、それを必要な時に必要な場所に届ける仕組みづくりをしているか。
さらに、チャンスを掴む情報網をつくれているか。

この中でも一番重要なのは、強みの深掘りです。尖れば尖るほど、局所的にでも高めれば高めるほど、広い世界から見ても魅力を発見されやすくなります。
そして、その深掘りが唯一無二の世界観にもなっていくことがわかりました。

では、具体的にどうやって強みを見出して、どのように深めて行ったのか。
そして、今後の事業展開の中で、どのように活かしていくつもりなのか。
そこについては、後ほど紹介させていただきますね。


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