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10:"私"って、結局あなたの何なわけ?

「仕事終わったら、連絡して。」

そんなLINEに舞い上がって、すぐ近くにいた"事情を知っている仲のいい女上司"に「今日ご飯行くんです〜」
と報告する。

私の舞い上がり具合を見て、誰と行くとは言わずとも気づいたようだった。

朝6時から働いていたので、16時頃には仕事も終わり、LINEを入れ、一旦家に帰ってシャワーを浴びて髪とメイクを直してからまた家を出た。

18時に彼の家に着き、連絡をしたらすぐに出てきた。


会った途端、"なに食べる?合戦"で全く決まらなかったので、彼の「焼肉食べたい」の一言で、すぐ焼肉屋さんに決まった。

いつも通り冗談を言い合いながら楽しくご飯を食べた。おなかいっぱい食べて店を出ると、急激に眠気が襲ってきた。

そうだ、今日朝の6時から仕事してたんだった…


すごく眠くて、運転も危うかったので途中で車とめな、と言われ、言われるがまま車を停めた。

彼が運転を代わってくれた。安心して、自分の車を人に運転させているにも関わらず寝入ってしまった。

目が覚めると彼の家の駐車場に着いていた。彼に聞くと、30分前くらいに着いたという。
頭を撫でてくれていて、すごく心地いい寝起きだった。
そんなのもつかの間、まだ寝ぼけている間。
彼にキスされた。マスク越しに。


思い切り体を後ろにやったけど、シートが邪魔で避けられなかった。それに寝ぼけていた。
彼も私も間違いなくシラフなので、この間とは訳が違う。
そんなに寝起きの私が可愛く見えたのか。
と、笑う場面ではないのに心で笑ってしまう。


眠くてウトウトしていると、彼が膝で寝ていいよ、と言って私の体を横に倒した。車内なので、狭くてシートベルトが当たって痛かったが、そんな小さな事は特に気にしなかった。

その時、ふと彼が言った。

「彼女持ちの男の膝枕で寝るってどうなの、(笑)」

そんなことを言われた。
彼が膝で寝ていいと言ったのに。
起きようとしたら抑えられるのに。



私が不満そうな顔をしていると、彼は続けて言った。

「何、急に現実突きつけんなって?(笑)」

その通り。別に今言わなくてもいいじゃないか。
彼女がいることなんて知ってるし、彼がぞっこんなのも知ってる。
でも彼は、何故か私にキスをする。
理解できないし、おかしいと思う。
けど、嬉しい。
私もおかしい。


彼は私にとって、癒しをくれて笑わせてくれる、すぐ会える友達。

私は彼にとって、何なんだろう。
教えて欲しいけど、でも、聞きたくない。
ただの都合のいい女と、思われているのをきっと私は受け入れられない。


ねぇ、私はあなたが思っているよりずっと乙女なんだよ。

あなたの事を好きなんて、一言だって言わないけど、分かってるんでしょ。


キスが嫌なんじゃないの。私はあなたの1番じゃないのが嫌なのよ。



私の手を握ってこないで。
おいで?って胸を広げないで。
よしよし、って、頭を撫でないで。
マスク越しにキスしないで。

私を、あなたの1番の恋人にしてくれないなら、1番の友達にして。

寄り添うから。愚痴も惚気も全部聞くから。
ただの都合のいい女って、思わないで。



Ckw.

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