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ヒロ・ハットリの忍びミステリーの作者ががんを患い、日本百名山に登る

Climb:
Leaving Safe and Finding Strength on 100 Summits in Japan

「登る:日本百名山の頂上に強さを見つけに行く」
by Susan Spann
August 2020 (Rowman & Littlefield)

深田久弥の『日本百名山』は、1964年に刊行され、今も売れ続けているロングセラーである。

じつは、この英訳版もよく売れている。ハワイ大学出版局University of Hawai'i Pressから2014年に刊行されてから、途切れることなく売れ続けている。

さて、そんな予備知識もあって、サブタイトルに 100 Summits in Japanと入っている新刊に出会ったときは、「おっ?!」と思った。

百名山=売れるかも、みたいな期待感。ま、淡い期待である。何度も言うが、学術書は基本的に売れない。

予想にたがわずというか、今回紹介する本はいまのところそれほど売れていない。

でも解説を読んでみると、これは学術書というよりは、一人のアメリカ人女性が『日本百名山』の100の山に登ろうとした記録であり、その直前にがんを発症してその病と闘いながら登山を続けた闘病の記録でもあり、エッセイかノンフィクションといったほうがよさそうな内容だ。

40過ぎたメタボなおばさん(自分で、middle-aged, overweight womanって言ってる)が、きゅうに思い立って1年間で百名山を制覇しようという無謀な計画を立てて日本にやってくる、というところまでなら、なんかおもしろそう、と思うが、がんを発症して死の恐怖と向き合いながら登山を続けていく、となると、こちらも粛然とした気持ちになる。

しかし、著者紹介文を読んで、「ん?」となった。著者のスーザン・スパンさんは、「元弁護士で、ヒロ・ハットリのミステリー小説の作者」と書いてある。

ヒロ・ハットリのミステリー小説??

どういうこっちゃ、と思い、スーザン・スパン(Susan Spann)でググってみたら、なんと自前のホームページが出てきた。

スーザンさんは、タフツ大学で中国と日本の歴史と文化を専攻し、2013年に初の長編小説Claws of the Cat: A Shinobi Mystery『猫の爪:忍びミステリー』を刊行している。

16世紀の京都が舞台で、master ninjaマスター・ニンジャのヒロ・ハットリが、あるサムライが殺された事件の犯人を3日で見つけるために奔走する、というミステリーらしい。

なんとこの「忍びミステリー」はシリーズとして現在7作が刊行されている。いまのところ、日本語版は出ていないらしい。うーん。それって日本の出版社がまだ気づいていないってことなのか、それとも。。。

そういえば、ハリー・ポッターが大流行したころ、『ダレン・シャン』とかいろいろファンタジー小説が出てきて、そんななかで忍者がでてくる日本が舞台のファンタジーがあったなー。

ハリー・ポッターは、ちょこっとだけイギリスにいたときにペーパーバックで読みはじめてハマってしまい、当時まだ3巻ぐらいまでしか出ていなかったので、それから新刊が出るたびに日本語版を待っていられなくて、ペーパーバックで読んでいた。新刊が出るまでのあいだ、ファンタジーだったらイケるんじゃないかと、C・S・ルイスの『ナルニア国物語』をペーパーバックで読み、J・R・R・トールキンの『指輪物語』に行く前に、その前日譚の『ホビットの冒険』を読んだところで力尽きた。英語、疲れる。。。

とはいえ、その忍者ファンタジーの解説を読んだときは、ハリポタにガチハマリしていたので、大いに興味をそそられた。

今調べたら、たぶんこの本。

Across the Nightingale Floor=鴬張りの廊下を渡る、とでも訳すのかな。

解説読んだら、忍者とは書いてないなー。Assassinがどうのと書いてあるから、刺客=忍者、とかんちがいしたのかな。いや、忍者で刺客なのかも。

表紙は忍者だし。

こちらもシリーズで4作刊行されているが、日本語版はなし。

忍者ものの翻訳は売れないのか?

スーザンさんのこの百名山に登る本を、アマゾンの「試し読み」で最初のほうだけ読んでみたが、そこに「2015年までに、私は16世紀の京都を舞台にしたミステリーを3作書いてとある賞を受賞している。それまでアジアに行ったことはなかったけど」と書いてあって、のけぞった。

うそ。
1回も日本に来たことなくて、日本が舞台のミステリー書いたの?

・・・まあまあ、行ったことない土地についてだって、そりゃ作家の想像力と、いろんな資料で、じゅうぶん書けるとは思うけど。

なんかこの人、おもしろいなー。

この百名山に登る話も読みたいけど、忍びミステリーも読んでみたくなっちゃった。

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