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【科学的に考える!内野安打を打つために重要なこと】

〈はじめに〉

こんばんは!

突然ですが、皆さんに質問です。

バッティングの醍醐味といえば….?


「ホームラン!」や「打球を遠くに飛ばすこと!」

https://grapee.jp/1167589 より

だと私は思いますが、いかがでしょうか?

今までオンラインサロンでは打球を遠くに飛ばすためのトレーニングや動作をお伝えしてきました。


しかし、残念ながらどんな選手であっても全ての打席でホームランや長打を打てるわけではありません。捉えたと思った当たりが内野へのゴロになってしまうこともあると思います。

https://www.chunichi.co.jp/article/329000 より

内野へのゴロでも飛んだところが良ければ内野安打になるかもしれません。

また足の速い選手は内野安打も多いでしょう。


内野安打も立派なヒットであり、出塁することでチームの勝利に貢献できることは言うまでもありません。


内野安打といえば、誰でしょう?

https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2016/08/08/kiji/K20160808013119270.html より

私はイチロー選手を思い浮かべます。

日米通算安打数は世界最多の4367安打。メジャーで放った3089安打のうち、シングルヒットは実に2514本であり、その中にも数多くの内野安打が含まれています。


そんな内野安打ですが、イチロー選手のように狙って打てる選手は少ないでしょう。

みなさんが内野安打になるときは間一髪なことが多いと思いますし、そもそも打った瞬間に「打ち損じた!』と思って走ることが多いと思います。

その時に重要なことは何でしょうか?

「全力で走ること」

これは間違いないのですが、ではどの瞬間のスピードが大事なのかは考えたことがありますか?


今日紹介するのはそんな「内野安打を打つ」ためのには、どこのスピードが重要かを示した論文です。


〈方法〉

2007〜2010年までのMLBの試合にて、302人(合計1,896回)の本塁から一塁到達までの時間が計測されました。

時間はコーチ1名によってストップウォッチにて記録されています。


スタートはバットがボールに当たった瞬間で、ファールライン(スリーフットライン)までと一塁ベースを踏むまでの時間が計測されました。

このファールラインは塁間のちょうど半分の距離(13.7m)に当たります。

https://www.homemate-research-baseball.com/useful/10151_baseball_dic/index10.php より


それぞれの区間(本塁〜塁間半分、塁間半分〜一塁、本塁〜一塁)の時間、速度(距離/時間)、加速度(速度/時間)が左打者と右打者、およびポジション間で比較されました。

〈結果〉

右打者に比べて左打者は、本塁〜塁間半分までと本塁〜一塁までの区間において、速度と加速度が大きかったですが、塁間半分から一塁までの速度と加速度には差はありませんでした。


ポジション別では、捕手に比べて外野手と内野手は、本塁〜塁間半分までと本塁〜一塁までの区間において、有意に速かったという結果でした。

塁間半分〜一塁までの区画では、外野手が捕手よりも速かったですが、その他の差は見られませんでした。

本塁〜塁間半分までと本塁〜一塁への加速度は、捕手よりも内野手、内野手よりも外野手で大きかったという結果でした。塁間半分〜一塁までの加速度には、ポジション間の差はありませんでした。

〈考察・結論〉

これらの結果をまとめると、左打者は右打者よりも、外野手はその他のポジションよりも一塁到達までが速いですが、それは本塁〜塁間半分までの速度や加速度の影響が大きいということになります。


表にある到達タイムを見ても、塁間半分〜一塁までの時間はほぼ差がないことがわかります。

つまり、一塁到達までが速いかどうかは前半の区間の加速にかかっているということです。


そのため、内野安打を打つためには「打ったらまず塁間の半分までに全力で加速すること」が重要になります。


守備の立場からしても最初にすごく加速されると慌ててしまうものです。

どんな打球であれ、「打ったら全力疾走」というのはこのようなデータを見ても大切なんだなと感じます。


よく練習で行われる『塁間ダッシュ』も最初の13.7mの加速を意識して行うと良いでしょう。そう考えると「塁間ダッシュ何十本」というのは足を速くしたり、試合で活きるような練習になっていないことも分かると思います。

そんな何十本も走って、一本一本全力で走れるわけないですよね。数が多ければ多いほど疲労が溜まり、全力で走れなくなります。

塁間到達時間を測ってみて、遅くなってきたら休憩を入れるか、もしくは休憩を入れても回復しないのであれば終了する必要があります。今回の結果でいえば塁間の半分の距離の到達時間を測ってその指標にすることも有効でしょう。


また、この前半局面の加速をより大きくするためには、パワー(瞬発力)や立ち上がりスピード(最初の短い時間でより大きな力を出す)を意識したトレーニングが必要になります。

具体的には例えばジャンプトレーニングなどです。

これに関しては以前の記事
【瞬発力アップに必要なトリプルエクステンション〜実践編〜】
【野球選手のプライオメトリックトレーニング〜実践〜】

で解説していますので参考にしてください!


〈引用文献〉

Eugene Coleman A, Amonette WE. Pure acceleration is the primary determinant of speed to first-base in major-league baseball game situations. J Strength Cond Res. 2012

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