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死ぬまで腕を絡ませる

 「漫画タイム? 仕事中?」

 ここ最近にしては早い時間に彼からLINEがきた。あぁ飲みたいのかなぁと思って「何にもしてない中」と送ると「軽く飲み行かない?」ときた。ほぉらやっぱり。同棲して2年もすれば彼の言動はお見通しだ。

 すぐさま着替えて家を後にした。この日の装いは我ながらプチプラの極み。GAPのあみあみニット、ユニクロのレースがかわいいキャミソール、数年前に買ったユニクロの白デニムスカート。靴だけワンポイントでGUのブルーのスリッポン。足首を捻挫したから履きやすい靴を選んだらこれしかなかった。とにかく、ワンカラーコーデが基本ならプチプラでもそれなりにオシャレに見えるし、そこに靴で差し色すれば高見えするはず。おしゃれな彼からしても合格点だろう。プチプラファッションでも、地元でのデートでも、彼に「恭子で良かった」と思われるようにかわいくありたい。

 捻挫のため早くは歩けないけど気持ち早く歩いて彼との集合場所に向かった。長く付き合っても外での待ち合わせは心が弾む。

 お店前に集合だったので向かうと、中年サラリーマンがいた。彼だ。店頭でスマホをいじっていた。

 「あれ、お休み?」

 「そうらしいよ」

 じゃあどこにしようかと2人で歩き出した。彼と腕を組みたくて彼の左腕に右腕を絡ませた。

 本当は手をつなぎたいけど、何となく小っ恥ずかしい。私よりも彼がそうで、外でいかにもカップル感を出すのが好きではない。私からすれば昭和気質の男だ。

 もし彼の気持ちを無視して手をつないだとしても、彼は応えてくれるだろう。だけど、きっと心で萎えるはずだ。「別に外でくっつかなくても良くない?」みたいな。昭和、いや武士か! と思うけど、きっとそう言うに違いない。

 腕を組みたいとはいえ、私も外では無意味に恋人と絡みたくないタイプだ。いちゃつくなら家でいちゃつく派である。彼もそういう人。友だちも含めて飲む時はあっさりカップルだ。

 でも腕は組む。というか私が腕を絡ませる。まだ腕を組むほうが我々の価値観では爽やかだと思うだからだ(おそらく彼も)。

 腕組みの良いところは、彼の体温を感じられること。手をつなぐよりも密着部分が多いから一体感があって安心する。嬉しくなる。手をつなぐのも好きだけど、腕を組むよりも体温を感じないじゃない? もっと広範囲にわたって感じられるから腕組みが好きになった。結果オーライだ。

 私たちは世間的に見ても仲良しだと思う。その理由は、こういう何気ない行動にあると思う。やっぱりくっついたほうがパートナーとはいつまでも仲良くいられると思う。お互いの体温を感じると相手に対する愛情が増すと思うからだ。

 これまでの彼氏にも、相手が嫌がらない程度でさり気なくくっついてきた。だって、彼への好きな気持ちを表したいじゃない。今の私はバツイチ・アラフォーだけど、年齢関係なくくっつきたい気持ちはある。だって好きだから。

 だから腕を組む。まぁ、もしかしたら彼は嫌かもしれないけど、これくらいならいいだろうと思っている。ここは譲らない。完全に私から甘えたい態度がなくなったら彼は寂しいと思うんだよね。これは私云々ではなく全男性に言えると思う。いくら強気だったり完璧な女性でも甘えられたらメンズは喜ぶんじゃないかなぁ。

 相手を慮る気持ちと適度な接触があれば、いつまでも年齢関係なく仲睦まじく、ラブラブでいられると思う。

 私の理想は死ぬまでラブラブでいること。彼の思いも汲みつつくっついて、彼に好きだよーって伝えたい。
 まぁ、ようするに惚気ですな。いい年こいてと思われるかもしれないけど、死ぬまでパートナーと仲良くしたいからいいじゃない。死ぬまで惚気られる仲でいたいから、私は死ぬまで彼に腕を絡ませる。

 それにしても、ラブラブって死語だよね。でも、わかりやすいからいいじゃない。私はずーっとパートナーとラブラブで仲良くしたい。


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