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No.72 - あなたの仕事は、もうありません。

2024年10月24日(木)、映像機器メーカーの船井電機(大阪府大東市)が倒産する見通しだと報道されました。東京地裁から破産手続き開始決定を受けたと、帝国データバンクが発表しています。

この日、普段通りに会社で働いていた社員たちは、お昼過ぎに突然、社員食堂に集まるように言われ、そこで「会社が倒産すること」を知ります。

そして、「社員全員が今日付けで解雇されること」「明日25日の給料も出ないこと」も。


なにこれ。
怖くないですか??


明日から、もう仕事がないんです。

明日振り込まれるはずだった今月の給料も、1円も出ないんです。



ハロウィンの悪夢にしては、ちょっとやり過ぎです。


怖すぎます。

でもね、この話。実はもっと怖い "裏" があるみたいなんです。


「世界のFUNAI」は、なぜ倒産したのか?


船井電機と言えば、テレビのメーカーです。1961年創業なので、60年以上の歴史を持つ、いわゆる「JTC」です。北米市場でテレビの販売シェアを持っており、世界的に知られるブランドでもあります。

社員の平均勤続年数は20年平均年齢は46歳(2023年10月時点)と老舗メーカーらしい体制で、恐らく大多数の社員は、新卒から長年勤めて来た人たちでしょう。定年退職までずっとここで働く、と信じていた人も多いはずです。

それだけに、ある日突然「あなたの仕事は、もうありません」と告げられるのはキツイものがあります。

平均勤続年数が長い会社なら安定している、とは限りません。

強みのある商材と世界シェアを持っている会社なら潰れない、とは限りません。

日本国内で言うと、ヤマダ電機のプライベートブランドのテレビを製造しているのが船井電機です。
2022年には、Amazon x ヤマダ電機のコラボレーションで Fire TV内蔵の低価格テレビを発売しており、ヤマダ電機の開発担当者はインタビュー記事で「2022年にヤマダで最も売れたテレビ」だと語っています。


Amazonやヤマダ電機のような巨大企業とパートナーシップを組むほどの実力を持つ老舗メーカー・船井電機は、なぜ今回「社員2,000人全員を1日で解雇する」という絶望的な事態に陥ってしまったのでしょうか?


主力のテレビ事業が苦しかったから?

経営状態が悪かったから?

M&Aで社長が交代して混乱したから?


たぶん、違います。


これ、普通の企業倒産じゃないからです。


報道各社の調べでは、24日の社員向け破産説明会で、幹部がこう述べたと言われています。

「いろんな人が会社のお金を抜く行為も起こっていた。それは止めるべきで、伝統ある会社をぐちゃぐちゃなまま閉めてはいけない」
(朝日新聞 10月26日)



" いろんな人が会社のお金を抜く行為も起こっていた。"


なにこれ?
怖くないですか??


「いろんな人」って誰?

なに?? 横領ってこと? 何を言っているの?


過去数年の船井電機を取り巻く状況を紐解いていくと、徐々に見えてくるものがあります。


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