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『未来と芸術展』で未来について考える


本日は六本木の森美術館で開催中の『未来と芸術展』にいってきました

展覧会での感動が忘却の彼方へと消え去らないうちにここに残しておこうと思います

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近未来の人間は労働から解放され幸福になるのか、機械へと隷属を強いられてしまうのか、など様々な考え方があることでしょう

様々な作家がつくる未来像にふれることで、自分はどのような未来がいいのかを考えていくことが本展覧会の趣旨です

本展覧会は5セクションで構成されていて、その順を追って趣旨や作品紹介、感想などを書いていくことにします(この展覧会は基本的に写真撮影OKでした)

① 都市の新たな可能性

第1セクションでは現在進行中の都市計画や未来の都市像を提案するプロジェクトが紹介されます

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海上に浮かびエネルギーインフラに頼らないモジュール型都市のプロトタイプ『ポッド・オフグリッド』


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人工過密や大気汚染などにより地表で生活できなかった近未来に、雲の上の大気圏で生活することを提案している『Xクラウド・シティ』


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現代の閉鎖的な建築よりもオープンな建築、社会への道筋を示す『ポロ・シティ』


普段の生活で都市や建築の問題点を考える人はそこまで多くないと思います

私自身もそうです

ですが、新たな都市の案や現代の建築の問題点を指摘するような展示をみて、それらの問題を意識しなければならないなと感じました

そして実際に外に出てみると、いままでみていた世界が違うものに変わってみえるようでした


② ネオ・メタボリズム建築へ

新しい素材や新工法の研究を紹介することで、建築の原理の刷新について考察するセクションです

自然と共生し、持続可能で可変的、柔軟に変容する建築、現代版メタボリズム「ネオ・メタボリズム」という建築の可能性を示唆します

(ちなみにメタボリズムとは1960年代に日本の建築家達が提唱した「生命が成長や変化を繰り返すように、建築や都市も有機的にデザインされるべきである」という理念のこと。当時は達成されなかったが建築の世界に様々な影響を与えたとされる)

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アムステルダム中心に掛けるため計画された3Dプリントによるステンレス製の橋『MX3Dの橋』


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イスラーム建築独特の装飾様式である「ムカルナス」をコンピューターを用いてシミュレーションすることで人間では作図できないようなデザインを生み出した『ムカルナスの変異』


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都市緑化の一例を示し、シンガポールの新たなランドマークとなっている『オアシア・ホテル・ダウンタウン』


このセクションではテクノロジーを駆使して火星に住むプランを示したりしていて、SFの世界もそう遠いものではないなと思いました

実際に世界で活用されているような技術も多数紹介されていて、世界は変わっているのだな、としみじみ

日本も今すぐ適用すべきだ!などと世界に迎合するつもりは毛頭ありませんが、あまりテクノロジーへと拒否反応ばかり示さないようにしないとな、と感じました

恥ずかしながら私は「メタボリズム」というものを知らなかったのですが、知ってみれば面白い考えだと思ったし、現代の技術ならそのような都市も夢ではないのではないでしょうか

建築を見るときの新しい視点をこのセクションから得られました

 

③ ライフスタイルとデザインの革新

第3セクションでは技術革新により私たちの衣食住がどのように変化する可能性があるかを示します

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解剖学に基づきデザインされた『インターナショナル・デザイン』シリーズ。写真の作品達はそれぞれ「肺」、「神経系」、「靭帯と腱」をモチーフにしている


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技術革新による「食」への影響を考えさせる”3Dフードプリンター”『SUSHI SINGULARITY』


第3セクションは身近なものがテーマでした

本ブログはユニバーサルなものを目指しているので写真は載せませんが、昆虫食をテーマにした『ポップ・ローチ』という作品や培養肉について扱った『ビストロ・イン・ビトロ』なんかは大変お気に入りです

食は技術革新により変化するのでしょうか?

なってみないと分かりませんが、私には食の変化はちょっと抵抗があるかもしれません…


④ 身体の拡張と倫理

身体というところに焦点をあてテクノロジーがもたらす変化と倫理の問題を考えるセクションです

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イスに座った人間をコンピューターがスケッチする『ヒューマン・スタディ # 1、5RNP』(実際に描いてもらえます)


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技術による身体への矯正について考えさせる『変容』シリーズ。この作品では乳児の頭部に気温変化に適応させる処置がなされている


生命倫理は難しいですね

ですが、ここをないがしろにすると人類が自滅するだろうという生命科学者達の言説については私も全面的に同意するところです

一方で科学の発展、技術革新を願ってしまうのは私が理系だからでしょうか

生命科学を扱うものには一生つきまとうことになる課題ですね


⑤ 変容する社会と人間

最後となる第5セクションでは、新しい人間像、社会像を提案します

実際のロボットや遺伝子組み換え蚕によって不思議な変化をしているシルクによる衣服、現代の私たちに人間像や社会像を考えさせる手塚治虫著『火の鳥』の原画などが展示されています

展示『シェアド・ベイビー』という作品で初めて3人の親をもつ子供に関する問題があることを知りました

技術が進んだ今だからこその問題だと思ったし、多くの人が考える必要のある問題でしょう


これら5セクションの展示を通じて様々な新しい知識や視点、問題点などを獲得しました

未来の問題は研究者が考えて解決する問題ではなく、多くの人が考えることに意味があります

一人一人が批評的目線をもってテクノロジーと人間の関係を考えることでよりよい未来がくるだろう、というのが私が本展覧会を経て思った感想です

将来について考えさせられるよい展覧会でした

3月末まで開催しているので、お時間ある方は是非

それでは


『未来と芸術展』ホームページ

https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/future_art/index.html

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