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【都議選2021選挙予測】北多摩第三選挙区 (2021/7/1 更新版)

 7月初旬に投開票の迫った都議選。北多摩第三選挙区は多摩地域屈指の激戦区の1つです。定数3名に対して自民、公明、立憲、共産、都民の5党が候補者を擁立しています。この選挙区の勝敗はどうなるのでしょうか。

 それを考える前に、第1歩としてこの選挙区を構成する調布市と狛江市の両自治体について知るところから始めなければなりません。両市の概要と政治について掲載していますが、若干長いので、時間的余裕のある方や地理に興味のある方以外は、下の目次欄をタップして②の政治以降からご覧下さい。

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調布市と狛江市(東京都市長会公式HPより引用)

① 調布市と狛江市の紹介

 東京都調布市は世田谷区の西、府中市の東の武蔵野台地に位置する自治体であり、多摩地域の中では人口20万人を超える規模の大きい街です。漫画「ゲゲゲの鬼太郎」の作者である水木しげる氏が長年住んだ街として知られ、連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」によってその知名度は大幅に増大しました。

 同ドラマに登場した深大寺は観光地となっており、駅からは深大寺行きのバスが何本も出ています(この深大寺名物である深大寺蕎麦は中々の美味しさなので、訪れた際には是非)。市内の東西に京王線が走り、中心駅である調布駅から相模原線が分岐しています。同駅は近年再開発が進み、街の光景が様変わりしたそうです。最近では恋愛映画「花束みたいな恋をした」のロケ地に選ばれ、多摩川や京王線が度々登場しました。

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深大寺本堂(深大寺公式HP) 2001年に改修工事を行った

 京王閣と名のついた競輪場に近い多摩川の河川敷では毎年花火大会が行われており、聖蹟桜ヶ丘花火大会の休止以後、多摩東部に住む人々の憩いの場となっています。

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※調布市花火大会(映画の町調布花火HP)

 続いて調布市の東に位置する狛江市ですが、こちらは面積が小さく、人口密度が高いことで有名です。世田谷区、そして調布市と街がコナーベーション(※1)で連結しており、街の雰囲気も世田谷に近いため、境界線が分からなくなっています。

※1 異なる都市同士が発展し、住宅などによって市街地が繋がること

 また、小田急小田原線が通っており高架化&複々線化の時には大規模な工事が行われました。固定電話の市外局番は多摩地域の「042」ではなく、東京23区と同じ「03」であり、世田谷区との結び付きの強さが伺えますね。

② 調布市と狛江市の政治

 さて、そんな両市は政治的にはどのような街なのでしょうか。まず調布市ですが、こちらは保革伯仲の街として知られます。衆院選では東京22区に属し、社会党系名家の三代目である、立憲民主党の山花郁夫衆院議員の出生地でもあります。党の現憲法調査会長でもある山花氏は、自民党の伊藤達也氏と長年議席を争ってきました。

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※この地域の「キーマン」山花郁夫議員(立憲民主党公式HP)

 1962年から78年にかけては社会党系の本多嘉一郎市長が誕生、その後は1986年~2002年にかけて保守系の吉尾勝征氏が市長を務めました。現在は野党の支援でその吉尾氏を2002年に破った長友貴樹氏が市長を務めています。民主党系が強い地域で、現在立憲民主党市議は社民党からの合流者を含めても3名しかいませんが、民主党系の無所属が3名、元民主党の都F議員が1名います。

 続いて狛江市ですが、こちらも衆院選では東京22区に属します。狛江市では1996年に現職の石井市長がカジノでの賭博で莫大な借金を抱えて辞職する事件が発生し、これを機に1996年から2012年まで共産党の市議であった矢野裕氏が市政を4期担いました。

 どうやらこの時期は、共産党が与党、民主党(+連合東京)と生活者ネットが完全なる野党、自民党が野党ながらも妥協しながら市政を進めるという、一見何が何だか分からない状況になっていたようです。現在の比例票や市議選の結果にもその影響が見られ、共産党の強い自治体となっています。

 その矢野市長の退任後、市政野党各党(自民・民主・生活者ネット・公明)は、協力して相乗り候補として高橋都彦氏を擁立して矢野市長の後継候補を破り、相乗り市政となりました。2016年の市長選でもこの枠組みは維持され、自/民/公/ネの推薦を受けた高橋市長は社/共/緑推薦の候補を破り再選しています。

 しかし、2018年に高橋市長のセクハラ問題が発覚し、高橋氏は辞職。驚くべきことに狛江市はまたも市長のスキャンダルに見舞われることになりました。また高橋氏の辞職で行われた2018年市長選では、生活者ネットが自公との相乗りを解消。党として共産系の田中智子氏を支援しました。また、この時生活者ネット出身で立憲民主党の大河原雅子衆院議員も田中氏の支援に回っています。

 現在でも狛江市議選の共産党候補は全員矢野元市長の推薦を受けている一方、自公等の市政与党派議員も現職の松原市長から推薦を得ており、狛江市を舞台に20年以上繰り広げられてきた、スキャンダルの爪痕としての党派抗争の歴史が浮かび上がります。

③ 北多摩第三選挙区の選挙史

 北多摩第三選挙区の歴史については、やはり現在の北多摩第三選挙区の構図の基礎が成立した2005年都議選から見ていくのが1番良いでしょう。永田町で郵政民営化法案が紛糾していたまさにその時、都議選の投開票が行われていました。この都議選で民主党は議席を伸ばし都議会第2党になります。

