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練習ショートショート お題「階段」
気づくと私の目の前には、幅の広い階段があった。白いコンクリートでできたそれは、真っ青な空へ向かってどこまでも続いていた。階段が示す目的地は、遠く青空の向こうに溶けて消えている。
ふと、自分の姿をよく見ると、真っ白な薄手の着物を羽織っていて、すぐに死装束だとわかる。
そうか、私は死んだのか。
不満はなかった。むしろ生を全うした充足感が確かに私の中にあった。満たされた感覚と共に目の前の階段を見
三年間の断片的な記憶2
小説
兄からお下がりとしてもらったSurfaceのノートパソコンが相棒だった。
銀色に鈍く光るボディに、黒色でパンタグラフ式の叩きやすいキーボード。中学二年の時にもらったそれは、なにせお下がりだから、高校に入るころにはすでに少し傷みかけていた。
キーボードを覆っていた布の隅はめくれかけ、タイピングをしようとしても、ときおり右半分が反応しなくなる。そうなるといつも、キーボードを取り外しタブレ
三年間の断片的な記憶
遠距離通学
登校は太陽が昇る前に始まり、下校は太陽が沈んだ後に終わる。特に冬場。インナーを着て、制服を重ね、アウターをまとった後に、厚手の茶色いコートを羽織る。ネックウォーマーも忘れない。
母親が作ってくれた昨日と変わらない内容の弁当にふたをして小さな黒色のカバンに入れ、さらにそれをリュックに入れる。
解ききっていない数学の課題が挟まったファイルが二つ。物理基礎とコミュニケーション英語の教