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『3月のライオン』 1-15 羽海野チカ

羽海野チカさんと同じ時代に生きられてよかった。連載と同じタイミングに生きられてよかった。15巻の発売をきっかけに読み始めたので、それには間に合わなかったけれど、16巻からは発売のワクワクを他の読者と一緒に味わうことができる。それってとても幸せなことだ。

私はマンガサイト『アル』ライターをしており、15巻の新刊発売を記事にした。前から気になっていたし、記事として書かせてもらったのに読まないのも何だか、と思い一気読みをした。家族や夢を失った少年、零が居場所を作るために将棋を指し、人と出会い成長していくお話。素晴らしかった。

読んでいてヒシヒシと感じるのは羽海野さんの愛情。一人ひとりのキャラクターを本当に愛しているのがよくわかる。彼ら一人ひとりに自分らしく成長してほしい。成長してほしいからこそ、人との繋がりを深めてほしいからこそ、「あなたならできるでしょ」と苦難をもたらす。それは日本でも数少ないプロ棋士にも、全国にごまんといる女子中学生にも等しくもたらされる。そして、彼らは必死に、ギリギリで、自分の持ち場で力を発揮する。

私は、マンガを読む前にこのコマを見ていて「なぜこんなにモブっぽい人が熱いセリフを話しているんだろう?」と思っていた。今思うと本当に失礼すぎて恥ずかしい。このストレスがたまると髪が抜けていく島田さんは人望厚く本当にかっこいい男だったのだ。好き…でも好きになると辛い人…。

天才棋士、年老いた棋士、子育て棋士、病弱棋士、気持ち悪い棋士、主人公を気に掛ける高校の先生、妹たちを世話するおねいちゃん、飼い猫、全てのキャラクターが存分に生きている。実際の人生もそうだけれど、有名だから、難しい職業だから、かっこ良くて貴重な人間なのではない。自分の持ち場で存分に生きている人こそが熱くてかっこいい。

最新刊の15巻では主人公 零が「失いたくないものを持ってしまった」弱さに気付き始める。そして先生が彼について致命的なことに気づく。どうしたら実体を掴めないようなこんなに深いことに気付き、言葉に、絵にできるのだろう。マンガとして表現できるんだろう。

登場人物の一人ひとりが息づいていて、そして関わり紡ぎ出していくストーリー。いつの間にか、羽海野先生のように登場人物をたまらなく好きになって応援してしまう作品。

324-338.『3月のライオン』 1-15 羽海野チカ

2020年読んだ本(更新中)
2020年読んだマンガ(更新中)

#3月のライオン #羽海野チカ #将棋 #マンガ #読書 #本 #読書感想文

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