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『もう生まれたくない』長嶋有

JULY 15, 2018 Instagram掲載

「わたしはなんでこれを読んでるんだ?」と途中で思った。

死んでしまった二人のメンバーから思い出されるX JAPANのセガサターンゲームや、レンタルビデオ屋のバックヤードで話される、クレヨンしんちゃんの作者やZARDのボーカルの死に方、落とし穴でサプライズをするはずが死んでしまった夫婦などを様々な人々が話題にする。

一人称となる人が次々と変わっていく。大学生、非常勤の講師、掃除のおばさん、事務の人。どの人も現実とはちょっと距離を置いて「なんとなく」生きているような感じ。訃報も他人事で、ゴシップのネタが一つ増えたに過ぎない。『宇宙兄弟』の登場人物が一生懸命生きているのとは正反対。だから登場人物に感情移入ができないし、お話もストーリーの流れが見えないから、読んでいる途中に「なんでこの本を読んでるのかな、なんのために?」と思ったのだ。

最後まで読むと、この本にある共通点があることがわかる。有名人の死が、ゴシップに取り上げられた死が、大体において他人事であること、それでも同時代を生きる人たちの共有事項になる。

読み終わって「そうっすねー」と言うしかなくて、独特の距離感と冷めた感じが残る。きっとYahooのトップニュースや携帯のニュースアプリとかで有名な人が亡くなったり、話題の事件が起こったら、この本を思い出すのだろう。

表紙も、テープカッターやハッピーターンと言った極めてありふれたものがとっても上手に(私の表現力乏しいな)描いてある。よくあるニュースの訃報と、それを見る人たちのシチュエーションをとても上手に(再)書いている。それで読者に何か思わせるって、ファインアートみたいだな。

36. 『もう生まれたくない』長嶋有

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