アフターコロナの国内観光向け施策で、インバウンド復活への仕込みをしよう!
新型コロナウィルスの影響で、外国人観光客がほぼゼロとなり、渡航再開の見通しはまだ立っていません。京都の街も昨年から様変わりし、かつての落ち着きが取り戻されたと喜ぶコメントをよく見かけます。もう外国人はいらないという極端な意見も見られます。そういうわけにもいかないことは、わかっている人がほとんどだと思いますが、インバウンドへの依存に不安を抱いている人も多いのではないかと思います。
国内観光客だけで観光は成り立つのか?
という質問を最近いただいたので、今回はそのとき考えたことを投稿したいと思います。
なにを持って成り立つとするのかによりますが、「同じ事業者数、雇用規模を維持する」という意味であれば、やはり不可能ということになるでしょう。
海外旅行を予定していた日本人が、海外旅行の代わりに国内旅行をするようになることで、しばらくは国内旅行需要が増えるため、訪日観光が無くなった分がそのまま減ることにはなりません。しかしながら、近年の日本の国際観光収支は黒字で、日本人が海外旅行で使う金額よりも外国人が訪日旅行で使う金額のほうが多い状態なので、日本人が国内旅行するようになったとしても、外国人が来ないことによるマイナスのほうが大きく、昨年までの状況を維持することは困難です。
しかも、外国人向けのサービスを提供してきた事業者が、そのまま日本人向けにサービスを転換できるわけでもないので、当然インバウンド消失によって廃業を余儀なくされる事業者が続出し、金額の単純計算以上の影響があるでしょう。
京都におけるインバウンド消費の恩恵
ちなみにたとえば、2018年時点(過年度調査をもとに推定)の京都における観光消費由来の付加価値(GDPに相当)は約0.8兆円です。この内訳は、日本人:外国人=4:1くらいなので(消費額ベースで単純に按分)、日本人が0.6兆円、外国人が0.2兆円くらいです。
京都市の市内総生産(GDPに相当)は約6.5兆円なので、外国人観光消費由来の付加価値が占める割合は、0.2÷6.5で約3%となります。
市内総生産を一人当たり所得にすると約300万円なので、これに3%をかけると約10万円ということになります。(波及効果を含めると、もう少し多くなる可能性はあります)
一方で、日本人観光消費由来の付加価値は外国人の約4倍でしたので、一人当たり所得にすると30~40万円と推定されます。ただし、今後の国内人口減少により、これは徐々に減っていくことが予想されます。
外国人観光客がいなくなるということは、1年間300万円の収入の人が、今後収入が少しずつ減っていきそうななかで、年間10万円の収入を失うということになります。
この金額を大きいと捉えるかどうかは、各人の判断、ひいては政治的な判断に委ねられるところですが、みなさんはどうお感じになるでしょうか?奇しくも、全国民に配られる定額給付金と同じ金額に相当します。もちろん、インバウンドの受入は、10万円分の恩恵がある反面、混雑などの不利益も被ることになるので、単純比較はできません。しかし、おそらくほとんどの方が給付を受けることを考えると、やはりインバウンドが不要というわけにはいかないのではないでしょうか。
国内観光客の誘致に向けて
とはいえ、当面は国内観光客のみしか消費を期待できない状況なので、この需要にいかに応えるかが重要になってはきます。そこで「そうした状況のもと、何を重視していくのか?」という質問もいただきました。
いわずもがなですが、感染再発を予防し、安心・安全にお越しいただくために対策を施していくことが、最重要です。ガイドラインを作ったり、対策ができている店舗を紹介したり、観光客の行動を追跡できるようにしたり、すでに様々な動きが出始めているところです。
また、外国人が少ない今の時期だからこそ、外国人が多くて行きづらかった場所に行きたい、と考える人が多いと予想されます。Go to Travelキャンペーン等を利用して、これを機会に初めて京都へ行くという方も増えるかと思います。そうしたライト層観光客とのつながりが、1回きりで終わらないようにコミュニケーションを続けて行くこと(いわゆるリピーター開発)も重要だと考えています。
よくある手法としては、次に来ていただた時に使えるクーポンを発行したり、メルマガ会員登録してもらって、帰ってからも情報を届けられるようにしたり、といったことが挙げられるでしょうが、これに一捻り加えた企画を用意できるかどうかが勝負です。
そこで、今回の記事タイトルにもつながるのですが、いずれインバウンドが復活することを考えると、このタイミングでの国内観光客の誘客で重要なのは、
いつか外国人の友人が日本へ来るような時に、京都を紹介できるようになりたいから、今のうちに色々体験しておこう
と考えていただけるような方をどれだけ増やせるか、ではないでしょうか?
国内の観光客の中には、留学生をはじめとした外国人も含まれるので、そういった方々を通して、早い段階から魅力の再発信の準備をしていくことが、
重要だと個人的には考えています。いわゆるアンバサダーマーケティングですね。
台湾や東南アジア、豪州からインバウンドが復活するから、近隣地域からプロモーションを再開しようというのがありがちな発想ではあります。しかし、日用品などと違って消費の頻度・間隔が極めて長い国際旅行市場においては、災害やテロ等でマーケットが乱れたからといって安易にターゲットを変えても、その成果が現れる頃にはマーケットがもとに戻ってしまうので、得策では無いでしょう。
京都は、京都の強みである文化資源への理解度が高い、欧米豪方面に多い観光客を重視しています。したがって、目先のニーズ変化に惑わされず、インバウンド需要が無いあいだも、国内観光客のプロモーションを通して、インバウンド獲得への仕込みをしていけるようにしたいと思っています。