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採用市場の振り返りと、2020年の展望


まずは昨年の振り返りから始めたいと思います。
2018年の終わりに、2019年の採用市場の展望についてnoteに書きました。

2018年は、採用広報という言葉を色々な人が使い始め、経営者含め様々なプレイヤーが関心を寄せるようになりました。企業の魅力を伝えようとするコンテンツが乱立するようになりましたが、Facebookのアルゴリズム変更や意志なきコンテンツの大量生成により、従来型の中央集権的な拡散手法に限界が出始めました。

2019年の上期は、この動きをふまえ、より戦略やゴールイメージと連動したコンテンツが増えることが予想されますが、それも飽和化することにより、採用広報は一度臨界点を迎えるでしょう。その後は個の拡散力に目が向くようになりその影響力を増していくことから、企業は実態としての魅力そのものに向き合わないと、その個の力を活用できないと言う危機に陥るでしょう。

この流れから、2019年の下期は企業と個が愛と尊敬でつながっており、個がその関係性をオリジナルなコンテンツとして発信し続けるような会社が採用力を持ち、それができない会社は採用力をじわじわと落としていくでしょう。まさに、エンゲージメントが企業の採用力を決める時代に突入すると私は考えています。

振り返ってみると、採用広報が一度臨界点を迎える、というところまでは感覚通りだったのですが、当初思っていたよりその後の市場の移ろいは遅かったなという感覚でした。そこまで個々人の発信力は目立たなかったですし、エンゲージメントスコアや個々人の発信が採用市場を席巻する、というほどの存在感もありませんでした。もちろん中長期的にはこういう動きにシフトしていくと思いますが、思っていたよりもじっくりと進むのかなという感覚があります。

代わりに、いくつかトレンドの片鱗を感じるような動きがあったので、その話をさせていただきたいと思います。

1.マーケティング手法の「本格的な」導入

Indeedさんがオウンドメディアマーケティングという言葉を確立させにいったり、Wantedlyさんも採用マーケティングという概念を根付かせにいったり、マーケティングを本格的に採用市場にもっていこうとする動きが見受けられたことが特徴的でした。

一方で、本格的にマーケティングを学び、実践してきた方からすると、こうした動きはまだまだ表面をなぞっている段階だ、という声もよく聞いたなと思います。大きな変化が起こる前によくある予兆的な風を感じます。

この流れをふまえ、2020年度は、バズワードとしての採用マーケティングを超えて、本格的なマーケティング手法の導入で成功をおさめる事例が徐々に出てくる年になるのではないでしょうか。

ファネル分析をしっかりと行ったり、候補者の状況に合わせてコンテンツを出していく、といったベーシックなところはやり始めている会社も多くある中で、それをさらに超えて言語化されていないような、顕在化されていないようなインサイトを掴み、潜在層も含め適切なコンテンツやアプローチで成功をおさめるような一歩先をいく事例です。

メドレーとしても勉強し直して、適切に導入していきたいなと考えています。

2.「職種」ではなく「イシュー」で切る募集要項の勃興

ZOZOさんがやり、その後Plaidさんがプレスリリースも始め本格的にリリースしたissue型のアプローチは、2020年いろいろな会社がマネをしていくと思います。

ベンチャーが増え、日々見る募集も増える中で、同じような募集要項を見ることが増えてきています。玄人目には差がはっきり見えてくるのかもしれませんが、素人目にはなかなかその差の質を判別することも難しいでしょう。

リモートや副業のしやすさも影響し、お金が稼ぎやすくなってくる中で、「そこで働く意味」「やりがい」といったものを求める風潮もどんどん増えてきています。

こうした中で、「何をやるのか?」「どんな職種やポジションなのか?」ということよりも、「どんな課題を解くのか?」「それはなぜか?」ということに、よりフォーカスが当たってきています。

Issue型採用は、そうした流れに沿った採用の仕方かなという気がしますね。どういう課題を解くのか?というところから入って、「そのためにこういうことができる人たちでチームを組みたいと思っている」という書き方となり、その募集ページに解くべき課題の詳細がどんどん紐づいていくようなイメージ。

メドレーでもやろうと思ったんですが、大々的にやるまでには至らず(issue型の採用はおそらくスクラム採用と相性がいいと思うのですが、今のメドレーはそうではなく、導入と運用の初期コストが若干高いと判断)、まず僕のチームでFY19下期小さく試していました。「コーポレートブランディング」チームを立ち上げるにあたり、「ディレクター」「デザイナー」「ライター」の3人+加藤でワンチームを組んで取り組むという採用スタイルです。