✅ 2005年都議選 選挙結果

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 この時、定数2の北多摩第三選挙区から民主党公認、生活者ネット推薦で出馬し当選したのが、山花郁夫氏の秘書を務めてきた尾崎大介氏でした。彼は調布市で狛江市より強く、同じく調布市を地盤とする自民党の遠藤衛氏と拮抗していました。また、この時共産候補だったのが1997年の都議選で当選、2001年に落選していた狛江市を地盤とする元職の田中智子氏です。

 調布では民主尾崎氏が自民遠藤氏を上回る一方、狛江では尾崎、遠藤、共産田中の3氏が拮抗しています。

✅ 2009年都議選 選挙結果

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✅ 2013年都議選 選挙結果

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 2009年の都議選では、尾崎氏が民主旋風に乗って圧倒的な差でトップ当選しています。2013年では遠藤氏が引退。自民党候補が狛江市議を務めた栗山欽行氏に代わりました。2013年都議選時には民主党に大きな逆風が拭きましたが、尾崎氏は栗山氏に大きな差を付けられることはなく、議席を守りました。また、田中智子氏が狛江市議に転身、無風区となった為、共産は得票数を大きく減退させています。

✅ 2017年都議選 選挙結果

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 2017年の都議選では、民主党から民進党に参加していた尾崎氏が党を離れ、小池氏率いる都民ファーストの会の推薦を受け、トップ当選を飾っています(選挙後に都民ファが事後公認(※2))。
※2 政党が選挙時に無所属として届け出た当選者に対して、選挙後に公認を出すこと

 また、この選挙で定数が2から3に増加し、創価学会を母体とする公明党候補の進出を受けました。公明党候補として世田谷区から移ってきた中島義雄氏は、地元出身でないことは何の関係もないかのように2位当選しています。流石の強さですね。

 更に、2017年都議選では共産の井樋正利氏が自民の栗山氏を僅差で制して当選。自民候補の落選には多くの人々に衝撃を与えました。この後、栗山氏は事実上政界を引退しています。しかし、その井樋都議は大学生の息子が強制わいせつ容疑で逮捕されたことを受け辞職。2020年の都知事選に便乗する形での補欠選挙を招きました。

2020年都議補選 選挙結果

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 この都議補選では、自民が調布市議の新人林明裕氏、生活者ネットワークが同じく調布市議のドゥマンジュ恭子氏、共産党が2005年都議選の落選後に狛江市議を務めていた田中智子氏を擁立しました。結果、ネット・共産両候補の総得票は74,641票と自民の65,079票を上回りますが、票が二分し自民の林氏が当選しています。

 なお、この時与野党は共に参院選での得票数を大きく上回っています。これは都知事選の同日選挙で投票率が上昇した反面、癒党(主に維新)が候補者を擁立していなかったため、癒党票が両勢力に分散したからであろうと推測されます。

④ 立候補者5名の紹介(五十音順)

 続いて、今回の都議選に出馬している5名の候補を紹介していきます。恣意性を除外するため、候補者は名前の五十音順に紹介していますので、あしからず。

【都民】尾崎大介(現職4期) 地盤:調布市
 東京都生まれ、日大農獣医学部卒。測量会社に務めた後、民主党の山花郁夫氏の公設秘書となり、2005年都議選に出馬、当選。振り子現象によって長く議員を務めるのが難しいとされる都議会において、2009年、2013年、2017年と議席を守り続けた強者です。2017年には民進党を離党して都民ファーストの会系候補としてトップ当選。2017年8月から2019年9月までの間、都議会議長を務めました。また、狛江調布両市の商工会の顧問でもあります。

【立憲】加藤良哉(新人) 地盤:調布市?
 愛知県生まれ、立命国際卒。日本生活協同組合連合会に勤めた後に山花郁夫衆院議員の公設秘書となりました。立命館大学は山花氏の母校でもあり、その縁もあったのかもしれません。支持層の被る尾崎氏とは山花氏の元秘書同士での対決であり、更に尾崎氏の初出馬は31歳、今回初出馬予定の加藤氏は都議選後の7月27日に31歳になる為、一種の因縁のようなものを感じます。

【共産】田中智子(元職1期) 地盤:狛江市
 
山形県生まれ、國學院文卒。部落解放運動に興味を持ったことから共産党に入り、1997年の都議選に出馬し、民主党候補を破って当選しました。2001年、2005年の都議選で連敗した後、狛江市議を4期務めています。狛江市の高橋前市長がセクハラによって辞職したことにより行われた2018年の狛江市長選に出馬しましたが敗れました。2020年の都議補選でも当選はならず、今年の都議選はリベンジとなります。

【公明】中島義雄(現職6期) 地盤:世田谷区(選挙区外)
 
群馬県伊勢崎市出身、都立大経済卒。大学で出会った女性と学生結婚しています。卒業後は公明新聞社で働き、37歳で世田谷区議選に出馬し当選し、3期務めました。その後世田谷区から都議選に立候補して当選を続け、2017年都議選で定数の増えた北多摩第三に国替えして2位当選しています。

【自民】林明裕(現職1期) 地盤:調布市
 熊本県熊本市生まれ、明星大卒。調布市で保険代理店を経営し、1995年以降、調布市議を連続6期務め、現在は市商工会理事でもあります。市議時代に議長も経験し、これは都市部あるあるですが、自民党の公認を受けるようになった2011年以降は上位当選しています。2020年の都議補選に栗山氏の後継という立場で出馬し、自公の国政選挙における基礎票を上回って当選しました。

 ここまでが無料部分となります。得票数や情勢予測はもちろん、票分析やグラフ、市議会の構成も掲載していますので、選挙予測やその根拠、地域の詳細が知りたい方は是非ご購入頂けると嬉しいです。

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