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【エッセイ】喧嘩

私と彼は仲が良い。滅多に喧嘩しない。喧嘩するのは私が悪酔いして酒ヤクザモードになって、理不尽に切れるときくらい。いや、喧嘩と思ってるのは私だけで、彼はそんなろくでもない私をなだめて適度に放置する。これを喧嘩にカウントしないと、大喧嘩したのは1、2回くらい。基本的にはいつもニコニコ穏やかに過ごしている。

けれど、今日は珍しくぶつかった。
本当に些細なことなのに大声をあげて言い合った。普段温厚な彼も、それは違うと思ったときには全力で言う人。私も納得しないときや喧嘩したときは引かない。お互いここぞとばかり引かないので、側から見たらなかなかの喧嘩っぷりだと思う。今日はシラフなのに久々にハッスルした。

このまま話しても、らちが明かない。不穏な空気のままだと思い、途中で仕事部屋に移動した。仕事をして気持ちを落ち着かせた。

こういうとき、仕事があるといい。
怒りの感情から一時離れられる。運良くオンライン会議が入っていたので、そちらに集中できた。

会議を終えると、ある程度気持ちが落ち着いていたので、彼のいるリビングに戻った。明日に喧嘩を持ち越すのは嫌だし、無駄にエネルギーを使うのがアホらしい。何よりも、早くいつもの穏やかな二人になりたい。

ソファでテレビを観る彼に「何してるのー?」とわかりきった質問で話しかけた。

1時間半くらい離れたおかげでお互い冷静になって話せた。我々の良いところは仲直りが早いこと、そしてなんでも話すことだ。さっきまで何を考えていたか、何にむかついたのかなど一連を話す。喧嘩は多かれ少なかれ、お互いに悪いところはある。そこは認め合って、お互いの言い分にも耳を傾け、受け入れる。これが仲直りの最短ルートだと思う。

ひとしきり話した後、無事仲直りできた。今日はなんだから噛み合わない日だったねと笑い合い、いつもの二人に戻った。やっぱりいつもの二人がいい。なんでも話せる人で良かったと思えた。

笑い声が聞こえた途端、愛猫が目を覚ました。

私たちが喧嘩をするとき、愛猫はピリついた空気を感じ取って寝てしまう。今日もそうだった。まるで子どもだ。両親が不仲になると黙り込む子どものように、ピタッと動かなくなる。私たちが仲直りしたとわかったら目を覚まし、安心したのかごはんを食べ始めた。そんな愛猫を見て、悪かったねと話す我々。

喧嘩はしたくないけれど、いろんなことに気付かされる。平穏な毎日の素晴らしさ、支離滅裂な自分の未熟さ、愛猫の空気を感じ取る力。気付かされたことに感謝して、些細なことで喧嘩するのはやめようと心に固く誓った。

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