今メドレーでコーポレートブランディングをやる意義、なぜこの3職種なのかという理由、などをそのチーム採用に紐づけて説明していくようなスタイルで取り組み、一応無事、一旦の充足に至ることができました。

全職種、全チームをいきなりissue型採用にすべて振り返る必要はないと思いますが、特にハイクラス採用やオープン型採用を行っているような会社は、徐々にissue型を併用していくケースが増えていくのではないでしょうか。

3.採用資料を公開する流れ「+α」の加速

これはすでに進みつつある流れですが、いろいろな会社が、採用目的の会社紹介資料をslideshareやコーポレートサイトなどに公開するようになりましたね。

その制作を代行する会社も出てきました。(私も個人で何社かサポートさせていただきました)

SmartHRさんは、採用スライドで応募者が5倍に増えて、会社紹介が数十万回閲覧されたとのこと。こういう流れも順調に加速していくと思いますが、2020年はさらに一歩先として、職種に特化した採用資料を公開する会社が増えてくるだろうと思っています。

採用資料は、実際に作成してみるとわかるのですが、これだけで完結できるものではなく、あくまで導入くらいしか話せないんですよね。なので、作った会社は、これをふまえて、プラス職種の説明をすることになります。

会社説明を体系的にできるようになった先に職種の説明をするのですが、その際に会社説明と同じ粒度や洗練度で語れないという壁に直面する。これを解決するための職種別説明資料というのが増えてくるのではないかと思っています。

メドレーでは、公開はしていないのですが、数年前から採用目的の概要資料に加え職種に特化した採用資料をすでに作成して運用しています。今は面接にいらっしゃった方やエージェントさん向け限定で公開しています。

(↓全体資料、随時ブラッシュアップしている)

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(↓職種別資料、都度必要に応じて作ったが来期はフォーマット統一予定)

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メドレーで現時点で公開していないのは、メドレー自体が他社さんが公開されている採用資料を読み込んでハックしているので、その逆をさせたくないからです。(詳細は割愛)

会社のフェーズによって、とるべき戦略は変わります。メリットとデメリットは常に隣り合わせで存在するので、それらを適切に評価し続け、その時点で適切と考える打ち手をだしていくことが大切だと多います。

メドレーでは2019年度は採用資料の公開に踏み切りませんでしたが、エンジニア・デザイナーなどのクリエイター向けのブックは作りました。採用資料の公開が加速する中で、紙の手触り感で想起いただくことや、面接終了後に持ち帰っていただきパラパラ読んでいただく領域が空いていると感じたからです。

↓第1版

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↓第2版

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入社理由ブログも、採用資料の公開も、採用冊子の作成も、そのすべてが万能薬ではありませんし、他社がやっているから自社もやればよいというものではありません。「その時々の会社のフェーズや時世によって、取る打ち手は変わる」という前提に立って、会社が自分の頭で考え抜いて行動することが大切だと考えています。

4.「働き方の自由」に合わせたマネジメントスキルの重要性向上

採用力、という観点で言うと、この観点は年々避けて通れなくなってきていると感じます。これまでは、時短、リモート、副業といった働き方の自由に対応した制度を整えていることは「プラス要因」として機能していましたが、昨年くらいから対応した制度を整えていないことが「マイナス要因」になるという流れが加速しているように感じます。

これまでは「あったらプラスだな」となっていたものが、今後はどんどん「ないことが致命傷」という風潮になってくる。他の条件はよくても、「働き方が柔軟じゃないからお見送り...」というくらいの要件になってきている。

背景としての社会情勢として、核家族化に伴う子育て負担の母親への集中、都心の保育園の入りづらさ、男女平等やイクメン的な話があり、そこに物理的なインフラとして働き方の自由を認める会社の増加というのが相まっています。一時的な揺り戻しなどはあるかもしれませんが、全体の流れとしては不可逆なように感じます。

もちろんミクロ視点で言うと、「その有無を気にしない人だけ集める」という採用戦略はあっていいと思いますが、マクロ視点で言うとこういう流れは加速していくだろうなと考えています。

こういう流れが進む中で、今後は「時短、リモート、副業」といった多様な働き方が進んでも、適切に成果を出すマネジメント力が重要になっていくと考えています。そして、そういうマネジメント力を組織の知にできた会社は、採用力が引き上がっていくという流れが中期的には進んでいくだろうと考えています。これからマネージャーを目指す方は、こういう視点で自身のスキルを磨いていくと、市場価値が高まっていくと考えています。

5.モチベーションにフォーカス「しない」HR Techの勃興

モチベーションクラウドさんやwevoxさんなど、エンゲージメントスコアを定点的に測定してマネジメントに活用するサービスがここ数年一気に注目を浴びるようになり、多くの会社が導入したことと思います。

