法務省の要綱案の致命的な欠陥について
現在、公表されている要綱案はこちらから
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00233.html
1 子連れ別居に当たって、DVの証明が必要とされるのみならず、急迫性の証明も必要となること
共同親権に関する規定が、離婚後のみならず、婚姻中の共同親権にも同じように適用される結果、無視されたり、否定されたりする精神的DVや、不機嫌にされることによる性的DVなど、証明が困難なタイプのDVや、夫婦げんかが子どもに対する面前暴力になっているケースにおいて、子連れ別居するに際して証明すべきことが増える運用になる可能性があります。
「急迫」については、説明文書には、「父母の協議や裁判手続を経ていては適時の親権行使をすることができず、その結果として子の利益を害するおそらがある場合」と書かれており、そうであるなら、その文言をそのまま規定することが、条文の意味を明確にあらわすことになります。現在、違法にされていない子連れ別居が違法となるのであれば、現場の助言の萎縮効果も予想されるところ、DV防止法を拡大改正された意味がありません。子連れ別居に関して、現行法の下での運用を変更するものではないということについて、法制審議会で明確にしてもらいたいです。
2 原則共同親権の運用となる可能性があること
現在の要綱案については、産経新聞が、原則共同親権を定めたものであると報道しています。それは、第2の1の定め方が、「親権は、父母が共同して行う。ただし、次に掲げるときは、その一方が行う」として、「 ア その一方のみが親権者であるとき」という定め方をしていることによります。法務省がそういう情報をリークしているなら、ネット上の「誤解」などではなく、原則共同親権がオフィシャルな見解であるということになります。
これまでの審議で、「理念」はかきこまないと確認されてきたと思いますす。要綱案の第2の2のキが、但書ではなく、本文に書き込まれていることから考えれば、法制審議会の方針としては、原則共同親権を定めたものではないという解釈になるはずです。第1の2ような定め方をしたら、共同することが「理念」であると理解され、判断基準にも影響を与えます。
面会交流原則実施論のもと、DVも、虐待も、子の意思も軽視されることになりました。「共同」の理念化は、さらにその傾向を押し進めます。絶対に許されません。
3 共同親権になったら面会交流がフリーパスであるという誤解が根強く広がっていること
親権の共同行使とは何なのか。親権の概念が曖昧なまま、法改正を強行しようとしているため、一般人の感覚として、共同親権制度が導入されれば、好きなときに好きなだけ子どもに会えるという勘違いが助長されています。 世間に勘違いが広がっている以上、それを法制審議会でも確認するべきです。ばかばかしいと思われるかも知れませんが、共同親権になっても、面会交流については、従前の民法766条で子の最善の利益にかなうかたちで決めるのだ」ということを法制審議会で確認するべきだと思います。親権概念を明確にしないままの法改正は、抽象度をたかめて、それぞれがそれぞれの解釈でとらえればよいと丸投げするもので、法務省の責任逃れ以外のなにものでもありません。
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