『シモネッタの本能三昧イタリア紀行』 田丸公美子
私もイタリアには行ったけど、田丸さんのイタリアはもっと深くて、温かくて人懐こくて、お茶目で、色っぽい。彼女がイタリアと相性抜群で、そんな素敵なところを引き出せる人だから。
私の好きな米原万里のエッセイに、ダジャレと下ネタが得意な「シモネッタ」として登場するイタリア語通訳の田丸公美子さん。彼女による個性豊かなイタリア各地とそこを彩るイタリア人たちについてのエッセイ。口説かれればうざいし、口説かれなければムカつくし、というイタリア男とのエピソードや、イタリア人のエロ武勇伝、愛すべき人々、そして美味しいもののお話。
この人、本当にイタリアに合っているんだと思う。イタリアから車で地続きのスイスに行ったときの憤慨っぷりが面白い。イタリアならどんな安レストランでもテーブルにクロスがひいてあるのに!正装をしているのに普通と変わらないチーズフォンデュと食べるなんて!と怒っていた。こんなに人間味あふれるイタリア話を持っているのは彼女ならでは。恋煩いの田丸さんを元気づけようと、花束を持った友人のイタリア人男性二人が彼女にひざまずいて「女神様、どちらかをお選びください」と言った時のこと。田丸さんの返しはこうだ。「両方引き受けよう。あなたは月水金、あなたは火木土」なんて気の利いた返し!チャーミング!
田丸さんを調べていたら、息子を開成→東大→弁護士に仕上げた子育てエッセイを出されているそう。タイトルは『シモネッタのドラゴン姥桜』。大好きだわ、そのセンス。
84 シモネッタの本能三昧イタリア紀行
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