多くの会社が効果を実感したことと思いますが、その一方で、アンケートを取ることで従業員が会社に「何かをしてもらう」スタンスになってしまい、導入をやめたという事例もちらほら出ていました。

アンケート形式ではなく、slackなどのコミュニケーションツールにAIを掛け合わせて退職リスクを未然に防ぐモニタリングサービスなども生まれてくる中で、今後はそういったサービスの勃興や活用が進んでいくのではないかなと思っています。

もちろん来年爆発的に普及すると言う話ではなく、採用市場におけるトレンドとして、徐々にそういう活用事例がでてくるだろうなというレベルの話です。

また、こういったモチベーションやエンゲージメントにフォーカスしないHR Techをいかに正しく活用できるか、ということは、意外にあまり注目されていない分野で、今後は採用力にとっても重要性が高まっていくと考えています。

Xテック 2020 アクセンチュア編 では、12の分野でXTech領域の解説を行っていますが、その3つ目がHRTechです。ここでの整理としては、

組織マネジメント
コミュニケーションツールや従業員サーベイを通じて得られた従業員のエンゲージメントや働き方に関するデータを活用し、組織全体のパフォーマンス向上や活性化を支援
タレントマネジメント
従業員の属性情報、異動履歴、評価、業務適性などの情報を一元管理し、人材の質・量の把握および採用・育成・活用などの業務効率化・高度化を支援
労務管理
勤怠、給与計算、保険手続きなど従業員が働くために必要な環境整備・事務手続きに必要なデータを管理し、業務の運営効率化を支援

という3つの領域に分けています。

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タレントマネジメント領域は市場規模としては大きいながらも、まだまだ痒いところに手が届くサービスだったり、それらを使いこなして採用力を引き上げた事例というのはありません。

しかし、2020年以降はこの大きくも採用力的には手付かずな領域で、今後成功事例が出てくるように思います。日本ではまだまだ軽視されている1on1一つとっても、それに特化したサービスの存在感が増してくると思います。こうした手法を活用して、多様化する社会における適切なマネジメント力を磨いた会社が、そしてそれを採用力につなげるようなマーケティングができた会社に、人が集まっていくでしょう。

6.「動画や音声」を活用した採用広報の増加

2020年は5G普及元年です。商業的にはまずは広告の動画比率の爆増から影響が始まると思いますが、それによって生活者が今以上に動画コンテンツを抵抗感なく消費するようになっていきます。Airpodsなどのワイヤレスイヤホンの普及も相まって、商業的にも動画コンテンツが爆増していくでしょう。

こうした中で、動画(Youtube、TikTok、ブランディング動画)や音声(Voicy、その他)を活用した採用で成功をおさめる会社が、早ければ2020年の後半くらいからちらほら出てくるようになるのではないでしょうか。

もちろん相性の良し悪しはあると思うのですが、個人的にはどちらかというと、ネタ動画っぽいTikTokよりも、ある程度の尺を使ってちゃんと説明するようなYouTubeチャンネルの方が流行るのかなという感じがします。

それこそ今は採用資料を公開する流れになっていますが、例えば社長が自らそれを紹介する動画であったり、YouTuberとコラボしたベンチャー紹介チャンネルのようなものが出てきてもおかしくないんじゃないかなと考えています。

7.「無目的的な何か」の影響力向上

これは少し説明が難しいのですが、まずはこれを見ていただきたいです。

採用活動とは、目的を伴った活動の集合体です。常に何らかの意図があり、目的がある。そして、コンテンツを作る人はほとんどすべてがコンテンツ作りに関しては素人です。なので、意図や目的がダダ漏れになっている。

こうした中でコンテンツの飽和化が進み、どんどん情報を受ける側が冷めてくる、ということが起きつつあるのではないでしょうか。

採用活動の中で無目的的な何か、を作ることは難しいように思いますが、おそらくはそれにチャレンジした会社は採用力が上がっていくように感じています。いやほんと、うまく言えないんだけど。なので何となくの未来予想です。「機能的である」ことを追求しているメドレーではこのアプローチは取りづらいのですが、相性が良さそうな会社さんがもし見つかったら、仮説検証したいので個別にお声がけさせていただこうと思っています。

One More Thing

2020年度の未来予想、いかがでしたでしょうか。
いろいろなトレンドがあると思いますが、その中でも私の視点から見たトレンド予測をしてみました。

最後になりますが、採用力においてこれらの7つの全てよりも圧倒的に大事なのは「洗練されたオペレーション」だということを改めて述べさせていただいて締めたいと思います。


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