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【人が本質的に「丸くなる」のは何歳から?】

 心理学では「ありのままの自己を尊重し受け入れる」ことを『自尊心』と呼びます。
 
 注目されたい、とか、認められたい、みたいな「承認欲求」とは別のものです。

 人生においてもこの『自尊心』は大変重要なものとして扱われており、「自分らしく生きること」「素の自分であること」は人生の幸福度を上げる要因とされています。

 なんですが、人は往々にして「自らを偽って生きる生き物」です。
 ありのままの自分で生きている人は多くありません。
 八方美人とは言わないまでも、相手によって自分を変えるのはごく普通のこと。
 
 では、「いくつになったら私は私らしく生きれるのだろう?」を研究した論文がコチラ。

https://psycnet.apa.org/fulltext/2018-33338-001.html

 スイスのベルン大学が行った研究で、4歳から94歳までの男女164868人を対象に、『自尊心』の傾向と年齢による変化を調査したものです。
 
 大規模な調査であり、年齢層ごとに自尊心の変化が明らかになっているので大変興味深いものになっています。

■人の自尊心のピークは60〜70歳

自尊心の平均レベルが4歳から11歳まで増加し、11歳から15歳まで安定したままであり、30歳まで大幅に増加し、増加し続けたことを示した 60歳まで、60歳でピークに達し、70歳まで一定であり、90歳までわずかに減少し、94歳までより強く減少しました。
平均して、自尊心は幼児期から中期にかけて増加し、青年期には一定のままです(ただし低下しません)。 中年期に増加し、60歳から70歳の間にピークに達し、その後、老年期に減少し、非常に老年期に急激に低下します。
調査結果のパターンは、性別、国、民族、および出生コホート全体に当てはまります。

人々は、自尊心の一時的な上昇または低下、および一般的な自尊心の長期的な上昇または低下の両方の観点から、自尊心の変化を経験します。 たとえば、学校での成功、仕事の葛藤、または調和のとれた家族の出来事は、自尊心に一時的な変動を引き起こす可能性があります。

また、犯罪による被害などのストレスの多いライフイベントや、恋愛関係を満足させ始めるなどの人生の変遷は、自尊心の持続的な変化につながる可能性があります。

論文より

 とのことで、人が加齢によって人間的に丸くなると言われるのは自尊心のピークが60〜70歳まで上昇し続けるためです。

 つまり、人は歳を取るたびに「自分らしく」なっていくということ。
 歳を取るごとに学びや仕事、家庭環境で様々な経験を重ね、外的ストレス、内的ストレス、はたまた恋愛を含む人生の満足度を上げる体験を繰り返すことで、自分らしさを獲得していく訳です。

 ということは逆説的に「より多くの経験を積めば、もっと早く自分らしく生きることが出来る可能性が高くなる」とも言えます。
 人生の悲喜こもごもが自分らしさを形成するのであれば、積極的に経験値を積みに行くほうが、良い選択と言えるかもしれません。(あくまで仮説ですが)
 
 しかし説得力はありますよね。
 若くして辛い経験をしている人は達観していますし、多くの挑戦をしている人は失敗も成功も多く経験して他者に寛容な人が多い。というのは誰しも感じたことがあると思います。
 逆に甘やかされ自ら挑戦した経験が少ない人はワガママな傾向がある。と考えている人もいるでしょう。
 
 ただ加齢していくことではなく、より多くの経験を繰り返すことが「人生をより豊かで自分らしくしていく」と言えます。
 
 なお研究者は、

45〜55歳の段階では、多くの人は自分が関わる社会的な役割に多くの資源を投じる。その結果、自尊心が促進させていくのだろう。

 と述べています。
 多くの資源とは「時間」や「資金」「体力」のことです。
 やはり、どれだけ費やすか、がポイントになっています。
 
 なお、人の性格を表す『ビッグ5』においても、加齢によって「誠実性」と「協調性」が高まり、「神経症傾向」は低くなることが解っています。
 他者に優しくなり、心配事が減る。

 まさに「人柄が丸くなる」という訳です。
 
 歳を取るというのは決して悪い事ではないと思える話ですね(o・ω・o)

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