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連載|第一章 頑張ること自体に美徳を感じていないか?(其の二)



06 あれこれ心配していないか?

完璧主義の人は、未来についてあれこれ心配している。
上手に力を抜く人は、今に集中している。

あなたは、一つの作業をしていても、突然他のことが気になってしまい、つい別のことにあれこれと手をつけて、非効率になってしまうことはないでしょうか?

完璧主義の人は、心配性の傾向があるので、「何か忘れていないか?」「大丈夫か?」と、あれこれ心配してしまいます。

私も以前は特にそうでした。(実に今も…)

資料作成をしていても、途中でメールの返信をしたり、漏れていた電話連絡をしたりしていました。

このようにマルチタスク(multitasking;同時併行で着手)で仕事をしていると、仕事を切り替えるたびに頭のギアチェンジをたくさんする必要があります。

そのため、集中力は散漫になってヘトヘトになり、結果、やりかけの仕事ばかりがたくさん残ってしまいます。

一方、上手に力を抜く人は、シングルタスク(singletask)で一つのことに集中します。

一つの作業をし始めたら、横槍が入ってきても、「今、手が放せないから」と伝えて後に回し、緊急なら受けて、「返事は午後に返すね」と最優先の仕事を完了させることに集中するのです。

集中して一つずつ終わらせることで、余計なギアチェンジが必要なくなり、着実に仕事をこなしていくことができます。


集中の良い働き方はシングルタスク

仕事のギアを変えると、基本的に気持ちとモードの立ち上げに時間がかかり、エネルギーを消耗します。起動に乗るまでの時間もかかるので効率も悪くなります。

効率化のためには、シングルタスクで一つの仕事に集中することがポイントです。

完璧主義の人は、できなかったらどうしようという心配と不安を常に抱えています。

「Aの仕事は間に合うだろうか」「Bの仕事は本当に決裁がうまく通るだろうか」といつも心配が頭をもたげます。

何となく不安なことや、想定しきれていない事態へのおそれが奥に潜んでいて、それが起きたらどうしようと恐れるのです。

もし重要な仕事の途中で他の心配事が頭に浮かんだ時は、いったん紙に書いて脇においておくといいでしょう。書くだけで不安が解消しない場合、「何をする必要があるのか」「いつから手をつけるのか」まで書いておくと安心して手放せます。


07 雑用も全力でこなしていないか?

完璧主義の人は、雑用も全力でこなす。
上手に力を抜く人は、雑用を省エネで行う工夫をする。

組織の中で責任あるポジションになれば、その分、仕事は増えます。

効率的に仕事を終えるには、雑用と重要な仕事とでメリハリをつけなければなりません。

しかし、完璧主義の人は、雑用でも上手に力を抜くことができません。

もちろん、力を抜くといってもいい加減にするというわけではなく、時間とエネルギーの配分の問題です。

メールの返信でも、社内、社外問わず、丁寧すぎるメールを送ったり、報告書の誤字チェックを過剰に繰り返すなど、無意識にミスの回避を目指すのです。

一方、上手に力を抜く人は、雑用を省エネで済ませる工夫をして、時間をかけないようにします。

銀行員の友人から聞いたエピソードを例に挙げます。

銀行の事務処理は、ちょっとした雑用の手続きであっても、ミスをすると問題になることが多く、だからこそ事務員は、緊張とプレッシャーを感じながら取り組んでいます。

そんな中で、絶対にミスをしない、それでいながら省エネで業務処理をしている優秀な事務員がいます。

その人に工夫のコツを聞いたところ、次のように秘訣を語ってくれたそうです。

「ミスをする箇所はだいたい決まっているし、間違ったらまずいところも決まっているので、そこを重点的にチェックするようにしているよ、

あと、過去のうまくいった例を参考にしながら、個別性の高い箇所だけを修正するようにしているんだ。

そうすると、テックすべきところが少ないから、楽にできるよ。」

省エネで仕事をこなすからといってミスをするわけではないのです。やはり、力の入れどころと抜きどころを知っていることが大切だと言えるでしょう。


毎回同じ労力でやるのは工夫がない

雑用にかける時間を少なくするには、スピードアップとやり方の工夫が不可欠です。

まず、一時間かかった作業を50分で終わらせてみましょう。その上で、省エネで効率的にできる方法を一度落ち着いて考えてみてください。

同じ雑用を同じやり方と同じ効率で繰り返していては、他の大切な仕事に使う時間を捻出できません。


09 まとまった時間で仕事していないか?

