『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』橘玲
「10の『いいね!』を見るだけで同僚よりも相手のことがよくわかるようになり、70の『いいね!』で友人のレベルを超え、150の『いいね!』で両親、250の『いいね!』で配偶者のレベルに達する」
私の購買情報、行動履歴が読み取られ分析されマーケティングに活用されているのは知っているが、普段何気なくしているSNSの『いいね!』でここまで私のスピリチュアル(無意識/魂)が特定でき、利用できるとは想像以上だった。
協力者にFacebook内のあるアプリをインストールしてもらい、本人およびその友人のFacebookデータを取得・分析し、彼らのパーソナリティを分類する。それらの分類にあった広告を表示することで相手を意図した方向に行動させることができる。
当選しないと思われていたトランプが大統領になり、イギリスがEUを離脱した。これらにはデータマイニングをベースにした選挙コンサルティング会社「ケンブリッジ・アナリティカ」が関わっていたとされ、その会社は内部告発を受け、またプライバシーや情報操作の疑念により、業務を停止した。
この「ケンブリッジ・アナリティカ」が使っていたのがSNSと「ビッグファイブ」というパーソナリティ5要素である。
本書では、上記の経緯や「外交的/内向的」「共感性」「堅実性」といったビッグファイブそれぞれの要素と成り立ち、組合せなどを解説する。
読みながら「私は『同調性』が低い…」など自分や周りの人を当てはめて読んでいくとおもしろい。
私は自分が好きではなかったから、さんざん自己啓発やスピリチュアル(本書のタイトルではなく霊的な)に傾倒して自分を変えようとしてきたけれど、40代に近づくにつれ「結局自分は変えられない」と思わざるを得なくなり、いやいやながら自分を受け入れるようになってきたら、人生が楽になってきた。
この「ビッグファイブ」の各要素は遺伝も関係しかなり固定していて後天的には変えにくいという。ではどのようにしたら人生で「成功」できるのか。著者によると「自分のパーソナリティを前提にして、それがアドバンテージをもつ場所(ニッチ)を探す」ことだそう。自分の経験と照らし合わせても、納得感しかない。
自己分析なんかしなくても、自分を受け入れて幸せに暮らしている人には本書は不要。(ケンブリッジアナリティカのように)自分が意図するように人を動かすことに興味があったり、自分を知りたい人には非常に面白い本。
『スピリチュアルズ 「わたし」の謎』橘玲
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