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クラス替えの舞台裏・担任の決め方を元教師が解説します

皆さん、日々のお仕事、お疲れ様です!
そして、記事を開いてくださってありがとうございます。
共育LIBRARYというブログを運営しているりょーやん、元教師です。

新学期。学年が上がると共に待っているのはクラス替え。

「仲の良い友達とは一緒になることはできかなぁ・・・」「苦手なあの子とは別のクラスであってほしい・・・」「担任の先生は誰かな?」など、様々なことを考えた経験のある方、もしくはお子さんがそのように考えている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

お母さん、お父さんも我が子を見守る立場としては、どんなクラスになるのかは、きっと気になるところでしょう。

クラス替えは、全ての学年に適応されるルールがあります。そして、そのルールに加えて、子ども側の都合と教師側の都合など様々な要素を混ぜ合わせて決めているのが現実です。

筆者は10年間教員をしていたため、何度も「学級編成」、いわゆるクラス替えには立ち会っています。

この記事では、どのようにクラス替えが決められているのか、その裏側を公開していきます。

クラス替えのやり方が分かれば、「本当に平等に決めているの?」「苦手な子と別のクラスにしてほしいというお願いは通るの?」といった疑問が解消できるのではないかと思うので、是非、最後まで読んでくださるとうれしいです。



クラス替えの方法とクラスを見る観点

ここからは、どのようにクラス替えをするのか、その流れを説明していきます。

まずは「クラスの振り分け」を行い、そしてメンバーを見て調整をします。調整をする観点は「配慮を要する児童」「学力」「人間関係」「リーダー・行事」です。一つずつ解説していきます。


🟧クラスの振り分け

クラス替えは1年の終わりに行います。1年の終わりですから、3学期までの成績が出ている状態です。

日本の学校では、1年間の成績を「評定」という形で1~3のように3段階で評価をし、保存しておかなければならないことが法律で定められています。この評定がクラス替えのときに必要になるのです。

例えば、国語の「知識・技能」の成績が1学期は「◎」、2学期は「○」、3学期は「◎」であったとします。

この場合、◎が3点、○が2点、△が1点のように点数が割り振られ、合計で8点以上は「3」、5点以上8点未満は「2」、4点以下は「1」のように、評定を決める基準を定めることになります。

学年末には、その全ての教科の評定が決まるため、1年間の合計値を数値で表すことができるようになります。

その中でもクラス替えに使われるのが、「国語」「算数」「理科」「社会」「英語」の数値です。クラスの中で、男女別に合計点が高い子どもから番号が割り振られます。

その上で、どのクラスの順位も平均すると同じになるように割り振っていくのです。

3クラスに分ける場合を例として説明します。

❶元4年1組→Aクラスに1番、Bクラスに2番、Cクラスに3番・・・
❷元4年2組→Bクラスに1番、Cクラスに2番・3番、Bクラスに4番、Aクラスに5番・・・
❸元4年3組→Cクラスに1番、Bクラスに2番、Aクラスに3番、4番、Bクラスに5番・・・

これでまず、ザっと平均になるように割り振ってみるのです。そこから観点別に見て、メンバーを入れ替えていくことになります。


🟧配慮を要する児童

「どちらのクラスを受け持ちたいですか?」

前年度担任していた教員や第3者に聞いて、「どちらのクラスでもいいなぁ~」という声があがることが、理想的な学級編成です。そのためには、まず「配慮を要する児童」のバランスを真っ先に考えなくてはいけません。

「配慮を要する児童」とは、発達の特性に偏りがあり、授業や集団生活に困難を抱えがちな子どものことを言います。

ADHD(注意欠如多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、LD(限局性学習症)といった発達障害の子どももこれに該当します。

発達障害という診断名がはっきりついている子どももそうですが、「グレーゾーン」と言われる、診断名はないがおそらくそのような特性があるであろう児童も、配慮を要する児童に当てはめて編成を行うことが多いです。

