共同親権の問題について正しく知ってもらいたい弁護士の会

私たちは、離婚・DV・虐待などの家事事件を取り扱っている弁護士です。共同親権をめぐる諸…

共同親権の問題について正しく知ってもらいたい弁護士の会

私たちは、離婚・DV・虐待などの家事事件を取り扱っている弁護士です。共同親権をめぐる諸問題について、現場からかけ離れた議論がなされていることを危惧しています。子どもの安心安全を守りたい。 kyodoshinken.shinpai.bengoshi@gmail.com

最近の記事

岡村晴美 2024年4月3日衆議院法務委員会(民法改正の参考人聴取)ー脚注あり版

 共同親権の問題について正しく知ってもらいたい弁護士の会より、衆議院法務委員会にて参考人となった際の配付資料です。  なお、参考人聴取の書き起こしは、こちらから(七緒さん、ありがとうございます。) https://note.com/nao302198765/n/n507aeef4f576 家族法改正に関する懸念ー家事事件の現場から  名古屋で弁護士をしております岡村晴美と申します。弁護士になって17年目になります。取扱分野は、DV・性虐待・ストーカーの事件が8割、残りの2

    • 共同親権への改正案は問題山積みー参議院で議論すべきこと

      スライドはこちら 非合意強制型共同親権問題 -立法事実はあるのか。合意をすることすら合意できない父母に、親権の共同行使を義務づけて子どものためになる場合があるのかという問題。法改正の根幹に関わるにもかかわらず、衆議院でも明確にならなかった。「監護親(同居親)の養育に対して不安がある時」に、非合意の非監護親(別居親)と親権の共同行使が義務づけられることが子どものためになる場合が全く想定できない。現行法のもとで、親権と監護の分属が認められているが、非合意の場合に強制されることは

      • 現時点での離婚後共同親権の導入には反対ですー誰1人犠牲者を出さないために

         子どもの福祉を考えるからこそ,共同親責任を認める諸外国制度の経験(別居親による監護中に子が殺害されたり,引っ越しも自由にできず監視されているような状況,行ったり来たりすることで負担が大きい,監護親への日常の監護への介入,攻撃が続き,安定的監護に悪影響がある,監護を担っているからと養育費はさらに減らされる等)を先例として,「共同親権」の負の側面,特に子どもの心身の安全・安心と適時適切に必要な事項を決めてそのニーズを満たすことへの支障が出るリスク(監護親の安心と安全を含む)を踏

        • 3/9(土) 札幌弁護士会「離婚後共同親権の問題点を徹底検証 拙速な導入に反対するシンポジウム」基調講演書き起こし

          こちらのシンポの基調講演の書き起こし 資料は、こちらからダウンロードできます。 https://drive.google.com/drive/folders/1TSo2odIfnny2FTFUpwQX9vxB2aaWG7rU  名古屋で弁護士をしております岡村晴美です。司法修習は59期で、17年目の弁護士です。取り扱い分野は、DV・性虐待・ストーカーの事件が8割です。残りの2割は弁護団事件で、職場のパワハラやセクハラ・学校のいじめの事件を担当してきました。これらの事件は、

        岡村晴美 2024年4月3日衆議院法務委員会(民法改正の参考人聴取)ー脚注あり版

          法務省の要綱案の致命的な欠陥について

          現在、公表されている要綱案はこちらから https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00233.html 1 子連れ別居に当たって、DVの証明が必要とされるのみならず、急迫性の証明も必要となること  共同親権に関する規定が、離婚後のみならず、婚姻中の共同親権にも同じように適用される結果、無視されたり、否定されたりする精神的DVや、不機嫌にされることによる性的DVなど、証明が困難なタイプのDVや、夫婦げんかが子どもに対する面前暴力

          共同親権制度に対する深刻な懸念の声を届けても真摯な対応はなく、皆、失望しています。

           共同親権等にならなくても、親であれば、離婚後も、共同で養育をしたら良いのです。共同養育ができるように、婚姻中からきちんと、子の育児にかかわり、子のことであれば夫婦で話し合える最低限の関係性を築けていれば、現行法でも何ら共同養育をすることに問題はないはずです。現に、選択的夫婦別氏制度が進まず事実婚を続けている夫婦・家族は、単独親権ですが、そこには何らの問題もなく、通常の共同養育が行われています。そうした事実をしっかりと認識してください。要は、名前や制度ではなく、本当の意味での

          共同親権制度に対する深刻な懸念の声を届けても真摯な対応はなく、皆、失望しています。

          法務省申入れ「実態を無視して、拙速に共同親権導入を進めないでください。」

           本日付(2024年1月24日付)で、法務省に対して、標記の申入れをいたしましたので、ご報告申し上げます。  私たちは、法制審議会において、共同親権の導入について、実態を無視した議論がなされ、拙速ともいうべきスピードで押し進められようとしていることを強く危惧しています。昨年の8月には、以下の4点を要望する申し入れを行うとともに、現場からの懸念の声をお伝えし、賛同者は375名にのぼりました。  1 合意型共同親権においても、DV・虐待・父母の葛藤が激しいケースが紛れ込む危険が