完璧主義の人は、まとまった時間で仕事をする。
上手に力を抜く人は、スキマ時間で細切れ仕事をする。

あなたのTo-Do-Listに、次のようなタスクがあったとしましょう。前提条件として、9-18時までの間に、2社へ訪問をする営業を想定しています。

  • 顧客A社へ訪問日程の調整電話

  • 上司への商談報告

  • 日報の作成

  • B社への提案書作成

  • メールの返信作業(20件)

あなたなら、どのように仕事を処理していきますか?

この中で、スキマ時間にできそうなことは、電話とメール返信です。

完璧主義の人の場合、そのほかの考える仕事はきちんと腰を据えて取り組もうと、オフィスでまとめて手を付けようとしがちです。

一方、上手に力を抜く人は、スキマ時間でもっと多くのことを済ませます。

たとえば、上司への報告は、外出先からメールで済ませておき、「詳細は帰って報告します」と打っておけば、報告時間は短くなります。

日報の作成であれば、訪問が終わるごとに追記していって、帰った時には最終チェックをするだけの状態にもできます。

B社への提案書は、

  • 提案のメッセージを考える
    (移動の電車で考える)

  • 提案書の内容を手書きで書く
    (訪問と訪問の合間にカフェで30分集中して考える)

仮にここまで手をつけていれば、帰社後、提案書をEXCELかPowerPointで作成するのみです。残業が少なく、効率がいい人はスキマ時間を上手に活用しているのです。特に外出の多い仕事だと、この差は大きく残業時間に影響してきます。


スキマ時間は意外に多い

私自身が営業パーソンとして反省してみると、スキマ時間は、移動時間、待ち時間を合わせて平均2時間はありました。

もちろん、この2時間は、30分まとまって時間がある場合もあれば、電車で移動中の10分や歩いている5分、車で移動中の20分など様々な場面の細切れ時間を合わせたものです。

だからこそ、オフィスの2時間とは異なり、使い方に工夫が必要と言えます。一緒に考えてみましょう!

最後に上記の例として、スキマ時間を活用するため、私の考えをお伝えしましょう!

  • 上司への商談報告
     → 外出先からメールで済ませる

  • 提案書作成
     → 電車内で提案のメッセージを考える

  • 日報の作成
     → 顧客訪問ごとに追記

  • 顧客A社へ訪問日程の調整電話
     → 移動中に処理

  • メールの返信作業
     → 移動中に処理


10 着手が遅く先延ばししていないか?

完璧主義の人は、着手が遅く先延ばしする。
上手に力を抜く人は、小さく始めてすぐやる。

人は、苦手な仕事や気が重たい重要な仕事は、なるべく手をつけたくないので先延ばしにしているでしょう(はい!そこのあなた!)。この原因は、心理的な負荷が大きくなると、それを避けたくなることにあります。

完璧主義の人は、最初から完璧をイメージして取り組み始めるため、苦手で気が重たい仕事は、なおさら先延ばしにします。

例えば、報告書を作成する時に、完璧主義の人は報告書が完成した状態をイメージします。そうすると、苦手な文章を書く作業、誤字脱字チェック、上司からのダメ出しなど、一気に面倒な手間が想像されるので、やる気が下がるのです。

一方、上手に力を抜く人は、少しずつ積み上げて、最終的に完成させればいいという発想があるので、最初の一歩を小さく始めることで、すぐに着手することができます。

先ほどの例で言えば、まずは報告書のレイアウト作りだけ集中して取り掛かります。

小さく始めると、ストレスは少なく、少しずつ次の工程に進み、いつの間にか終わっていたりします。しかし、止まっていると、どんどん気が重くなり、納期が近づくにつれ、ストレスも大きくなるでしょう。


タスクを細かく分け、5分でいいので手を付ける

すぐやる習慣を身につけるためには、心理的な負荷をいかに下げるかがポイントです。

そのためには、「チャンクダウン(Chunk Down)」と「ベビーステップ(Baby Step)」で始めることが有効的です。

チャンクダウン(Chunk Down)とは行動を小さく分けていくことです。例えば、「報告書を書く」をチャンクダウンしてみましょう。

  1. 過去の報告書資料から良い例を探す

  2. 箇条書きでたたき台をつくる

  3. 先輩に意見をもらう

  4. 本文を書く

  5. 誤字脱字チェックを事務の方にお願いする

  6. 最終チェックする

このように行動を小さくすることで、報告書を書くという大きな仕事のストレスから解放されて着手しやすくなります。

次に、ベビーステップ(Baby Step)です。これはハードルを下げて小さく踏み出すことを、「赤ちゃんの一歩で進む」というように例えた言葉です。例えば、上記の「過去の報告書で良い例を探す」という作業を5分だけやってみるといった具合です。


つづき


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