ADHDの多動性や衝動性が高い子どもを1つのクラスに集中してしまうと、どうしても騒がしいクラスになってしまいがちです。

勢いがあるのはよいことなのですが、聴覚過敏などの大きな音に情緒の乱れを抱く子どもにとっては、あまり心地よい環境とは言えません。

ASDは周囲を巻き込まず、ソロで「これはできない・やらない」といったことに対し、こだわりを持つこともあります。

集団行事に参加するために、工夫が必要になるときもあるでしょう。そのような1年間のイメージを様々想像しながらバランスを調整するのです。

また、心理的にダメージを負いやすいタイプの子どもも、バランスよく分ける必要があります。

不登校の子ども。精神的に疲れやすく休みがちになってしまう子ども。人間関係に不安を抱えやすい子ども。場面緘黙の子どもなどです。

心理面に不安を抱えやすい子どもの心のケアは、家庭とつながることが必須です。なので、保護者と連絡を取り合う頻度が高くなります。そのような要素も含めて調整をするのです。

他にも、愛着障害や軽度知的障害の子どもがいることもあります。さらに肢体不自由、アレルギー対応、持病などの面からも調整を加えます。


🟧学力

配慮を要する児童をある程度バランスよく調整したら、次は学力です。

配慮を要する児童の観点ではLD(限局性学習症)のことを述べました。それはあくまで「全ての教科で支援が必要なLD」のレベルに関してのみです。

LDには幾つか種類があります。ディスレクシア(読字障害)ディスグラフィア(書字障害)ディスカリキュア(算数障害)などです。

他の教科はできるのに算数だけできない。話す活動は論理的で非常に多弁、且つ、頭の回転も速いのに文字を読むことができない、などです。

こういった子どもは、経験上1つのクラスに10~20%います。それに加えて目の動かし方などの視機能・視知覚認知の問題をもっている子どももいます。

ADHD、ASDなどの目立つ特性の調整が最優先になり、気が付くと、一方のクラスだけ学習支援が必要な子どもが集まっているということが往々にして起こります。

教師の支援がなければ、なかなか学習に取り組むことができない子どもが5人いると、毎回の授業準備の負荷がかなり重くなります。

8人いると相当な腕のある教師しか、授業を進行すること自体が難しくなってしまうでしょう。

だからこそ、「このクラスでもし算数・国語の授業を行うなら・・・」という視点で構成するメンバーを見て、微調整を行います。

クラスの雰囲気というものは、思っている以上に大きな影響力をもっています。7割~8割の子どもが「できそうだ」という感覚ならば、授業を覆う空気は軽やかになり、支援を要する子どもも、楽し気な様子で学習に取り組むことができます。

逆に、4割~5割が「むずかしい」と感じている授業では、活発さが見られず、学習意欲そのものが縮小しがちになります。だからこそ、学力のバランスも調整することがとても大事になってきます。


🟧人間関係

1年間も同じクラスで過ごせば、様々な人間関係のトラブルが起こります。大抵の問題は乗り越えていくことができるのですが、中にはどうしても相反してしまう人間関係も生まれてきます。

特に、自己肯定感の低い子どもは、低い子ども同士で集まるので、トラブルを起こしがちです。誰かを仲間外れにしたり、友達の陰口を言ったり、下に見るような態度をとったり・・・。

そのような調整する必要がある人間関係は、担任の先生がメモを取っている可能性が高いです。

また、個人懇談会などで、保護者の方と友達関係について話をすることがよくあります。「どうしてもうまくいかない友達がいる」という相談事があった場合、そのことをメモしておいて、学級編成の参考資料にすることが多いです。

学級編成を行うときには、編成カードのようなものを作ります。そのカードには、1年生のときから引き継ぐ必要がある情報がまとめられています。そのカードに今年度の情報を追記し、内容を照らし合わせて人間関係を調整していくのです。

ただ、保護者の意見を全て鵜呑みにすることはできません。もし、「○○ちゃんと離してほしい」という意見が6人、7人もの親から出ていた場合、全員の望みを叶えることは物理的に不可能になってしまうからです。