          法務省申入れ「実態を無視して、拙速に共同親権導入を進めないでください。」

          「ごく普通の離婚」の場合でも共同親権制度の導入は子どものためにならない

           私は、地方都市で長年弁護士として、決して多くではありませんが、離婚事件に携わって参りましたので、意見を申し上げます。  これまで共同親権者の制度導入については、多くの方々が問題点を指摘されておられますが、私が懸念するのは「ごく普通の離婚」の場合です。離婚するということは、すでに元夫婦間の信頼関係は崩壊していると言ってよいと思います。そんな元夫婦に様々な局面で冷静に、子ども最優先で、大局に立って、話し合いをせよ、と言っても、それはかなり難しいでしょう。そして、そうした、とも

          「ごく普通の離婚」の場合でも共同親権制度の導入は子どものためにならない

          法制審議会家族法制部会要綱案に対する8つの懸念

          1  原則共同親権という誤解を招く文案となっている。  要綱案は、民法第818条第3項の規律について、父母が婚姻中であるかどうかを区別せず、「(1)親権は、父母が共同して行う。」と規定し、「一方が行う」場合として、「ア その一方のみが親権者であるとき。」としている(第2・1(1))。部会の審議においては、共同親権も単独親権もいずれも原則ではないという前提で議論がされているが、要綱案の文言を素直に読めば、共同親権が原則であるとの理解が通常であり、誤解を招く文案となっている。こ

          法制審議会家族法制部会要綱案に対する8つの懸念

          共同親権導入のリスクについて

           現在の日本で共同親権制度を導入した場合のリスクについて、実務の観点から法制化が何をもたらすのか考えたい。  一定の信頼関係があり離婚後もコミュニケーションをとることの可能な父母間では共同法制は必要なく、現行でも共同養育が実現できている。共同親権制度の導入は、このような任意の共同養育が不可能な父母間で、共同の強制をもたらす効果をもつものである。  協議離婚の場合には、本来共同できないケースにおいて力関係により共同が強要されるうるし、調停・裁判離婚の場合においては、共同が合意

          法制審議会家族法制部会要綱案について

          金澄道子弁護士より、法制審議会家族法部会の要綱案(部会資料35-1)の問題についてコンパクトにまとめた文章を寄稿していただきましたので、ご紹介します。   法制審議会家族法制部会の部会資料はこちらから   https://www.moj.go.jp/MINJI/shingi04900001_00229.html      *  *  * 法制審家族法制部会要綱案について(親権、監護権、養育費等)1.共同親権では、進学・医療といった子どもの重要な事項について、迅速に決められ

          オーストラリア家族法の2023年改正について

           長谷川京子弁護士より、オーストラリア議会ウェブサイトからダウンロードした改正法Billとその説明文書のうち、離婚後の親責任の共同の推定削除、養育時間の分配の義務的考慮削除、長期的重要事項の決定、日常的事項の決定(以上Schedule1)、子どもの独立弁護士(同4)、離婚後アビューズ防止のための改正(同5)に関わる部分の翻訳の提供を受けました。  オーストラリアの2023年10月の家族法の改正は、大掛かりな改正であり、注目される点は以下のとおりです。 1)別居親の関わりを推

          2023年11月22日 院内集会「これでいいのか共同親権」にて

          パワーポイントはこちらから https://drive.google.com/file/d/1WINnvDMKyJQlcTPH4bP-lgyv_9Jq3Zxb/view?usp=sharing (はじめに)  はじめまして。名古屋で弁護士をしております岡村晴美と申します。今日は、実務家から見た「共同親権」への懸念についてご説明させていただきます。お忙しい中、お集まりいただき、関心をもっていただいたことに感謝しています。どうぞ、よろしくお願いします。  現在、家族法改正の法制

          2023年11月22日 院内集会「これでいいのか共同親権」にて

          親権者になれないと子に会えないという言説が、法的に誤っていること

           「親権者になれないと、子と会うことができなくなるのではないかという不安から、親権争いを熾烈にさせる」という見解がある。しかし、親権と面会は別の問題である。  現行法のもと、親権がなくても子ども中心の面会交流を重ねている家族は少なくない。最たるものが事実婚の家族である。そして、父母が不仲であっても、子どものためになると裁判所が判断すれば、面会交流の審判が下される(民法766条)。その運用は、原則実施論とも呼ばれるほど積極的であり、行き過ぎていたとの反省から、子どもの利益を第一

          親権者になれないと子に会えないという言説が、法的に誤っていること

          監護実績を作るために子連れ別居するという言説について

           単独親権制度だから親権争いが生じ、父母双方が子の親権者になることを希望し対立が生じた場合に、監護実績を作るために子連れ別居すると言われることがある。しかし、子連れ別居の多くのケースで、別居時における監護実績には、圧倒的な格差があり、「監護実績を作る」という目的で主たる監護者が子連れ別居するということは生じえない。  残念ながら、日本における子育ての負担はほとんどの場合母親に偏っている。母親には別居しなくても監護実績があるのだ。また母親の稼得収入は父親に比べて少なく、別居は

          監護実績を作るために子連れ別居するという言説について

          実務家からみた「部会資料30の1・30の2「要綱案取りまとめに向けたたたき台」(1)」のうち、「第2の1」「第2の3」についての疑問と意見

          法制審議会家族法制部会 御中                           2023年10月21日 第1 本意見書の趣旨  私達は、日頃、離婚事件及び子の監護に関する事件を多数、取り扱っている弁護士です。その立場から、第30回部会において提出された「家族法制の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けたたたき台(1)」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00340.html のうち、「第2 親権及び監護権に関する規律」の「1 親

          実務家からみた「部会資料30の1・30の2「要綱案取りまとめに向けたたたき台」(1)」のうち、「第2の1」「第2の3」についての疑問と意見