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三郎 丸
2018年11月26日 08:35
何もない青の地平に向かってうるさいほどの沈黙を叫んでいるものも言わない暗幕がゆらゆらとうずくまっているのを落っこちそうな距離から眺めているシンとしている、もしくは頭の後ろの見えない地平に開かれたあちらの世界の聞こえない音に囲まれている。自我の淵に足をかけ、対面している完全な闇、音も光も吸収する完全な黒、ここでは誰も私を見ていない。頭の中の妄想ですら吸い込まれていく無を前に
2018年11月26日 22:54
20平米もない小さな居間に一人分の布団を敷いて高くはない天井をじっと見つめるように二人の体が横たわる雨戸越しに、虫の声が聞こえてくる絡み合う指先の柔らかな冷たさにただ二人当てもない静かな夜の海を板戸の上で漂っているかのような底のない心細さを思わされるオレンジ色の暗い明かりが四方の壁を鈍い灰色に照らすのを見ると誰もいなくなった暗い暗い夜の海を二人箱舟で彷徨っているかの
2018年11月28日 08:23
テーブルクロスを庭先で払うとき、白、緑、白、灰、と視界の色が互い違いに変わる。明るい灰色の霧に覆われた山間の村で、年の瀬の気配を感じる冷たく湿気った週末。昼食の後の気だるい体を霙を吐き出す冷気が纏い、背中に感じる部屋の暖気に思わず身震いする。視界の端には、白く愛くるしい姿のミヌ、犬のことだが、が落ち着かなく縦に横に揺れるテーブルクロスの端を、興味深げに眺めていた。---
2018年11月28日 19:05
5月の風が、高いところを過ぎて行く。目の前の水面に照りつける、お天道様の煌めき。その下をタガメが泳いで行く。気楽なもんだなぁ…セツは痛くなった首を少し上に向けた。水の煌めき、泥、タガメ、カエル、そして、恐ろしいほど澄んだ青。セツの視線に映るものはずっと変わらない。ここは静かだ、家族の声も蛙の声もすごく喧しいのに、ここはとても静かだ、と思った。指先を泥の中に突っ込んで、