だからこそ、担任や前年度の担任、クラスにサポートで入ってもらっている先生などの複数の視点で、人間関係が円滑にいきそうかを判断していきます。

人間関係の引継ぎは毎年追記されていくので、高学年になればなるほど編成が難しくなってしまうのですが・・・


🟧リーダー・行事

最後は「リーダー・行事」といった観点です。

学校には運動会、作品展、学習発表会などの様々な行事があります。どちらか一方のクラスにだけリーダーシップを取る力が高い子どもが固まっていれば、行事で一方のクラスだけ活躍してしまうことになります。これは運動能力や絵画力も同様です。

クラスメイトから信頼され、代表委員、学級委員といった仕事をこなすことができるメンバーがいなければ、学級運営を円滑に進めるスピードや質に大きな差が生まれてしまいます。運動能力や絵画力などは、おまけの視点程度だと思ってください。

この「リーダー・行事」という視点と「配慮を要する児童」「学力」「人間関係」の3つの視点の優先度は、差異があると捉えてもらってよいと思います。やはり最初にあげたの3つの視点こそが最優先事項です。


担任の先生の決め方

学級編成が終わると、新年度の担任の割り振りを考え始めます。しかし、これは校長、教頭、教務(校務)が内密に話を進めることなので、担任たちは4月1日になるまで知らされない場合がほとんどです。

年度末・年度始めで異動をする先生もいます。まだメンバーが揃っていない状態で、中途半端な情報を伝えるのは、やはり避けたいのでしょう。

どのような基準で担任を決めるのかは、その学校の校長、教頭、教務(校務)次第です。ただ一般的な傾向は共通しているところがあります。

まず、低学年。低学年は5時間授業が多いです。その分、事務作業ができる時間が相対的にほんの少し多くなります。

だからこそ、小さい子どもがいるママさん先生が低学年を担任することが多いです。幼稚園に送り迎えにいく必要があるため、早めに退勤できるようにという配慮のもとです。

また、6年生の担任は、その学年を一度受け持ったことがある人が、最低でも1人はいる割り振りになることも多いと思います。

新年度に、いきなりやって来た先生に、色々なことを指示されると反発してしまう傾向が、高学年であるほど存在します。

学年に1人でも、子どもたちと既に信頼関係を結んでいる教員がいれば、間に入って、様々なことを伝えやすくなるのです。

また、5・6年生は宿泊を伴う行事があるので、女性の先生を学年で1人は入れておく学校も多いと思います。

ただ、人手不足で、どうしても厳しい状況である場合は、養護(保健の先生)が対応してくださるので大丈夫です。

後は、全体のバランスを見て、先生方の経験年数や得意分野を生かす場を考え、調整し、割り振るということになります。

「この子どもたちは元気が良すぎる・・・!」という学年の場合は、男性の教員が学年で1人は入るようにしたり、1年生担任はベテランの先生が1人はいるようにしたり、と言った具合です。

「○○先生がいいです!」と保護者から言われても、そこまでの調整をすることは難しいのが現実だと思います。


まとめ

保護者の意見をクラス替えに反映できるかと問われれば、「内容次第」と答えるのが正直なところです。

本当に保護者や子どもが困っている内容であれば、少なからずクラス替えに反映される可能性は高いです。

幾つものお願いや要求をしてしまうと、「あの保護者はお願いすれば何でも通ると思っているのではないか。」と警戒されてしまい、逆に本当に困っていることが反映されないこともあり得ます。

お子さんや周囲の子どものことを思いやった真摯な相談や悩みなら、きっと伝わるはずです。

そして、家庭では「どのようなクラスになっても、あなたなら解決していける力がある。」と子どもを信じる言葉掛けをしてあげることが、1番の特効薬になるはずです。その上で注意深く様子を観察しながら、細かく声掛けをし、寄り添っていくことが大切だと思います。

もし、本当に困っている・悩んでいることがあるならば、個人懇談などで担任の先生に伝えることは不自然なことではありませんので、お子さんのために、勇気を出してみてください。

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